第20話 鰻 焼蔵という男3
ーーーーーーーーーうなぎ食堂ーーーーーーーーーーー
(鰻 焼蔵)ただいま
(鰻の母親)あ、おかえり~
鰻が食堂に帰宅すると 母親が声をかけた
今日は客は一人もいないようだ 最近一日の客が数人の事も少なくはない
ひどい時は0って日もある
(鰻の母親)あんた あの人スタジアムまで送っていったのかい?
(鰻 焼蔵)あ、いや 途中までだよ
(鰻の母親)ふ~ん そうかい
母親はそういうと かちゃかちゃと食器を洗っていた
(鰻の母親)あんた サッカーしたいなら 戻っていいんだよ?
(鰻 焼蔵)な、何言ってるんだよ母さん
(鰻の母親)わざわざ 会長さんが来たって事は 何かしら用事があったんだろ?
母親は鋭い 伊達に長く生きてるだけある
(鰻 焼蔵)べ、別に 向こうが戻ってきてほしいって言ったって 俺 戻る気とかねえし
(鰻の母親)へえ 戻ってほしいって言ってきたんだ?
母親の誘導尋問にまんまと引っかかった鰻
ギクッとして 硬直してしまう
(鰻の母親)あんたがなに考えてるか知らないけどね?
お父さんも順調に回復してるし こんな人居ない店の経営なんてお母さん一人で十分だからね?
(鰻 焼蔵)な、何言ってんだ母さん 母さんじゃうなぎ一匹ロクにさばけないじゃないか
(鰻の母親)別に数減らしゃいいだけだろ? どうせ客来ないんだし
(鰻 焼蔵)そ、それはそうだけども、、、
母親とそんな言い争いをしてると とん とん と 階段を下りる足音が聞こえてきた
(鰻の父親)うるせえな 寝てられもしねえ
2階で寝てた鰻の父親が起きたのか降りてきた
髪の毛はごっそり抜け落ちて 体重もかなり落ちてガリガリってわけではないが かなりやせ細っている
だが 前よりは少し軽い足取りで 厨房の中の業務用冷蔵庫を開けた
(鰻の父親)おいおい まだ3匹も残ってるじゃねえか
(鰻の母親)あ、今日はもう無理だから 明日やろうと思って
(鰻の父親)バカ そんなことしたら鮮度が落ちちまうだろ 仮に残すとしても
焼いてから残せって前から言ってただろ
そう言うと 父親は目打ちを取り出してうなぎを打ち付けようとする
(鰻の母親)あんた まだ無理しちゃ
(鰻の父親)平気だ このくらい
そう言うと 父親はとんかちで目打ちを鰻の喉あたりに打ち込む
鰻がネットで見たやり方とはまるで違う 本来横向きで打ち付けるはずだが
親父は鰻をあおむけにして打ち付けた
うなぎは腹を空に向け 不安定な状態で固定されている
その 喉元に包丁を軽く差し込むと
シュパッ
一閃! あっという間に腹を切り裂いた まるで 映画の座頭市のようだ
そのままの流れで一瞬で内臓を取り除くと あっという間に中骨を落とし
腹の骨も綺麗に取り除いた ものの30秒くらいの出来事だった
(鰻 焼蔵)す、すげえ
自分がやってるからわかる父の凄さ 父の仕事を真近で見た事なんかなかった
母は一匹30分 鰻でも15分はかかるものを 一瞬で、、、
その後 あっという間に串を刺し終えると うなぎの串を皿に乗せ 2匹目を取り出した
(鰻の父親)あ~あ こんな仕事してっから 客が遠のくんだよ
もう ダメだな お前クビだ 焼蔵 お前明日からバイトでも探せ
(鰻 焼蔵)な、何言ってるんだ父さん あんたこそ そんな体じゃ無理だろうが
(鰻の父親)こんな体でも お前なんかよりマシだ こんな仕事してちゃ味は当然落ちる
客来ねえのは 別に駅前にラーメン屋できたからじゃねえぞ?
客は違いに敏感なんだ ちょっとでも味が落ちれば あっという間に他行っちまうからな
わかったら さっさとバイトでも探しに行け
(鰻 焼蔵)なんなんだよ!この家! クソーーー
鰻は大声で怒鳴ると 店を出て行った
(鰻の母親)あんた そんな言い方しなくても、、、
(鰻の父親)フン バカ息子が、、、
―――――――――――――――市川フェニックス スタジアムーーーーーーーーーーーーー
市川フェニックス 事務所
(家元)なんか 無いっすかねえ?勝てる方法
(小原)もう 200戦はしましたけど 無いですね もうアプローチ変えるしかないですかね
前はポゼッションでやってたんでしたっけ?
(家元)ああ、まあそうですけど ちゃんとポゼッションできてたのは 引き抜きの前ですよ?
トップ下と守備的MF抜かれてからはもう すぐインターセプトされるんで
ポゼッションなのか敵にパスしてるだけなのか わかんなかったですな
小原はかちゃかちゃとキーボードを叩き 試合を組んで シミュレーションを開始してみる
(小原)うーん 4-0で負けた、、、 こらダメですな
個の能力じゃ 部分的には負けてないのですが チーム全体の練度が違いすぎて戦術がほぼ効かないです
川西さんレンタルとかできないですかね?
(家元)え?小岩の川西ですか? 誰から聞いたんですか?アイツがうちにいたなんて
(小原)あ、ちょっと小耳にはさみまして、、、
(家元)まあ アイツ来たらトップ下やってもらって なんかできるかもですけど
移籍期間でもないのにレンタルなんかできるんですかね?
(小原)そこはまあ 私はわかんないですけども、、、
(家元)無理だと思いますよ? 数日しか無いですし まあ聞いてみるだけ聞いてみますけど
(小原)お願いします
そんな話をしていたときだった
ガチャ
誰かが扉を開いて事務所に入ってきた
鰻だ
(鰻 焼蔵)家元さん 何か手伝えることありますか?
第21話に続く




