第5話 旅立ち
「全く…お前達は…」
本部へ帰ったコリンとローリィ。
無事任務を遂行し、リリンに報告書を渡した。
しかし、二人の体にはところどころ傷痕が残っていた。
「こ、これはその…ね、ねぇっ、コリン?」
「私にふるな、馬鹿っ!」
「………」
――まあ、最初からこの二人は決して仲良くできる相性ではないと思っていたがな…
リリンは一人思った。
「あの…リリン様」
「なんだ?コリン」
コリンは俯きながらリリンに話しかけた。
「…任務先で…普通ではない少女がいたんです」
「普通ではない少女…?」
「そういえばそうだったね。白いワンピースを着て、十字架のペンダントをつけた、まるで人間じゃないみたいな少女がいました。移転魔法ですぐにどこかに消えてしまいましたが…」
「……ふむ…」
リリンは頬杖をつき、コリンとローリィを見据えた。
「私、あの少女とどこかで会った気がするんです…」
「またぁ。さっきからそればっかり」
「いつ、会ったことがあると思うのだ?」
「わかりません…、でも、初めて会ったとは思えなかったんです…だから、リリン様…」
コリンは頭を下げた。
「あの少女を探す任務を…私に与えて下さい」
「コリン!?ちょっと!突然何言ってんのさ!」
「…その白い少女を探して、お前は一体どうするつもりだ?」
「…、わかりません。でも…私はあの少女を探さないといけない気がするのです…」
「何を根拠にそんなことを言っているのよ…」
「……」
コリンは必死だった。
自分でもどうしてここまであの少女を探そうと思うのかわからなかった。
リリンはそんなコリンを見て、溜め息を一つ吐いた。
「勝手なことを言ってすいません…リリン様…」
「……いいわ。コリン、その少女を探しなさい」
「…っ!?り、リリン様ー!?」
「リリン様…」
「コリンがそこまで必死に私に頼む用事なのだ。わからなくても、何か引っかかることがあるのだろう?」
「は、はい…」
リリンはにこりと微笑み、この後衝撃の言葉をかける。
「ただし、ローリィと一緒に行け」
「……えっ」
「ええぇっ!?な、なんであたしも!?」
バンダナや手袋を外し、完全に休む気満々だったローリィは、突然のことに目を丸くした。
「旅は道連れ…、仲間は多いほうがいいだろう」
「…えぇ…そんなぁー…」
「…り、リリン様、その…無理にローリィを一緒に行かさなくてもいいですよ」
「そうか?」
「(そうそう!よく言った、コリン!)」
「それに、彼女はもう疲れているようですし…」
「……」
この時、ローリィの中でブツリと何かが切れた。
「ちょーっと待ちなさいよ、コリン!だぁれが疲れているだってぇ!?」
「……?疲れて休むためにバンダナや手袋を取ったのだろう?」
「トライ族であり、忍であるあたしが、あの程度の任務で疲れたとでも思ってるわけ!?この、バカコリンっ!」
「バカとはなんだ、バカとは!」
「わかった!あたし、コリンについていく!そしてコリンには、あたしの体力と強さを思い知らせてやるんだから!」
ローリィは外した己の装飾を再び付け、バッグを持つと、すぐさま部屋を出て行ってしまった。
「ふふ…トライ族の彼女に疲れているのか?という質問は禁句だぞ?」
「リリン様…随分と楽しそうですね」
「気のせいだ…ほら、行ってこいコリン」
「はい。…リリン様、任務を許可してくださってありがとうございます」
「長期任務になるだろう…気を付けていけ」
「はい」
こうしてコリンは、ローリィと共に白い少女を探すことになったのだった。