第10話 決着
単調な試合展開に嫌気がさしたのか 小岩の川西がドリブルでPAに切り込む
ファウルでのPKを警戒してDFの処理がもたついてしまう
ドン
一瞬の隙をついてシュートを撃つ が 家元の正面に飛んでいく
バチン とん とん
(家元)うわわ
とっさにきたシュートにあわててボールをこぼしてしまう
前のめりに飛び込んでボールを抑え込む家元
(家元)ふわあ あっぶねー
後1秒遅かったら川西に蹴りこまれていた
ギリギリだったがなんとか事なきを得る
ちっと舌打ちをして 川西が戻っていく
家元は近くの九蘇真面目にアンダーパスでボールを転がすと
九蘇真面目は大きく相手陣に蹴りだす あいかわらず全く攻めませんよ作戦を継続する
(家元)ファウル気を付けて 絶対に狙ってくるぞ!!
家元が大声で声掛けをする
想定道理 川西を中心にどんどん ドリブルを仕掛けてくる
スキマの無いとこに無理やり体をねじ込んで入ろうとする川西
何度かシュートを撃つが全て家元の正面にいってしまう
(川西)クソ あのデブが邪魔なんだよ
ゴール右隅と左隅にはそれぞれ 切山と松田がぴくりとも動かずに立っていた
巨漢の二人がそこを塞ぐととにかくゴールが狭くなる
彼らを避けると家元の手の届く範囲に蹴るしかないのだ
イライラして来たのかついに川西が
ばたっ
急に誰も触れてないのにエリア内で倒れる
いわゆるシミュレーションだ どうしてもファウルがそしてPKがほしかったのだろう
やたら審判にアピールしているが 審判は首を振ってアピールに答えない
だが これでPKもらったケースもある 怖い行動と作戦ではある
(家元)絶対に手を使うな 足だけで十分だからな
コースだけ制限して正面だったら蹴らしちゃってかまわない
家元もちょっと慣れてきたのか 自身のあるコメントを言うようになってきた
そもそもGKは他の選手より寿命が長い40までやるプレーヤーも多いので
彼の年齢はまだまだ現役圏内と言えるだろう
しばらくぶりだが 割と体も動くし 反応もできる 小原のおかげかもしれないが
なんにしてもこれならやれると 思ったのだろう
川西はそれからも侵入を試みるが うまくいかない
で、うまくいかないと見るや
ばたっ
得意のシミュレーションである とにかく倒れればなんかくれるみたいな安直な作戦
そしてついに
ばっ
審判がイエローカードを高々とかかげた シミュレーションである
シミュレーションとは 足をかけられたり 反則行為を受けていないのに
さもウケたかに見せる(演技)を繰り返した場合に逆に反則行為として罰せられる違反である
イエローカードは2枚もらうと(退場)になるため もう川西は無謀な突破はしてこないだろう
川西のイエローと同時に 小岩メンバーにもあきらめムードがただよってきた
明らかに攻めに覇気がなくなって とりあえず0-0で終わっとこうという感じになってきた
(小原)今です!!!
ぶっふぉー ぶふぉおおお
(多門)ん?ほら貝の音?なんだ?大河ドラマでも見てたっけ?
んん?なんだあれ なんであいつほら貝もってんだ?
家元がほら貝を口にくわえ吹いていた 戦国時代の出陣のような音が場内になりひびく
その音を聞くや否や
(九蘇真面目)いっくぞおおおおおおおおお
家元からパスを受けた九蘇真面目が一気に前線に低いボールを蹴りこむ
今までの無気力ボールでは無い 弾丸のように速く低いボールが 中盤まで上がってきていた
相手CBの頭上をわずかに超えていく
ーーーーーーーーーーー試合前ミーティングルームーーーーーーーーーー
(小原)小岩はこれが弱点です CB この二人が 攻撃の際センターラインを踏むんです
ここまで上がってきたらキーパーと CBの間に致命的なスキマが生まれます
(平木)でも 我々ぺナルティ―エリアに全員いるんだから
ここにいればどうにもならないほど距離があって十分なんじゃ?
(小原)そこでこれです
そう言うと小原はほら貝を取り出した
(平木)ええーよくそんなもんもってますね
(小原)実家の倉庫から引っ張り出してきました これを私が客席で吹きます
一瞬でも何人かでも私を見てくれればラッキーですが
ほんの1~2秒気がそれるはずです 何より全くのノープレッシャーの楽勝ムードで
相手の警戒心も極限まで下がっています
で、1~2秒あれば、、、 一気にりんごさんがここまで来れるはずです
と言って小原はセンターエリアを指さした
(りんご)あ、いけますね足は速いので私
(平木)すげーな ここまでいけるかね普通
―――――――――――――――試合後半戦ーーーーーーーーーーーーーーー
(りんご)PAから1,2 ハイ届いた 計算道理
一瞬小原のほら貝に気をとられたDFが目を離した隙にりんごが目の前にきていた
必死にターンして進路を阻もうとするが 加速力で優るりんごに追いつけない
最速で走りながらりんごが落下して地面に落ちたボールを胸でトラップする
そのまま勢いよく前方に跳ねるボール この際に相手DFが追い付いてくる
(小岩DF)させるかよう
小岩DFがりんごに肩をぶつけて バランスを崩そうとする 気持ち よろめく りんごだが
すぐさま体制を立て直し 右足でボールを前方に蹴る
小岩DFがりんごとやりあってる間に全力疾走していたもう一人の小岩CBがりんごの前に回り込む
(小岩CB)終わりだ!!
りんごの進路を完全にふさぐCB このまま速度を保って加速し続けるのは不可能だが
(りんご)じゃ 後はよろしく
ぽん
得意のリフティングで軽くボールを宙に蹴り上げる
ボールは小岩CBの頭上を越え背中側に落ちた
(切山)まかされたーーーーーー
そこに猛牛の様な勢いで 切山が走りこんでくる
大きなおなかでぽよんと優しくボールを前に跳ね飛ばす
そのままの勢いで爆走していく
(小岩CB) なんだ!!このデブ いかせるかーーーーー
小岩CBはファール覚悟で切山のユニフォームを引っ張るが 止まらない
CBを引きずりながら爆走する切山 100キロの最高速加速は物凄い突進力で
さながらロケット砲のようである
そのまま相手PA付近まで爆走する すると
(小岩GK) 早く止めろよバカ なにやってんだ
小岩GKが突進してきた まだまだPAまでは距離があるはずだが
見かねた小岩GKがPAを超えて突進してきたのである
(切山)いけるぞおおおお おらあああああああああ
切山がシュートを放つ勿論渾身の一撃では無い
力を最小限に抑えたループシュートを試みる ちょうど小岩GKの頭の上をかすめるように
ボールは飛んでいく
(切山)ようし!!もらった そこなら手は使えないはず
(小岩GK)舐めるなあああああああ
ばちーん 小岩GKが手で止める ハンドだ
通常キーパーがPA外で手を使うとレッドカードになることが多い
それすらも見越した上での反則行為 流石プロサッカープレイヤーと言うべきだろうか?
(切山)うそだろう??
呆然と立ち尽くす切山 が、そこに
(ぺぺ)ああああああああああああ
ペペがトンデモナイスピードで走りこんできた
ーーーーーーーーーーーーー試合前ミーティングルームーーーーーーーーーー
(ペペ)無理ですよ 僕 足全然使えないですし
(小原)いや ダイジョブです 足は使わなくて
(ぺぺ)ええーじゃあどうすれば
(小原)ボールをゴールテープだと思えば
とにかく胸でゴールすればいいのです
(ペペ)でもそれじゃどこいくかわかんないじゃないですか
(小原)いやダイジョブですよ ゴールに向かって走れば
物理法則でまずゴールの方に行くはずです
とにかく何も考えないで無心でサッカーのゴールにゴールするんです
―――――――――――――試合後半戦ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ペペ)これは陸上 サッカーボールはゴールテープ
おおおおおおおおおおおおおお
小岩GKがはじいたボールに向かって両手を広げてゴールしようとするペペ
ぼーん
ぺぺの胸に当たりボールは前方に飛んで行った
主審は動かない アドバンテージを見ているのだろうか?そのままボールは高々とあがり
ゴールめがけて飛んでいく
ガーン
惜しくもゴールバーの上段ギリギリのところにボールがぶつかる
ボールは跳ね返されてふわりと浮き上がる
小岩GKが空中でバウンドしたボールをキャッチしようと走りこむ
(りんご) うん これはイージー
そこにりんごが走りこんだ そして得意のオーバーヘッドのシュート体制に
小岩GKが届くより先にりんごの足がボールをとらえる
ズバーン
ボールはサッカーゴール中央に突き刺さった
(多門)おおおおおおおおお ごーーーーーーーーーーーーーる
ごーるごーるごーるごーるごーるごーるごーる
うおおおおおおおおおおおおおおおお なんてこったあ とんでもねえことやってくれたあああああ
ああ ダメだ涙が止まらない なんてこった なんてこった
多門は興奮しすぎて涙と鼻水が止まらなくなっていた
ピッチにはりんごに駆けよるチームメイト
(切山)おおおおおおおおお お前凄すぎるだろう
(ぺぺ)や、やったあ し、信じられない
(九蘇真面目)ああああああ やったあやったあ
(家元)うおおおおおおおおおおおん( ゜Д゜) (号泣)
切山、ペペ、九蘇真面目がりんごをもみくちゃにする
他のチームメイトもかけよってりんごを祝福する
観客は数人 ほぼ小岩のファンだが 拍手をしてくれているものもいる
家元は泣き崩れて動かない 小原も目頭を抑えてぼろぼろ泣いている
が はっと気づき小原は大声をあげた
(小原)まだ終わって無い 最後まで守り抜いて!!!!!
チームメイトはその声に我にかえったのか その後の小岩の猛攻を耐えしのいだ
キーパーはレッドカードをもらい退場 10人で攻める事になったが
ファールもらいに無理やり小岩FW陣が入り込んでくる
が、残る力を振り絞り 渾身の力で小岩の攻めをはじき返す
ぴーぴーぴー
試合終了の笛だ ついに終了した 勝ったのだ 昇格後初の勝利
市川フェニックス始まって以来プロリーグでの初勝利である
家元は泣きながら小岩の選手と握手をしていた 九蘇真面目も感極まって泣いている
数名しかいないサポーターに手を振ると様々な声が聞こえてきた
いいぞー市川 俺お前ら応援するわ
次もがんばれよ 見に来るからなー
たぶん小岩のファンなのだが こっちの応援をしてくれるのだろうか?
なんにしても嬉しい言葉である
そして
この小さな歴史に名を刻んだ市川のメンバーは
ピッチを後にした
第11話につづく




