(セレン)37 任せた
(セレン)
理解不能な事を言って大笑いしているルークに、ドルマはタジタジだ。
子供達はキョトンとしながら、それぞれ効率の良い虫取りの仕方を口にしては楽しそうにルークと喋っている。
ルークはちょっと変わってる人だ……。
また一つ、ルークの一面を知り、ウンウンと頷いていると……突然バキッ!!という何かが砕ける破壊音がして、ハッ!としてそちらへ視線を向けた。
すると、そこには顔を真っ赤にしたガラの悪そうな男が数人いて────足元には孤児院の周りを囲う柵の残骸が落ちている事から、恐らくさっきの音はそれが破壊された音だと気づく。
ヘビネロ商会だ!
それに気付いたドルマとシスター達、年長組は、すぐに青ざめている年少組の前に立ち、ヘビネロ商会の男たちを睨みつけた。
「こんにちは〜ドルマシスター長様〜。────で?一体誰の許可を取って、こんな事してるんですかぁ〜?」
「困るんですよねぇ〜?こういったビックイベントする際は、周りの善良な領民達の迷惑になるのでぇ〜ちゃんと俺達の確認を取ってくれないさぁ。」
「はい、じゃ〜ペナルティー代も入れて、今回は毎月の土地代の3ヶ月分でいいですよ〜。今度から気をつけて下さいねぇ〜。」
「そ、そんな……。」
ギロッと睨みつけてくるヘビネロ商会の者達に、ドルマは真っ青になって呆然と呟く。
ただでさえ無茶な土地代に、更にその三倍など当然そんな金はあるわけがない。
怒りにかられ、足を前に出そうとしたのだが────そこでさっき言われた言葉が頭の中に浮かんだ。
『相手を排除したいという考えはいけません。それでは彼らと何も変わらない……獣以下になりますよ。』
『問題の解決法は、きっと沢山あると思います。そして、どんな方法を選ぶかは……きっとその人の性質や生き方、環境によるのでしょうね。』
『ココは……セレンの望む解決法を望まない子が多いの。そして、セレンが大事だから、皆それをしてほしくないと思っている……。』
「…………。」
大好きなシスター達や孤児院仲間たちの事を考えると、前に出そうとしていた足は止まる。
如何に理不尽とはいえ、相手と同じ暴力を振るってはアイツラと同じになる……。
そんな事をしては────……。
────バキッ!!!!
迷い、下を向こうとしたその時────ルークの躊躇ない飛び蹴りが、ヘビネロ商会の男の一人の顔に炸裂した。
「────っ〜!!ヘッブ……ッ!」
そのせいで顔を大きく変形させた男は、そのまま変なうめき声を上げ、大きく後方へ吹っ飛んでいった。
「「「「えええええええ────ッ!!!!??」」」」
それを見た私は勿論、ドルマや他のシスター達、孤児院の子供達や集まっていた街の人達まで、大きく目を見開き大声で叫ぶ。
するとそんな中、ルークはニヤァ〜と大きく口元を歪めて大声で笑い出したのだ!
「ナ〜ハッハッハ!!!ほいほい出てきやがってバッカじゃねぇ〜の?
飛んで火にいるゴキブリ共かよ!そんな害虫、このルーク様が全部潰してやんよ、掛かってきな。────おいっ!セレン!!」
ルークは突然、呆気に取られ立ち尽くしている私の名前を呼んだため、私は「は、はいっ!」と思わず敬語で返事を返した。
すると、ルークは近くにいた侍女の一人に手を差し出し、二本の木刀を貰うと、その内の一本を私に投げ渡す。
「全員ぶっ飛ばすぞ。結構な人数が集まっているみたいだから、商会総出で来てくれたみたいだな、ラッキーラッキー!
この街で調子乗ってるとどうなるか……その体に叩き込んでやろうぜ。よっしゃ!掛かってこ〜い!」
木刀を天に掲げ、うおおおお〜!と楽しそうに雄叫びを挙げるルーク。
それを見て────めちゃくちゃワクワクした!
「私は……。」
ドキドキ弾む心を抑えられず、木刀を握る手に力を入れると、青ざめてかたまっているドルマやシスター、孤児院の仲間たちに向かってペコッと頭を下げる。
「ごめんなさい!私は────やっぱり無理だ!我慢している安全な所に……私の居場所はない様です。
この心の思うまま、私は戦って死にたい。これが私の……セレンの選ぶ道だ!」
「セ、セレン!!お待ちなさい!!」
手を伸ばそうとするドルマから視線を逸らして振り切り、私は子供達を真っ先に狙って飛び出した男達に向かい木刀を振る。
両親にもドルマ達にも認めてもらえなくても、これが私の戦い方。
理不尽な暴力には自分の全てを掛けて抗い、真正面から戦う。
【剣豪人】
< 特急一閃 >
自身のスピードに依存する火力特化型攻撃スキル
高潔、信念、精神力が高いほど更に威力が上がる
(スキル条件)
一定以上の攻撃力、スピード、高潔、信念、精神力を持つ事
一定回数以上剣を振った経験値がある事
横一線に振り切った私の木刀からは風の衝撃波が放たれ、飛びかかってきた男たちを全員吹っ飛ばした。
それを見たドルマは、フラ〜……と倒れそうになったが、両脇にいたシスター達が慌てて支える。
それにホッとしながら、ルークの方を見れば、そこら中にいる武器を持った男たちを容赦なくぶっ飛ばしている姿が見えて、気がつけば笑ってしまった。
「負けてられないな!」
そのままウジャウジャ集まってくる男たちをぶっ飛ばし続けたが、周りより少し強い反応を察知し、急いでルークの方へ飛ぶ。
「ルーク、少し強そうなヤツがこっちに近づいている様だが……どうする?」
実力的には、今まで倒した雑魚よりはかなり強そうな感じがし、一応確認を取ると、ルークは親指を立てていい笑顔を浮かべた。
「よし、セレン、任せた。お前ならやれる!」
「────!あ、あぁ!任せてくれ!」
頼られて嬉しい。
それに……強いヤツと戦える事にワクワクした気持ちもあった。
ルークは私の背中をトンッと軽く叩くと、逃げだそうと散り散りに走り出そうとしている男たちを端から順にどんどんぶっ飛ばしていく。
それを見送り魔力反応を感じる方向を睨みつけていると────とうとう眼の前にやたら厳つくて大きな筋肉だるまの様な男が現れた。




