(アッシュ)51 真実
(アッシュ)
「な……あ…………あ……。」
「んん〜??おかしいなぁ〜?これくらいで動揺するなんて『役立たずのチキン野郎』なんじゃなかったっけ?震えているのって、武者震いってヤツ?」
小さく震えているメンバー達を指さし笑うと、恐怖よりも怒りが勝ったらしいメンバー数人が、激昂しながら飛びかかってきた。
「こっ、こっ、このぉぉぉぉ!!!!」
「死にかけがぁぁぁぁぁぁ!!!」
うおぉぉぉぉ!!!と大声で叫びながら、勇ましく剣を振り上げるメンバー達。
無駄なのに可哀想にね?
スローモーションの様に振り下ろされる剣を最小限の動きで避けた後、その胴体をまとめて蹴ってやると、全員の体は上と下に分かれてふっ飛ぶ。
断面から血がぶしゃッ!と吹き出す中、奴らは呆然と分離してしまった自分の下半身を見つめながら、弱々しい悲鳴を上げて絶命した。
「……ヒッ!!!」
「う……うわぁぁぁぁ!!!」
残りの数人は恐怖のまま走り出し、その場から逃げようとしたが────俺が逃がすわけがない。
直ぐに出口へと先回りして、一人づつ始末していく。
だって、『目撃者は残らず殺せ。』が常識らしいからさ、文句ないでしょ?
「う……あ……あぁ……。」
阿鼻叫喚の悲鳴が収まると、後にこの場に残ったのは言葉にならないうめき声を上げている父だけ。
真っ青な顔でへたり込む父へ視線を向けると、父はビクッ!!と大きく体を揺らした。
「ま、ま、待て!!!ア、アッシュ!!落ち着け!!────なっ?落ち着いて話を……。」
「俺は今までにないくらい落ち着いてるけど。アンタこそ少し落ち着いたら?
『戦闘中に心を乱すなんて役立たずのゴミがする事だ』ってアンタ言ってたでしょ?
っていうか『口先だけの無能』って、今のアンタみたいなのを言うんじゃない?ホント、自分じゃな〜んにもできないね。」
流石に頭にきたのか、額に血管がビキビキ浮かんでいたが、手は出してこない。
圧倒的な実力差を目の当たりにして、どうにか口でやり込もうとしているのだろうと思ったが……それは大当たり。
碌でもない事を口にする。
「アッシュ、今まで辛く当たってすまなかった!でも、これは父親としての本当の愛情だったんだ。
厳しく接する事で、お前を立派に育ててたんだよ!」
「……へぇ〜?さっき俺を殺そうとしてなかったっけ?」
誂う様に返すと、口端を引きつらせながらも、父はヘラヘラと媚びるような笑みを浮かべた。
「そ、そんな事するわけないだろう!あれはちょっとしたジョークだよ!
自分の可愛い息子を殺そうとするわけがないだろう?これはお前の実力を試したんだ!
そのメンバー達は、最近ちょっと行き過ぎた行動が多くてな〜そろそろ始末しようと思っていた所だった。
だからアッシュに修行がてら始末してもらおうと、こうして計画したんだよ。勿論、文句なしの合格だ!流石は俺の自慢の息子!」
次から次へと口から飛び出す薄ら寒い言葉に耐えきれず、プッ!!と吹き出すと、そのまま腹を抱えて笑ってしまう。
そして自分が本当に欲しかったモノなんて、最初から欠片もなかった事を理解すると、ソコから頑なに動こうとしない幼い頃の自分が心の中に見えた気がした。
「────ねぇ、さっき気になる言葉を言ってたね。
『また新しいのを調達しないといけねぇな。今度は、戦闘系ギフトを持っている女で探すか!』って。────また調達って何?」
「えっ!!そ、それは……その〜……。き、聞き間違いじゃないか?俺はそんな事……。」
俺は笑顔のまま無言で父の片足を踏み潰すと、グチャリと潰れてしまった自分の足に父が悲鳴を上げたので────その口元を片手で鷲掴み、顔を近づける。
「────言えよ、早く。」
「────っ〜……っ……!!」
本気の殺気をぶつけてやると、父はガタガタと震えながら、顔色を白へと変えていった。
そんな父を睨みつけながら、口元から手を外すと……父は震える声で喋り始める。
「せ、戦闘の才能……持って生まれた子供を……見分けるスキルを持っていて……だから、平民の子供を……。」
「攫ったんだ?────で、俺の本当の両親は?」
あえて分かりきった事を聞くと……予想通りの答えが返ってきた。
「両親は……し、始末した……今は……その村も……ない……。」
俺の両親で楽しく遊んだ後は、証拠を消すため、村ごとモンスターに襲わせて皆殺し……って所だろう。
つまり、俺にほしいモノをくれるはずだった両親は、とっくにコイツに奪われていたって事だ。
「……ククッ…………は……アハハハハハっ!!!!!」
それに気づいたら可笑しくて可笑しくて!
気がつけば狂った様に笑っていた。
そんな俺を見て、父親だと思っていたモノは、滝の様な汗を掻きながら多分色々と考えたのだろう。
目をキョロキョロと回しながら、何かを思いついた様に言った。
「────あ!もっ、もしかして、あの邪魔してきたガキに何か言われたのか!?
言う事を聞けば、たんまり金をくれるとか、地位をくれてやるとか……。だっ、だったら、それは大嘘だぞ!あのガキにそんな事を叶える力はねぇからさ!!」
「……ふ〜ん?何で?だってアイツ、偉いお貴族様みたいじゃん。」
でっかい豪邸に住んでいて、沢山の従業員に囲まれ優雅に暮らしてきたお貴族様。
キラキラと輝く様な……それこそ天国みたいな場所に住んでいる────……。
「アイツは元々、実の両親に殺されるはずのいらねぇ子供だからだ!今まで、ずっとあの屋敷に隠されて、近々破棄される予定だったはずなんだよ!!」
「────はっ……?」
思いも寄らない言葉に、俺が黙ると、父だったモノはペラペラと話を続けた。




