61 国の未来
(ルーク)
「……お前らホント仲良くなったよな〜。」
思わずそう呟くと、二人は一斉にこちらを向いて、顔を大きく歪めた。
「仲良くなどないです。天敵の虫の様な男です、コイツは。」
「こんな筋肉質な凶暴ゴリラと、仲良くするつもりはないな。」
ツーン!と顔を背け合う二人を見て、「あ、そう……。」とだけ返しておき、俺はこれからの事を考えてみる。
二人の実力は、この世界においてどれくらいのモノかは分からないが……少なくとも、この辺を歩いているヤツに比べたら、相手にならないくらいのモノにはなった。
特にアッシュは、元々攻略対象ヒーローだったからか最初からチート仕様だったので、ちょっとやそっとじゃ負ける事はないだろうと思われる。
つまり、二人揃って試験に合格できるに違いない!
自信を持ってブフ〜!と鼻息を吹き、続けてゲームの舞台となる【聖グランド学院】の事を続けて考えた。
そこでは主人公であるリリスが、イケメンヒーロー達とキャピキャピ、イチャイチャと青春的なモノを経験し、やがて破滅に向かう世界を救う事になる。
それには、お陀仏になっていた俺とセレンは関係なし。
アッシュは攻略対象だから関係あるが、まぁ選ばれる可能性は単純に<1/攻略対象ヒーロー>だから、そこまで確率的に高くはないだろう。
仮に選ばれたとしても、アッシュがその道を選ぶなら良し、自分で決めた道なら全力で挑んで欲しい。
そうジジィは思っているわけだよ。
また一触即発で喧嘩になりそうなアッシュとセレンを生暖かい目で見守っていたら、突然アッシュがなにかに気付いたかの様に、俺の方を見た。
「そういえば、アンタ、本当に才能ギフトが【交渉人】?
どう考えても、そうは見えないんだけど……。
そもそも戦闘能力がある事自体、聞いた事がない。」
「確かに聞いた事がないな……。商人なら喉から手が出るくらい羨ましい才能だと思うが……。」
ジッ……と疑いの目で俺を見つめてくる二人。
それについて、俺はどう答えていいか分からず考え込んでしまった。
へいへ〜い!俺、実は老衰で死んだ元軍人だほ〜い☆
なんかルークっていう少年に会って、その体を頂いたんだぜ!ウヒョヒョ〜イ♬
「…………なんて言ってもなぁ。」
「?」
「??」
思わず独り言を呟くと、二人は不思議そうな顔をしていたので、俺はギンッ!と目に力を入れて二人を睨みつける。
「馬鹿野郎!そうやって直ぐに事前情報を信じるな!
全ては自分の目で見たモノを信じるべし!!そうじゃなければ、直ぐに死ぬぞ!!」
「────っ!!そ、そうでした!私としたことがっ!」
「……いやいや、なんか誤魔化そうとしてない?」
素直に反省するセレンとは真逆に、アッシュは疑心暗鬼の目で俺を見つめてきたが、ピュピュ〜♬と口笛を吹いて誤魔化しておいた。
「とりあえずついに来週は【聖グランド学院】の入学試験があるわけだが、試験会場は王都らしい。
そうすると、ここからは馬車で3日くらいの旅になりそうだな。どんな街なんだろうな〜。」
「王都……王族の住む御城がある、この国の主要首都ですね。
すごく広いと聞いた事がありますが、どれくらい大きいんでしょう?きっと見たこともない様なお店や建物が……。」
俺とセレンはポワワ〜ンと、お洒落で楽しい雰囲気の街を想像していたのだが、それをぶち壊したのは、アッシュの大きなため息だった。
「そんな良いところじゃないと思うよ?
王都は王族と貴族が支配する街……つまり絶対的な身分制度がある場所って事。
少なくとも平民目線から見たら、天国とは言えない場所だと思うけど。」
「……あ〜なるほどね。」
そこで思い浮かんだのは、この国の現状についてだ。
この国には、現在王位継承権を持っている王族は、正妃が産んだ第一王子<ライン>と、側妃が産んだ残り二人の王子様と一人の王女様がいる。
現在の王様は<アース>王で、勿論王様が一番偉い。
そして次は貴族、平民、下民、奴隷と続いていくわけだが、この身分の一つ一つの差がエグいほどハッキリしていて、それを最も重視した形で国は成り立っているのだ。
「まぁ、全てが悪いとは言わないけどな〜。戦闘時ではハッキリした身分差があった方が、迅速に動けるし。
だが、それがあまりにも妄信的になっていくと、心配だな。
ラリー君……じゃなくて、えっと〜ライン?王子様の方は。」
今後の事を考えると頭が痛くなってきて、俺は顎に手を当て、ハァ〜……と大きな息を吐き出した。
アース王は、歴史的に見ても穏やかな王様に分類される王様で、身分による差はあれど、なんとか上手くバランスを取って、国民からの不満は爆発していない。
しかし、問題はその次世代達で、一番目立つ不安分子は第一王子の<ライン>。
そいつが仮に王様になったら一体どんな国になるのかと、大抵の平民たちは不安に思っている様だ。
「私は政治というモノに対して無知ですが……次代の王によっては、平和というモノが遠い過去の話になりそうな気がしてます。」
平民であるセレンは、不安を隠さずそう呟くと、アッシュが「そうだろうね。」と言って面倒くさそうに吐き捨てた。
<ライン>は非常に好戦的で、他の兄弟達の中では群を抜いて、身分に関しては妄信的な考えを持っていると聞く。
だから、このラインとかいう若造を王様にしてしまえば、他国への交渉という言葉の侵略を強行し、世界中で戦争を起こすかもしれない。
そうなると────まず最初に犠牲になるのは徴兵される平民たちで……。
要は、ライン王子様や他の貴族達だけが幸せに暮らせる世界を創らさせられると思われる。
「『力』の使い方を知らねぇ若造がその力を手に入れちまえば、考える事は一つ。
『自分だけに都合がいい世界を作ろう。』だ。
じゃあ、そうさせないためにはどうしたら良いと思う?」
「とりあえず、投票しない事かな。ただ、その場合誰にするかだけど。」




