46 じゃあな!
(ルーク)
「お前には、もうその場所を壊す力がある。
今までの人生は、その力を手に入れるために役に立つモノだった────それでいい。
俺はそもそも善人じゃねぇからさ、自分に優しくしてくれるヤツがいる場所はすごく大事にするけど、そうじゃねぇヤツがいる場所は、基本貰うもん貰ったらサヨウナラ〜する場所だと思ってるわけよ。」
「だからっ!!!何が言いたいのか分かんないって言ってんだよ!!このクソネズミ野郎!!!」
全ての攻撃を尽く避けられ、焦りと不安、恐怖を感じているであろう黒マントの男は、大声で怒鳴りちらしながら、上から下への踵落としをまた俺へと放った……が、俺は横に少しだけズレて避けると、大きく一歩前に出た。
そして拳を軽く後ろに引き、息を飲んだ黒マントに向かい、ニヤッと笑ってやる。
「だから、ホントは分かってんだろ?────分かりたくねぇだけで。」
「────っ……。」
そのまま何かを口にしようとする黒マントの男だったが、それに答える事はできなかった。
なぜなら俺が腹をぶん殴ったから。
「────ッ!!!!」
拳をもろに受けた黒マントの男は大きく吹っ飛び、受け身も取れずに地面に叩きつけられる。
そして、そのまま数回ゴロゴロと転がっていき、なんとか立ち上がろうとしたが、ダメージが大きいらしく、直ぐには立ち上がれない様だ。
俺は殴った拳に息をフッと掛け、そんな黒マントの男を見て考えた。
俺は共感だの慈愛だの、そんな高等なモノは持ってない。
だから、この黒マントが納得する様な言葉は、絶対に与えられない事は分かっている。
「まぁ、俺みたいなヤツにできる事なんて一つだけか。」
ザッ!ザッ!とゆっくりと近づいてくる俺を、黒マントの男は睨みつけてきたが、そんな視線はなんのその。
死ぬほど向けられてきた視線だから、屁でもない。
『何で邪魔すんだよ……!こんな世界……ぶっ潰して、元の世界に戻すんだ!!』
そう叫んでいたのは、かつての仲間達。
間違っているのは分かっていても、一つの感情が邪魔をして、今いる場所から動く事を拒絶する。
だから、それを壊そうとする相手を、こうして憎むのだ。
「っ!!ちっくしょぉぉぉぉ!!!」
黒マントの男は、渾身の力を振り絞って立ち上がると、片足でダンッ!と地面を強く踏みしめた。
すると、パキパキ……という音と共に、地面が凍っていく。
【王魔人】
< 零度の大地 >
水属性の性質を変え、氷属性へと変異した魔力を地面に流し、相手の動きを止める拘束系攻撃スキル
それに捕まった相手は、冷障による持続ダメージもプラスされる
(スキル条件)
水属性の適正を持つこと
一定以上の魔力、魔力操作、冷静、知力を持ち、一定以上の敵を死なさずに戦闘不能した経験値を持つこと
「────お?」
広範囲で凍っていく地面。
それは俺のいる場所まで一瞬で広がり、足が凍りつくと、黒マントは一瞬で俺の眼の前へ。
「死ね。このクソ邪魔な野ねずみ野郎。」
頭を狙ったキックは、確実に俺の命を奪うと思われたが────大きく引いた拳を俺が地面に突き立てたため、砕けた氷の破片達と衝撃が逆に黒マントを襲う。
「────っ!?」
「普通のヤツなら今ので決まりだろうが、残念でした。」
体勢を少しだけ崩した黒マントの男が、ハッ!とした時には、俺は既にもう一度拳を引いていて……そのまままた胴体へ正拳突きを放ってやった。
「────っ……っ!!!」
黒マントの男からは息が詰まった様な声が聞こえ、そのままなすすべもなく、またふっ飛ばされる。
そして転がった先で、必死に上体だけ起こすと息を荒くして、初めて恐怖の様な感情を俺に向けてきた。
「……っハァ!……ハァ……ッ!……ア、アンタ……まじでなんなん……?ば……化物……っ……!」
「失礼な事を言うなよ。ちゃんとした人間だっつーの。」
またゆっくり近づいてくる俺を睨みながら、俺から少しでも離れようとしているのか無意識に後ずさる様な仕草をする。
しかし、俺はどんどんと近づいてくるので、小さく震えていた。
「……最初は、自分の世界を壊そうとするヤツだけなんだ。欲しいモノを得るため、それを邪魔しようとするヤツを憎む。
つまり、今のお前にとって、それは俺だな。」
「…………?」
何を言いたいのか分からないという感じの雰囲気を出す、黒マントの男。
俺はそんな黒マントの男の目の前で止まると、ただ無感情にヤツを見下ろす。
「そして最終的には、この世界そのものへと憎しみは向く。
自分の欲しいモノを与えてくれないのは、世界が悪い。自分の欲しいモノを平然と持って幸せそうに暮らしている人々が憎い。
だから────『全部壊そう』。
その結果待っているのは……憎しみと怒りが渦巻いた、自分が欲しかったものとは正反対の世界だ。」
「……な……にを……?」
ブルブル震えている黒マントからは余裕は感じられなくなっていて、多分なんとなくだが見ようとしなかった現実が一気に襲ってきているのだと思った。
こればっかりは誰かに求めても、最終的には自分が足を動かさないと本当の意味で願いは叶わない。
それがない場所に居続けても、全部無駄だという事。
「だから俺みたいな頭空っぽのクソ野郎にできるのは、そこを壊すことだけだ。
お前の今のクソみたいな居場所、ぶっ壊してやるよ。そしたら、嫌でもそこにはいられないだろう?
そこからどう生きるかは自由。
勿論、それでもそこへ戻る事を選ぶなら……もう無理だろうな。
悪いが無関係な人達を巻き込む前に殺す。それだけだ。」
「────うっ……うぅっ……っ!!」
黒マントの男からは俺に対してではない本気の恐怖が伝わってきて……恐らく肋は折れているだろうに飛んで立ち上がり、体から魔力が一気に吹き出す。
「ふ……ざけんな……よっ……!!俺の……俺のっ……俺の居場所を壊すなぁぁぁぁ!!!!」
バチバチバチ!!!
物凄い勢いで帯電する黒い雷の様なモノは一瞬で大きくなり、そのままその足を俺の頭を狙って打ってきた。
【王魔人】
< 死電雷足 >
闇属性と雷属性、物理属性の魔力を混合させた超火力特化の攻撃系スキル
自身の闇属性と雷属性、物理属性が強い程威力はUPし、好戦値、戦闘経験値、孤独値が強い程威力は高い
(スキル条件)
スキル<絶死足>の条件を満たし、更に一定以上のステータス値、好戦値、戦闘経験値、孤独値を持つ事
俺達の周囲の地面はボロボロと崩れ、その破片は宙を舞い、今いる場所は崩れていく。
その中で、俺は黒マントの最後になるであろう一撃を……真っ向から受け止めた!
「────っ!!!」
すると、今度は絶望に襲われた黒マントを見つめ、ニヤッと笑ってやる。
「じゃあな、今度は違う場所で会おう。」
俺は何も答えない黒マントの足を軽くそのまま弾くと、また大きく拳を引いて────……そのまま顔をぶん殴ってやった。




