43 リリスという女
(ルーク)
◇◇
「さぁ〜て、そろそろかな〜?」
自室のソファーでくつろぎながら、少し離れた所から近づいてくる魔力反応を探る。
多分、以前見たアイツに違いない。
そう確信して、意地悪くニヤリと笑ってしまった。
朝に起こした騒ぎにて、めでたくヘビネロ商会は全滅。
ろくでもない奴らは、全員奴隷を扱う奴隷商人に全員渡してやり、すっかり辺りが暗くなった今は、俺は自室でゆったりタイムを満喫している所だ。
思った以上に上手く言った事に、思わずニヤッ〜と笑みを浮かべた。
「派手に炊き出しすれば、何割かは顔を出してくるだろうと思っていたが、まさかの全員総出とは……。
ホント、頭空っぽのおサル軍団だったなぁ〜。あれじゃ〜どう考えても、裏がある様には思えない。
……って事は、やっぱり別の組織が関わっているのは確実だな。」
ソファーにもたれかかり、ボンヤリ天井を見上げながら色々考えた。
誰かがヘビネロ商会を焚き付け、孤児院や街の貧民街の人達を相手に派手な動きをさせていた。
最初は、その流れで孤児院の襲撃事件を起こしたのかとも思ったが……奴らの目的はハッキリしていて、金のためと考えればどうしても辻褄は合わない
「────って事は、多分孤児院の襲撃は、ヘビネロ商会を操っていたヤツらがやったと考えるのが、BESTだな。
そうすると……恐らく最終的には、ヘビネロ商会に全ての罪を着せるつもりだったって事か。」
見えてきた目論見に、俺は目を閉じやれやれと肩を竦めた。
そりゃ〜これだけ派手に暴れていれば、何か事件が起きた場合、当然一番に疑われる。
「たかが貧民街のシスター数人と孤児が殺されたくらいじゃ、上はそこまで詳しく調査しないだろうしな……。罪を被せるには、ヘビネロ商会は格好の相手だ。
────だが、問題はなぜ孤児院の連中を襲ったかだ……。」
そこで殺されたのはシスターと孤児、そしてたまたまリリスの代わりに留守番していたセレンだった。
その理由だけは、結局考えても分からない。
「……う〜ん……分からん。
もしかして、精霊に関する強力な才能ギフトを持っているリリスが目的かとも思ったが……そんなに用意周到で間違える事なんてあるか?
流石に襲撃する時に、ターゲットの顔写真くらい見ているだろうし……。
そんなウッカリはしないとは思うんだが。」
その場で首を横に倒し、うう〜ん?と考え込んだ。
なんといってもその一味であろう黒マントの男は、セレンをあっさり倒す程の実力は持っている様だったし……そんな初歩的な間違いをする様な輩だとは思えない。
流石に間違いに気づき、リリスが帰って来るまで待っているか、買い物先で始末するか、するはずだ。
「……そうだよな〜。────っつーか……リリス、あいつどうなってんだよ。
どんだけの頻度で遊び歩いてんだ??」
呆れながら、最後孤児院から撤収する際、ドルマと話した内容を思い出した。
〜〜〜
「?そういえば、リリスがいないな。どこに行った?」
キョロキョロ見回しても、それらしき人物が見つからなかったため、ドルマに聞いてもたが……困った顔で微笑むだけ。
返事が返ってこない事を訝しんでいると、やはり前回同様、答えてくれたのは不満いっぱいの子供達であった。
「リリスねぇちゃんは、いつもご飯をバカにしていなくなっちゃうんだよ! こんな貧乏くさいご飯食べられないって!」
「僕達の事も、『貧乏くさくて可哀想〜ww』とか、『汚いガキにはお似合いね♡』とか悪口言ってくるんだ!」
「私リリスおねぇちゃん、だいっきらい!」
キーキー!怒り狂う子供達を見て、ドルマは大きなため息をつき、ポツリポツリと話し始める。
「リリスには困ったモノです。
あの子は、元々人とは違うというか……年相応ではない賢さを持った子供でした。
彼女の目は、常に綺羅びやかなモノに向いていて、この孤児院は、早いうちから要らぬ物と判断されてしまった様です。
悲しいですが……それも一つの考えだと思い、我々は受け入れる事にしました。」
「なるほど……。まぁ、そういう時期に何を言っても鬱陶しがられるだけだからな。」
若いウチは、家族がウザいとか?ダサい友達はいらないとか?
そういった恥ずかし〜い行動の末、大人になってその黒歴史に苦しむ。
かくいうウチの息子もそうで、一時期悪い友達達とつるみだし悪さをし始めたので……完膚なきまでにフルボッコの、ついでにその友達と所属している悪い集まりも全員ぶっ飛ばして強制解散させてやったのが懐かしい。
「……熱かった。」
その時の思い出を振り返り、思わずへっ!と鼻で笑ってやると、ドルマの後ろからポコポコとキノコの様にシスター達が顔を出した。




