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元最強軍人のおじいちゃんが、殺されるはずだったモブキャラに転生して乙女ゲームを拳無双をする!  作者: バナナ男さん
第三章【半年後の三人の話編】

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(アッシュ)67 変なの

(アッシュ)


「う〜ん……残りは何に使おうかな?」


ご機嫌で買い物を謳歌する俺。

周りに女が集まってきて正直邪魔だが、それもせっかくなので楽しみながら歩く。


今までお金という物を私的に使った事はなく、買い物というと情報収集のためか、ターゲットに近づくためかのどちらかしかしたことがなかったから、純粋に楽しい。


「あれもこれもそれも、気になっていた物は全部買ってみようかな。なんだかいいな、こういうの。」


イタズラする時の様にワクワクした気持ちで、買い物を続けた。


だって今まで全部全部我慢してきたんだから、別にいいでしょ?


ルンルン♬と鼻歌を歌いながら、沢山の物を買う俺を見て、周りは羨望の眼差しを向けてくる。

更に女はそれに好意を、男は嫉妬を混ぜて見てくるので、それなりに気分は良い気がする。


「まさに誰もが羨む体験、それを俺はしちゃってるわけだ。」


心の中は、胸をこれでもかと張る自分がいて、まるで見せびらかす様に買い物を続けた。


流行りの服、アイテム、役に立つ雑貨品に、どこに飾るのか分からない様なインテリア……。

そろそろ両手で持つのしんどいな〜と思ったその時、近くの出店を見つめる親子を見つけた。

小さな女の子は幸せそうに微笑みながら、父親と母親と両手を繋いでいる。

格好からしてそんなに裕福ではないとわかるが、女の子のおねだりを叶えようと思ったのだろう。

皆で遊べるゲームアイテムを買って、幸せそうに笑い合いながら帰っていった。


「…………。」


そんな親子の背中を見送ると、自分の持っているモノ全てがゴミの様に感じて……完全に何かを買う気が失せる。


「……結局、本当に欲しいものってお金じゃ買えないか。」


どんなに皆が羨むモノを沢山買っても、羨ましいと思われても、自分の欲しいモノじゃないと価値はない。


それは全部代用品だ。

心の隙間を埋めるための……。


「……ハァ。俺ってかわいそ。」


急にバカバカしくなって、買い物は終わりにしてそのまま家に帰る事にしたのだが、自然と足早になっていく足に気づき、ハッとする。


今まで『帰る』時は、重だるい足を無理やり動かしていたのに……。


「…………。」


それに気づくと、ジワッとした幸せな気持ちが湧き、俺はスキップしそうになる足を必死に抑えた。


アホみたいに強いルーク。

その力の前では、俺の力は吹けば飛ぶ紙の様なモノにされてしまい、それはそれは毎日毎日悔しい想いをさせられた。

どんなにフェイクを入れようが、全ての攻撃は見抜かれ撃沈させられる。

それにそれは攻撃だけではなく、他の沢山の嘘や虚勢もすべて暴かれてしまうのだ。


「……なんでバレるのかな。今までバレた事なかったのに。」


舌打ちしながら、今まで仕掛けた数々のイタズラを思い出していった。


◇◇

「くぉぉ〜らっ!アッシュ!またイタズラしたな、お前は。」


「────あいたっ!!」


俺が修行中、飲み物の中に無臭の<ビリビリ草>の汁を混ぜてやった時の事。

ルークはそれを飲む前に気づき、俺にゲンコツを食らわせた。



<ビリビリ草>


麻痺作用を持つ薬草の一種

量次第ではモンスターも麻痺させる事ができる



完璧なタイミングで入れてやったのに何でバレた?!


俺は痛む頭を擦りながら、うっかり飲んでしまい、バターン!!と倒れたセレンを見て吹き出す。


「……〜っ…………っっ!!??……っ!!」


セレンは痺れる体を必死に動かそうとしていたが、動けず……。

とりあえず唯一自由に動かせる目で、ギロッ!!と睨んできたが、ルークが近づき頭を撫でると、目を見開いて固まっていた。


「ほら〜……セレンが飲んじゃっただろ?本当にしょうもないイタズラ坊主だな、お前は。

罰として今日はトイレ掃除だからな。お〜いセレン、大丈夫か?」


「もっ、問題ありません……。」


真っ赤な顔でモゴモゴ言うセレン。

更に撫でられる手の感触が気持ちいいのか、ウットリし始めた。


────ムッ!

なんとなく面白くなくて、俺は自分のたんこぶが出来た頭を指差す。


「ゲンコツされたせいでコブができた。俺も撫でて。」


「悪さするからだろ、アホか。唾でもつけとば治る。」


ルークはペンッ!とコブを叩いてくたので、面白くない気持ちのまま、セレンの鼻を豚の鼻にしてやった。

すると、セレンは物凄い殺気を出しながら凄んでくる。


「────おい、いいかげんにしろ、この悪童め。」


「…………。」


そのまま無視してグイグイ鼻を上に押してやると、セレンは麻痺しているはずの体をグググ……と動かし、俺の手を叩いた。

すると、目を光らせたルークが俺を羽交い締めにし、驚く俺を無視してセレンに向かって叫ぶ。


「おっしゃ、セレン、復讐タ〜イム!アッシュの顔をめちゃくちゃにしてやれ!」


「仰せのままに。」


凶悪な笑みを浮かべたセレンは、まだ痺れて震える手で懐からペンを取り出し、暴れる俺の顔に────茶色い排泄物の絵を書いたのだ!


「はぁぁぁっ!!?何?!ゴリラ女!ルークの横暴上司!」


ルークとセレンにたらふく文句を言ったが、ルークは俺を解放すると、ペチンとデコピンをしてきた。


「馬鹿野郎。やったらやり返されるもんだ。これに懲りたらイタズラすんなよ。」


そう言って聞かせてきたが────俺は未だにイタズラをしてはルークにバレて怒られ続けている。



◇◇

「……何で毎回バレちゃうんだろう。そのせいで毎回怒られる。」


怒られる事は嫌なこと。

それは身にしみて知っているはずなのに……今は、不思議な事に嫌ではないらしい。

それはスキップしそうになっている足が、証明してくれる。


「……変なの。」


不思議な気持ちで家に帰ると、既にセレンが先に帰っていて、大量の食料品を抱えたまま、俺を見るなりゲッ!という顔をした。


「……なんだ、その下らないモノ達は。趣味の悪い置物は、自分の部屋に封じ込めておけよ。」


「え〜?コレ全部、今街で流行っているモノなんだけど?大事な大事な宝物ってヤツ。

アンタこそ、その凄い量の食べ物全部一人で食べるの?

太ったら唯一の特技のスピードなくなるよ。ぷくぷく子豚ちゃん。」


猪突猛進という言葉がピッタリなセレンは、そのまま瞬間的に斬り掛かってきたが、それをヒラリと避ける。

そしてそのまま誂いながら攻撃を避けていると、ルークが帰ってきた様だ。

魔力反応は、入口から入ってきて直ぐに俺達がいる正面玄関の方へ。

セレンは俺より遅れてそれに気づくと、乱れてぐちゃぐちゃになった髪を慌てて撫でつける。


「……アンタさ、ルークの事大好きだよね。そうやってさり気なく身だしなみ整えているけどさ……修行の時、いつも盛大にゲロゲロ吐いてるじゃん。

普通に考えて、それを気にしてない時点で、あんまり意味ないと思うんだけど……。」


「はぁぁ!???そ、そ、そ、そんにゃっ事してない!!」


「…………。」


いや、動揺して噛み噛みじゃん……。

呆れながらセレンを見つめ、ハァ……とため息をついた。


セレンは正直、俺が思い浮かべる『女』のカテゴリーには入ってなくて、それこそ修行の時だってルークや俺相手に殴られても、すかさず攻撃を返してくるし、暴力を相手に怯えないし屈しない。

寧ろそれを自分の無力さへの怒りに変え、『力』に変換してくるので、非常に厄介な相手だとも思っている。


悔しいが、ルークはこの女のそういう強さを認めているから全力で育てていると思うし、それこそが多分この女の魅力。

だから、正直外見とかルークは全く見てないと思う。


それを一応兄弟弟子としての豆粒程の情で言ってやったのに、セレンは大激怒!

ギャーギャー!と怒って激しい攻撃をしてくるので、適当に相手してやっていると、ルークが、ヌッ!と姿を現したのだが────……その手に持っている沢山のおもちゃを見て遠い目をしてしまった。


「……アンタ、何持ってるの?旅に必要な物を買ってくるんじゃなかったっけ?」


呆れながらそう尋ねると、ルークは両手一杯のおもちゃを置いて、その中から真っ赤なリボン型のバレッタを手に取る。


「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。俺が欲しいと思った時が必要な時って事。────ほらっ、これはセレンにやるよ。」


「────えっ!……わっ……っ!?」


真っ赤なリボンをセレンに投げて寄越すと、セレンは慌ててそれをキャッチ。

そしてそのリボンを見下ろしカァァ〜!とそのリボンに負けないくらい顔を真っ赤に染めた。


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