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第4話 白い少女


「きゃああぁっ!」

「っ!?何事だ…ぐあぁっ!!」


コリンは外に出て洗濯物を干していた女を躊躇なくナイフで斬りつけた。

ローリィは、騒ぎを聞きつけ出てきた夫らしき人物にクナイを投げ付けた。


二人とも的確に、かつ一撃で急所を狙ったため、あっけなく落ちた。


「さて、次にいくよ。手間取るんじゃないよ、ノロマなサークル族さん」

「そっちこそな、魔法の使えないトライ族」


悪たれをつきながらも、二人の息はぴったりだった。次々と集落の人間が殺され、町中に血痕が残っていく。


「さあ、あとはここの民家だけだな」

「どうするの?慌てて家の中に引きこもっちゃったみたいだけど」

「簡単に、かつ正確に倒す方法があるぞ」


コリンは杖を取り出し、魔力を水晶に注いでいく。


「なにその光の弾…」

「これを、民家の前に置く。これで確実にこの家にいる人間は死ぬ」


そして出来上がった魔弾をコリンは片手で握り締め、その民家の前に置いた。


「下がれ、ローリィ。少々危ない」

「な…なにが起こるのよ」

「気になるのなら見ておけばいい」


コリンは防御のため、ローリィと自分を覆うシールドを展開した。

それと同時に、魔弾が爆風と共に炸裂した。


「……っ!?」


その後、魔弾からはおびただしい数の手がのびていった。

しかも、その一つ一つの手には鋭い刃がついていて…


「ひぃっ、たすけ…、助けてくれっ!ぎゃぁああっ!!」


……しばらくして、家の中から生気が感じられなくなった。


「………」

「どうした?驚いて声も出ないか?」

「う、うっさい!」


内心、ローリィは恐怖していた。

先程の魔法もそうだが、目の前の人間に。

何故ああも容易く、あんな惨い魔法が放てるのだろう、と。


「……、?ねぇ、コリン…あの女の子は?」

「生き残りがいたか?……」


コリンはローリィの指さした方向に首を動かした。

そこには…


「……間に合わなかった…っ、ごめんなさい…、ごめんなさい…!」

「…っ!」


真っ白いワンピースを着ている少女だった。

髪の色、瞳の色からしてサークル族だとすぐにわかったが、雰囲気がどうも違うように見えた。


「…なにあの子…あの子の周りだけ、光が漂ってる」

「………」


コリンとローリィは目が離せなかった。

少女は屍と化した人間の傍に立ち、顔を隠して泣いていたのだ。


よく見ると、少女は頭と首に何か装飾をつけていた。

頭には花飾りのような装身具。

首からは…大きな十字架のペンダントをつけていた。


「……」

「わっ…!」


少女はこちらの気配に気付いたのか、顔をあげてこちらを見つめてきた。

ローリィはびっくりして、コリンの後ろに隠れてしまった。

少女は泣きはらした顔でコリンをじっと見て、目を見開きながら何かを呟いた。


「…    、  …?」

「えっ…なんて言ったのだ…?」

「………」

「……っ!?」


その瞬間、少女はまばゆい光を放ち、その場から一瞬にして姿を消した。


「移転魔法…」

「な、なによー…さっきの女の子」

「…どこかで…」

「えっ?」

「どこかで…見たような…」

「えぇっ!?何よそれ!」

「…………」


――白いワンピース…

――十字架の…ペンダント…

――どこかで…


頭を抱えて考え込んでしまったコリンに、ローリィは痺れを切らしたのか、


「ああもう!ほらコリン!さっさと帰るよ!いつまでも突っ立ってんじゃないよこのノロマ!」

「…っ!…お前こそ、さっき私の後ろに隠れていたじゃないか。あれはなんだ?忍であるお前があの女の子にビビったのか?」

「…喧嘩売ってんの?」

「好きなようにとらえてくれて構わない」

「このっ…、どこまでも気にくわないわねっ、あんたっ!!」

「……やるか?やってやろうか?」


結局二人は、廃墟と化した集落でリリンからの通信(という名の怒号)が入るまで争い続けていたそうな…

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