(セレン)39 戦いの果てに
(セレン)
唖然としている私の前で、筋肉ダルマはワナワナ震えながら、戦い始めた街の人達に向かい、大声で怒鳴りつける。
「な、何してんだお前らぁぁぁぁ!!こんな事してどうなるか分かってるのか!?
俺達に逆らえば、後で酷い目に────……。」
「だからなんだ!!このクソ野郎!!!こんな子供が戦っているのに、大の大人が黙ってられるか!!コラァ!!」
街の人達は、やり返されて怪我をしても、構わずヘビネロ商会の奴らに果敢に掛かっていっては、その勢いはどんどんと広がっていった。
気がつけば街中の人達が武器を持って駆けつけ、流石のヘビネロ商会も圧倒的な数の差に、真っ青になっていく。
「な……な……ななっ……!!」
筋肉ダルマは、周りで一人、また一人とやられていく自分の仲間たちを見渡し、汗を大量に掻きながら、ジリジリと足を後ろに引いた。
今まで大人しくしていた街の人から金を巻き上げていたヘビネロ商会は、まさかの反撃に精神がついていかないようだ。
私は楽しくなってきて、ワクワクしながら木刀を強く握る。
「今日がヘビネロ商会の命日だな。ご愁傷さま。」
「は、はぁぁぁぁぁ!!?ふっ、ふっざけんな!!!そんなわけあるかぁぁぁ!!!」
筋肉ダルマは斧を大きく振り上げ、私を狙ったが────そんなモノが当たるわけもなく、私はトンッと飛んで空へ。
そして空中に小さな魔法陣の足場を作ると……それに足をつけて大きく踏み込み、筋肉ダルマに向かって飛んだ。
【共通ノーマルスキル】
< 空道 >
自身の魔力で小さな魔法陣を描き、それを足場にする事ができる移動型特殊スキル
魔力と魔力の操作性が高い程、より沢山の魔法陣を同時に出現させる事ができ、空を駆け抜ける事もできる
「う、うわぁぁぁぁ!!」
筋肉ダルマは慌てて斧を持ち上げようとしたが、間に合うわけもなく……私の木刀はその顔にめり込む様にクリーン・ヒット!
顔が大きく歪んでしまった筋肉ダルマは、そのまま白目を剥いて仰向けにバターン!と倒れてしまった。
「私の勝ちだ。ざまあみろ!」
拳を握って空に向かって掲げると、周りからはワッ!!と歓声が上がる。
どうやら私がぶっ飛ばしたのが、ヘビネロ商会のボスだったらしく、周りにいる他のヘビネロ商会の奴らの勢いがどんどんと弱っていった。
そこで街の人達がトドメを刺していった所で、上からボロボロの状態のヘビネロ商会の奴らが沢山落ちてくる。
そして山になったソイツらの上に、スタッ!とルークが着地した。
「これで全部だな。この俺から逃げようなんて甘い甘い。」
ご機嫌で笑いながら、ルークは私の方へと飛んできて手のひらを向けてくる。
「やったな、セレン。」
「────!あ、あぁ!楽勝だった!」
ルークの手のひらに自分の手を打ち付けると、ジ〜ン……と感動に打ちひしがれた。
そこでまた街の者達はワッ!と喜びの声を上げ、その大騒ぎっぷりにルークが僅かに目を見開く。
「???あれ、何でこんなに大騒ぎになってんの??」
「我慢できなかったのは、私だけじゃなかったみたいだ。皆、大活躍だったよ。」
満身創痍だが、ご機嫌な街の人達はぴょんぴょんと飛び上がって喜びを表現していて、ルークはそんな皆を見て、また笑った。
すると、街の人達は私とルークの元へ駆け寄り、パシパシと背中や肩を叩く。
「ありがとう!二人のお陰で今日はめちゃくちゃスッキリした!」
「ザマァ見ろだわ、くそったれ共め!二人とも強いのね。ありがとう!」
「うぅ〜……今までの恨み、全部晴らしてやった!サンキュー!二人共!」
ワイワイとまるで祭りのような状態の皆を見回し、また自分の拳を握って見下ろした。
戦いの果て。
これが自分の危険を犠牲にして手に入れたもの……。
「…………。」
それをよく理解し、やはり自分はこの道を選びたいと思った。
理不尽には真っ向から立ち向かう。
例えこの命、失くそうとも……後悔はきっとない。
大騒ぎな人々の中、決意を固めた所で、突然冷静な声が響く。
「皆様、落ち着いて下さい。喜べるのは今だけです。きっと……これからヘビネロ商会の者達は復讐を考える事でしょう。
直ぐに今回の事の解決法を考えなければいけませんね。」
「ドルマ……。」
声の正体はドルマだった。
ドルマは悲しげな顔をしていて、他のシスター達も同様の顔で、震えている子供達のケアをしている。
その言葉の意味を理解した街の皆は、途端にお祭りムードから一変、口を閉じてシュン……と肩を落とした。
タチの悪い輩が、相手を害そうとし反撃にあった場合、必ず『復讐』という名の報復を考える。
その復讐は、自分が大損をするとしても、相手をコテンパンにするまで止めないのだ。
結局善人は、相手の気が済むまで我慢するしかないと……それが現実だ。
「…………。」
心にまたしても迷いという厄介なモノがのしかかり、自然と視線は下へと向く。
きっとこれからヘビネロ商会の奴らは、今まで以上に街の人達に嫌がらせを始めるだろう。
それは陰湿で、黙って反撃できない弱い者へは今まで以上に……。
結局自分が戦う事は、戦えない人々の迷惑になる。
戦いを望まない者達からしたら、『戦え』と強制するのと同じなのだ。
ドルマは気遣う様に、私を見つめてきた。
その目には心配だという想いがある。
そんな想いを……私は……。
「大丈夫だって!もうコイツらがお前達に手を出す事はねぇからさ。安心して、安泰な生活ってやつを送ってくれよ。」




