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元最強軍人のおじいちゃんが、殺されるはずだったモブキャラに転生して乙女ゲームを拳無双をする!  作者: バナナ男さん
第四章【サマナイズ編】

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(ジョアン)79 ジョアン


(シリンズ家子息ジョアン)


ハァ……ハァ……ハァ……っ!!


荒くなっていく息により、呼吸が上手く吸えずに苦しい。

でも、後から追いかけてくる気配がどんどん近づいてくるため、足を止めずに走り続けた。


このままだと街の人が……そして僕も……母様も……っ!


「〜〜っ…………っ!!」


僕は自分の力がない事に対しての怒りを押さえきれずに、唇を噛みしめる。

そして、酸欠で霞がかった頭の中には……今までの人生が走馬灯の様に回り始めた。


◇◇

サマナイズを治めている【シリンズ家】は、代々モンスターとの契約に優れた血筋を持っていたからこそ、男爵の身分を与えられた家だ。

そもそもサマナイズは、近くに大きな森がある事からモンスター被害が多く、モンスターと契約できた者達が街を守護してきたという歴史がある。


その先頭に立つのがシリンズ家だ。

契約したモンスターは、契約していないモンスターよりも契約した人間からの魔力提供のお陰か?非常に強くなるので、契約したモンスターと一緒に脅威と戦ってきたのだ。

しかし────……僕の元に契約してくれるモンスターは未だに現れてはくれない。


『僕が弱いからモンスターは来てくれないの?』


六歳になり初めて儀式に望んだ際、うんともすんとも反応してくれなかった魔法陣の前で、母に尋ねると、母は首を横に振った。


『モンスターは気まぐれだから仕方ないのよ。また今度頑張りましょうね。』


いつも優しい母は、こんな時でも優しくて、悲しみに暮れる僕を母は責めなかったが……父は違った。


『まさかこんな無能が我が息子とは……。心底ガッカリしたよ。』


父は大きく息を吐き、吐き捨てる様にそう言うと、今度は母を責め始める。


『まったく……ジョアンが無能なのはお前のせいだよ。

お前の契約モンスターも、大して戦えない役立たずだもんな?

この俺のモンスターがいないと街も守れない……そんな役立たずがシリンズ家を名乗っていいのかな〜?

────ハァ。そもそもモンスターとの契約ができない者は、街人と認められないのだから、このまま契約できなかった場合、街から追放する。分かったな?』


『そんな……。アナタ、自分の息子に対してそれはあんまりだわ。

そもそも、モンスターと契約できないなら追放なんて、私は反対────……。』


『うるせぇなっ!!この俺に指図するな無能女がぁぁぁ!!!』


母が反論した事でカッ!!となったのか、父は母を殴り飛ばし、そのまま倒れた母を何度も蹴る。

それを止めようとしたが、「ジョアンは来ないで!」と強く止められてしまった。

結果母は血だらけに。

そのまま力なく倒れている母に、父はペッ!と唾を吐きかけ、僕を指差す。


『いいか?このまま契約できなかったら、ジョアンは街から追放だ。

そんな役立たずを、いつまでもシリンズ家に置いておくわけには行かないからな。

そうしたらお前はシリンズ家を俺に渡し、ジョアンと一緒にでていけ。

その後は、ちゃんと俺が可愛い愛人達に今度こそシリンズ家に相応しい優秀な子供を産ませるから、安心して惨めな平民暮らしをすればいい。

仕方ないよなぁ?だってご先祖様がせっかく頑張ってここまで守ってきたモノ、全部を守る事ができないシリンズ家の恥晒しなんだから。」


「…………はい。」


シリンズ家として生まれ、今まで自分の両親が必死に役目を果たすために戦死した母にとって、父の言葉は自分を殺す剣だったのかもしれない。

僕が物心ついた頃から、母は父によって同様の言葉をぶつけられ、ひたすら母が謝るという姿しか見た事がなかった。


『戦えない私が悪いの……。』

『でもジョアン、アナタだけは守るわ。アナタのために私が……。』


そう言っては、父からの暴言や暴力全てを母が受ける。


僕は……それがとても悲しいと思った。


自分が受けるはずの痛みと苦しみを母が奪うたびに、僕の心は暗く重くなっていく。

こんな事が続くなら僕は────……。


「……ハァっ……っ!ハァ……ッ……どうすれば……っ……とにかく街を出てこの事を上層部に伝えないと……っ。」


子供の小さな体を生かし人混みをスルスルと走り抜けていくと、少しだけ追いかけてくる気配が遠ざかった。

それにホッと息を吐き出し、僕は改めて父の非道さを思い出し、怒りに震える。


「……最初から、僕も母様も殺すつもりだったんだ……。シリンズ家を乗っ取るために……。」


気を抜けば流れ落ちそうな涙を必死に堪え、街の外を目指しながら、ついさっき聞いた話が頭の中をグルグルと回った。


今日も母が傷つく姿を見せつけられ部屋を出た後、僕は自分の部屋へ帰されたが、勿論心はまったく落ち着くわけがない。


「……少し外の空気を吸いに行こうか。」


僕は窓の外を見ながらそう考え、一つのスキルを発動した。



【共通ノーマルスキル】


<迷彩景色>


自分の気配を消す事ができる隠密系スキル

自身の魔力操作、精神耐性値、冷静が高い程、精度が高い


(スキル条件)

一定回数以上、自分の気配を消し一定以上緊迫した状況下で精神の安定化に成功する事

一定回数以上、消えてしまいたいと願う事



いつの間にか使える様になっていたスキルは、自分の姿を周囲の景色に溶け込ませ存在全てを消してくれる。

これを使って庭の散歩をするのが、唯一僕が自由になれる時間だった。


『恥晒しが外に出るな』と父が言うため、僕はめったに外に出ることはできない。


きっと僕が外の世界を知るのは、追い出されて平民になった時だろうな……。

そう思うと、僕は母が幸せになれる様動いて欲しいと願うが……母が現状を選んでいるのは僕のため。

だから僕は何も言えない。


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