(アッシュ)50 自分の人生
(アッシュ)
「俺達はこれからもっともっと上に上がる。あのリリスとかいう平民女を殺せば、ある御方が、俺達を『上』へ連れて行ってくれると約束してくれた。
だから、お前みたいな役立たずはもういらねぇんだよ。
まぁ、今まで誰も面倒でやりたがらなかった仕事を片付けてくれた事には感謝してるわ。ゴミにしては役に立ってくれましたぁ〜♡」
グリグリと俺の頭を更に踏みつけ、父やメンバー達は一斉に笑った。
俺が呆然としていると、父は足をどかして俺の髪を鷲掴みにし、自分の目線まで体を持ち上げる。
「だから、いらねぇゴミは処分しないとな〜?
ほら、ゴミは使うだけ使っていらなくなったらポイッだろ?元々お前、クソ生意気だし気に入らなかったんだよ。
綺麗な顔してんのもムカつくし。女だったら性処理くらいには使えたのに残念だわ。
また新しいのを調達しないといけねぇな。
今度は、戦闘系ギフトを持っている”女”で探すか! 」
「……新しい……の……?」
父の言葉を聞いて、絶望が心を覆っていく。
だが────同時に『あぁ、そうか。』と理解もした。
ここは元々、俺の居場所じゃなかったんだって。
そして────……なぜそんな場所に執着していたかの理由も…………。
「じゃあな〜♡あばよ、クソゴミさ〜ん♡」
父は俺の髪を掴んでいる手と逆の手を大きく引き────そのまま俺の顔目掛けて拳を打ち込んだが……それが叶う事はなかった。
何故なら、俺がそのクソみたいなパンチを片手で止めたから。
「────っ!?」
「あ〜……もういいや。馬鹿みたいだね、俺の人生って。」
一応これで全力のパンチだったらしく、俺が片手でそれを止めた事に父は驚き目を大きく見開いていた。
俺がクスクス笑いながら、受け止めている父の拳をゴキッ!!と握りつぶしてやると、父は今まで見たことがないくらい顔を歪め「ギャァァァァァ!!!!」と叫ぶ。
周りのメンバー達は、そんな父と俺を見比べ、一斉に剣を抜き警戒体勢を取った。
「て、てめぇっ!!!」
「な……っ何を…………っ!!!!」
慌てふためくメンバー達をゆっくり見回し、余裕たっぷりに笑ってやる。
「あれれ?おかしいね?『この程度で悲鳴をあげるなんて、この無能!クズ!役立たず!!』……なんじゃなかったっけ?
俺がどんなに殴られて、蹴られて、斬られて、焼かれても────『悲鳴をあげるなんておかしい』って散々言ってたよね?」
二コニコと笑いながら、そう言ってやると、父は直ぐに懐から回復薬を飲み込み、殺気塗れの目で俺を睨む。
「うるせえんだよぉぉぉぉ!!このクソガキがぁぁぁ!!!
よくも俺の手をっ……!!楽に殺してやらねぇからなっ!!!
────おいっ!!全員こいつを殺せぇぇぇぇぇ────!!!!」
激昂した父が怒鳴りつけながら俺を指差すと、周りにいたメンバー達が一斉に俺に襲いかかった。
「ハハハッ!!ば〜か!!この人数相手に敵うかよ!!」
「しかも瀕死の死にかけじゃん♬少しづつ切り取って遊んでやるよ!!」
自分の優勢を疑ってない父もメンバー達の顔には、沢山の幸せが浮かんでいる。
相手を蹂躙する事への期待、快感、優越……コレがコイツラの幸せを作る方法。
そして俺は────その幸せを作るために使う、使い捨ての道具だった。
それが俺のいた世界。
「……ククッ。ホント、馬鹿みたいだ。」
『最後は自分で決めて、自分の足で動かないと何も変わらねぇよ、どこに行ったってさ。
お前が激怒している事なんて、ただの変わるきっかけ程度だろ?』
野ねずみ野郎に言われた言葉が突然頭に浮かび、苦々しい想いが湧く。
俺は、お綺麗な場所から手を差し出してくるヤツらが大嫌いだ。
そこには、俺みたいなヤツにたいする優越や自分の正当性に酔っている気持ち悪さがあるから。
でも……本当にそれがムカついていた理由は────自分で決めて自分の足で動く事を選ばせてくれないからだ。
俺の人生は俺が決める。
ただ圧倒的な正しさを語り、俺の世界を否定して、自分で答えを選ぶ暇もなく自分達の世界へと連れて行こうとする傲慢さが大嫌いだった。
「だって、自分で選んで自分で向かわないと……それって俺の人生じゃないじゃん。
俺は手を差し出されるよりも……その背中を見せてくれるだけでいい。」
自分が正しいと思って進んでいる人の背中を見て────自分の本当に行きたい場所を探したい。
それが、今の俺にはそれができる。
このクソみたいな所で手に入れた『力』と、役立たずになったお陰で手にいれた『自由』があるから。
「…………。」
ニヤッと口の端を上にあげると、目の前に迫っていた剣を一瞬で回避する。
「────なっ!!」
「────っく、クソっ!!あのガキどこに!!??」
「スキルか……っ!!??」
俺はただ軽く避けただけ。
なのに、こんな動きすら追えずに、慌てるメンバー達を見て笑いが止まらなかった。
コイツらは、全部俺に仕事を押し付け、上でふんぞり返っていただけ。
だから、何にもできないの。
怠惰は人を一番駄目にするモノだって、コイツラを見ればよく分かる。
「────っ!う、後ろだっ!!!」
父が一人のメンバーの後ろに立つ俺に一番に気づき、全員の視線が俺へ向くが、遅い遅い。
俺は振り向こうとする前に立つ男の両足を────蹴ってふっ飛ばした。
「ギャァァァァ────!!!!!!」
両足が弾けるように吹っ飛んでしまった男は、自分の両足を失くし、無様にその場に転がる。
そして恐怖に塗れた目で俺を見上げたが、俺は笑みを浮かべたまま……その顔を踏んで潰してやった。
────ゴキッッ!!
殆どが骨が砕ける音。
広がっていく赤色を見て……父と残りのメンバー達の顔が恐怖に歪んでいく。
俺の心は波一つ立っていないのに。




