第1話:始まる生活
チリリリリリッ!!
「うーん……眠い…もう少し寝よ」
「優ちゃん起きて!!」
「…ん〜ムリ」
「そんな事言ってないで。今日から学校なんだから♪」
「わかったわかった。起きるって」
「じゃあ下にいってるね♪」
俺の名前は水澤優太。中学3年。バスケ部。成績は中の下。趣味は絵を描く事。
今、起こしに来たのは妹の美夏。妹といっても義理だけど。美夏も今年で中学1年。長いようであっという間だ。
寝起きの重たい足を引き吊りながら部屋を出て下に行く。
「優太、おはよう。早く支度しなさい。朝ご飯はもう出来てるからね。」
「ファ〜おはよう母さん。」 とりあえず制服に着替える。
「優ちゃん早く朝ご飯食べようよ♪」
「美夏まだ食べてなかったのか!?早く食べりゃあいいのに。」
「優ちゃんを待ってたんだよ」
「そっか、ごめんな待たせて。」
「全然いいよ♪それより早く食べよ?」
「オウ。それにしても美夏浮かれてんな〜。なんかあんのか?」
「だって今日から中学生なんだよ♪浮かれずにはいられないよ〜」
美夏は満面の笑みでそう言った。
「最初だけだよ。今なんてもうめんどくさくて。」
「今が楽しければいーの。」
美夏は本当に嬉しそうに話しているのでこっちもつい笑ってしまう。
「それより今日は半日なんでしょ?」
母さんが聞いてきた。
「そうだった。ラッキー早く帰って寝よっと♪」
「そんな事よりお昼は自分たちで何か作ってたべてね。」
母さんはお願いねと微笑みながら俺たちに言った。
「「はぁーい」」
「さて、支度も終わった事だし行くか。」
「うん♪」
美夏は楽しそうに返事をした。中学1年にしては可愛く育ったような気がする。そんな事をふと思ってしまう。
学校までの距離はそれほど遠くなく歩いて15分くらい。けっこう近くて嬉しかったりする。
通学路を歩いていると他の生徒も見かけ楽しそうに歩いている。まあ田舎の学校だから生徒なんてそんなにいないけど。
「……ちゃん、優ちゃん!」
「どッどうしたんだよ急に!?」
「どうしたじゃないよ。ずっと話しかけてるのに考え事なんかして!」
「ごめんごめん。でなんの話?」
美夏は少しふてくされつつも
「今日、帰ったら遊ぼうよ♪」
ふてくされてるかと思ったら一気に笑顔になった。
「ああ、いいよ。帰ったらなんかしような。」
笑って言うと美夏はとても嬉しそうに返事をした。そうこうしているうちに学校に着いた。
「じゃあ美夏、俺こっちだから」
「うん。また後でね。優ちゃん♪」
美夏は大きく手を振りながら教室へ向かって行った。
俺も教室に向かって歩き出す。3年の教室は奥にあるので行くのがめんどくさい。まあそんな事を考えながら歩いていると教室にたどり着いた。教室のドアを開けると//「オ〜ッス優太!元気してたか!?」
今、俺に話しかけてきたのは斎藤和樹。俺の一番の親友だ。
「まあまあだなぁ。カズは?」
俺はカズって読んでいる。
「ヒマだったな!部活とかやってねーし、する事無かったし。」
カズは部活をやっていない。運動神経はいいのに。それに結構なイケメンで馴染みやすい性格から生徒たちからの憧れや信望も強かったりする。
「そうか。それはつまらなかっただろう。…グスッカズは寂しい春休みを送っていたんだな。」
「やめろッ!その哀れみの目を」
カズは少し恥ずかしそうにしている。
「わかったわかった♪」
「ところで優太」
「ん、なに?」
「美夏ちゃん今日から1年生なんだろ!?」
カズが聞いてきた。
「ああそうだよ。おかげで朝から浮かれ気分だよ」
「そうなんだ。でもいいよなぁ〜?優太は」
カズがニヤニヤしながら言ってきた。
「なにがだよ?」
「あんないい妹がいて♪」
カズはさらにニヤニヤしながら言ってきた。
「妹っていっても義理だけどな」
「そんな事どうでもいいじゃん」
どうでもいい事じゃないだろ。つーかいつまでニヤニヤしてんだコイツ!? 「おーいもうすぐ始業式始まるから廊下に並べ。」
担任がクラスにいる生徒達に呼びかけた。
廊下に並び体育館までの道のりを男女二列、背の順で歩いている。
「なぁ優太〜」
ちなみにカズはオレの後ろだ。
「なに?」
「始業式ってなにやんの?」
「校長の話とかじゃね〜の」
「え〜校長の話かよ!あいつムダに話なげーからケツ痛くなんだよな。」
大きな声でよくそんな悪口を言えるもんだ。まあたしかにあの校長の話をみんながやだがっているのは事実だ。
そうこうしているうちに体育館に着いた。学年ごとに右側から並んでいく。
「全校生徒、起立して下さい。」
先生が言った。
教頭先生がステージ真ん中の辺りまでくると、礼をしてから
「これから始業式を始めます。」
もん一度礼をしてからステージを降りていった。
始業式の大半を終えるとあとは校長の話だけだ。
「校長先生のお話」
先生が言ったあと校長先生がステージを登った。
「始まるぜ。長い話が」
カズは本当に嫌そうだ。
校長の話は障がい者の事についてだった。まともに話を聞いていた奴なんて数人しかいないだろう。
「これで始業式を終わります。3年生の方から退場して下さい。」
考え事している間にいつの間にか終わっていた。
教室に戻るとHRを始めた。
「え〜今日はもう下校になるがあまりふざけすぎないように。以上!」
担任の話はすぐ終わるから大好きだ。
「先生さようなら〜」
生徒達が担任に挨拶して次々と帰って行った。
「じゃあオレも帰るかな。じゃあね〜優太♪」
「オウ!じゃあね」
カズは浮かれて走って帰って行った。
「さて、オレも帰るかな。」
教室を出て玄関に向かう。靴を履き替え玄関を出る。少し歩き校門を出ようとすると美夏が待っていた。
「もう〜優ちゃん遅い」
「なッ美夏、お前オレの事待ってたのか!?」
「そうだよ〜。まったく何分待たせるつもり?」
「美夏、お前友達と帰ればよかったのに。」 「私は優ちゃんと帰りたかったの!!‥もういい帰る。」
美夏は怒って歩き出して行った。
「ちょ‥ちょっと待てよ。美夏!あんな言い方して悪かった。待っててくれてありがとう。ごめんな。」
オレは美夏に駆け寄って言った。
「べ‥別に怒ってないからいいよ。」
「そうか。ならよかった。ほら、待たせたお詫びにカバン持ってやるよ。」
オレは美夏に手を差し出した。
「い‥いいよ。自分で持つから。」
「いいって!重たいだろ♪」
美夏の手からカバンを取る。
「‥//ありがとう」
美夏は照れくさそうに言った。
家までの帰り道、美夏はとてもご機嫌で横に見える横顔はとても楽しそうで少し赤みがかっていた。
オレも自然と笑顔がこぼれていた。