57 目指すは……
(ルーク)
「目指せ!青春!輝く様な学生生活!
普通に勉強して、普通に友達作って、普通に遊ぶ!そんな普通の生活を謳歌するため、聖グラウンド学院に俺達全員で合格するぞぉぉぉ!!!」
最後は拳を握って『よっしゃっ!』と叫びながら飛び上がると、一瞬の沈黙が降りた。
「聖グラウンド学院というと……あの、殆ど貴族しか通えないエリート学院ですか?」
セレンが恐る恐る聞いてきたので、俺は両手で大きな丸を作って肯定する。
「そうそう。それ。俺達皆で同級生になろう!」
「さ、流石にそれは……。私は平民ですし、実力もそれに値するほどありませんので……。」
シュン……と肩を落としてしまったセレン。
俺は、セレンに見せつける様に、指を『チッチッチ〜!』と振った。
「なにを弱気になっているんだ!セレン!
努力!根性!それがあればなんでもできる!今日から地獄の特訓開始だ!果たしてついてこれるかな〜?」
「────っ!ハッ!そ、その通りでした!早速着替えてきます!!」
ゴゴゴゴ〜!!
激しく燃え始めたセレンは、俺の母親が住んでいた左の部屋へと走って行き、扉をバタンと閉める。
セレンはとっても頑張り屋さん!
引退世代の記憶持ちの俺としては、嬉しい限りだ。
「普通に……ねぇ。どうかな〜。どんな事すれば普通にできるの?」
セレンとは違い、こっちは言葉の軽い感じとは逆に、結構ネガティブな気持ちがある様だ。
俺は、自分のおでこをペチッ!と叩いて「カァ〜!!」と喉を鳴らした。
「そんなモン、これから探すに決まってんだろ?
それが楽しくて学校に行くんだろうが(多分)!だが(多分)舐められたら終わりだな、そこは。
だから修行を頑張ろう。まず普通になるにはそこからだ(多分)。」
一応俺の学生生活?に該当する場所は、新日本国軍の養成所。
そこでは戦闘訓練全般と、ちょっと痛い痛いな拷問訓練や薬物訓練を学ぶ場所だったが、とにかく舐められたら終わりで、いける!と思ったら、先生だろうが先輩だろうが、先制パンチが基本だった。
自分の学生生活とやらを謳歌するためには、少しでも上に立つべし。
多分普通の学生生活も、基本はそこのはずだ。……まぁ、平和になった後は違ったらしいけど。
「……探しに?」
「そうそう。だから普通にしようとするのは間違い。
普通を探しに行くんだよ。アッシュ君の。俺は俺の普通を探しに行くぞ。
だから、まずは普通を探す切符を取りにいくんだ。全力でな。」
ややボンヤリしているアッシュの首に腕を回し、キチンと言い聞かせてやった。
すると、アッシュの瞳の奥がキラキラと輝きだし、さっきのセレン同様、闘志の様なモノが見えてくる。
「普通を探す……いいね、それ。めちゃくちゃ楽しそう。
とりあえず、試験官全員殺せば合格できる?」
「アホか、そしたら試験資格は剥奪だっつーの!」
ガスッ!とオデコをどついてやると、アッシュは「痛っ!」と叫び、そこを手で押さえていたが、なんとなく楽しそうだ。
「おまたせしました!」
その直後、セレンが部屋から慌てて出てきた。
さっきまで着ていた平民女性のスタンダード服である膝下スカート姿から、ちゃんと動き安い様白い簡素なシャツと七分丈の茶色いズボンに変わっていて、髪は後ろで一本に結んでいる。
ちなみにアッシュは、昨日服が血だらけでもう着れなかったので、男性護衛の奴ら用の訓練服を着せてやった。
これも黒ベストに白シャツ、スタンダードな黒ズボンという、非情にラフな格好である。
俺はこのアッシュと同じく訓練服を着てはいるが、一応伯爵家の御子息様ってヤツなので、マフラーに近い短い白マントを装着してみた。
「よし、じゃあ、セレンはこれから俺の組んだジョギングと筋トレメニューをこなしてもらって、俺と模擬戦形式での訓練な。
それが一旦終わったらアッシュと交代。
今のところアッシュは基礎訓練はいらないと思うから、お前は俺との模擬戦オンリーでいいだろう。
色々自分なりの戦闘スタイルを作っていけよ。」
「は、はいっ!!」
「ハイハイ。」
セレンはアッシュに負けた事を思い出しているのか、悔しげに唇を噛み締めてきたが、直ぐにそれを心の奥に隠していい返事を返してくる。
良い根性!これは腕がなるというもの!
二人はやる気に溢れる目でキラキラと光り輝いていたが……それは鍛錬が始まるまで。
それぞれに課したメニューが進むたびに、それは徐々に失われていき────最後は揃って気絶した。




