29 主人公
(ルーク)
「きっと今日も街の方だよ!」
「いつも掃除当番を俺達に押し付けて行っちゃうんだ!」
「ご飯当番も全部サボるんだよ!」
「いつも話しかけても無視してくるし!」
ワーワー荒ぶる子供達の様子から、どうやらもう一人のお留守番係は、相当イイ性格をしている様だ。
要は、お留守番係を全てセレンに押し付けて、街に遊びに行ったと……。
「……そりゃ〜お疲れ様。大変だったな。」
「いえ、やることは変わらないので……一人で問題ないです。」
恐らくあのゴロツキ達が来る事が分かっていて、それでも一人でこの場を守ったセレン。
しかも、遊び呆けて逃げたヤツの愚痴すらこぼさない姿は、文句なしにカッコいい!
「お前、ホントにめちゃくちゃカッコいいな。────ほら、コレやるから飲んどけ。」
「か……カッコ……えっ?……わわっ……!」
セレンはオタオタしながら、俺が投げた小瓶を受け取り、それを見てギョッ!と目を見開いた。
「回復薬!こんな高価なモノ貰うわけには……!」
「いいから使っとけって。ほら、子供達が悲しそうだからさ。」
俺が子供達を指差すと、皆セレンが心配なのか、ムズムズと身体を細かく動かしている。
それを見たセレンは、俺に頭を下げた後、それを飲み干した。
すると、顔の腫れは引いていき元通りの顔へ……子供達はワッ!と一斉に飛び上がって喜びを表現する。
「セレンねぇちゃんの怪我が治った!ありがとうお兄さん!」
「良かった〜セレンねぇちゃん!お兄さん、ありがとう。」
グスグスと鼻を鳴らす子供達に、困った顔をしているセレンを見て、なんだかホッコリしていると────突然孤児院の入口の方から音が聞こえた。
「たっだいま〜☆」
どうやら誰かが帰ってきた様で、騒いでいた子供達が突然ピタリと話すのを止める。
そしてヒョコッ!と部屋の中に入ってきた人物を見て……俺は悲鳴をあげそうになった。
キラキラ光る銀色の髪は長く、サイドのはち上の髪をツインテールにして後ろ髪を結ばないツーサイドアップ。
サラサラつやつやの髪は、まるで銀の糸の様で、神秘的なイメージを相手に抱かせる。
クリッとした大きな目は、輝く宝石の様に見え、色白にきめ細やかな肌に頬はバラ色……そこにいたのは、文句なしの美少女だった。
「ごめんなさ〜い!ちょっと用事があって、出かけちゃった♡」
キュルン☆と上目遣いで、手を合わせる仕草をすると、男の子だけは仕方ないか……と許す雰囲気を出したが、女の子達の視線は冷たい。
ムスッ!!とする子供達の頭を撫でながら、セレンはその美少女に話しかけた。
「リリス。また街に行ってたのか?シスターからここを守ってって言われてたじゃないか。」
一応注意をしているのだが、どこ吹く風だ。────リリスは。
「う……嘘だろ……?」
俺はポカンとしたまま、リリスを見つめた。
『グランド・リリスの白い華』、その主人公のリリス。
どうやら、俺は早々にリリスを見つけてしまった様だ。
しかし……どうも様子がおかしいので、内心動揺しながらジッとリリスを見つめた。
主人公のリリスは、正義感に溢れた優しい女の子で、男勝りの性格をしていた。
そのため、お洒落の欠片もなくいつも泥だらけで、髪などもただ後ろに一つで縛っているだけだったはず。
なのに、今のリリスはどうだ?
キラキラ、サラサラの長い髪、そして格好も町娘としてはとても綺麗にしていて、よく見ると爪に色がついているし、首元に光るネックレスや高そうなピン留めを見ても、原作の面影がない。
「???」
びっくりしすぎて固まっている俺に気づいたらしいリリスは、不快感を隠さない表情で、俺を指さした。
「────えっ誰〜?そのガリチビ君。あ〜新しい孤児かなんか?────ふ〜ん……?」
「────っ!こらっ!リリス!!」
静止するセレンを押しのけて、リリスは俺を上から下まで見定める様にジロジロ見つめ────ハンッ!とバカにした様に鼻で笑う。
「あ、ハイハイ、モブ君ね〜!だって、全然イケメンじゃないんだも〜ん!」
キャハ!☆
全然悪びれてない言い方で俺を嘲笑うリリスに……原作のリリスの姿が完全に壊れたのを感じた。
「…………。」
「リリス!!彼に謝れ!!私達の命の恩人になんて失礼な態度を……!!」
セレンが本気で怒って注意してくれているが、リリス本人はどこ吹く風で……指に塗られたネイルらしきモノをご機嫌で見ている。
俺は呆れ果てながらスキルを発動し、リリスを『見た』。
【リリス】
<レベル2>
体力:10
攻撃:2
魔力:800
知力:5
物理防御力:5
魔法防御力:5
精神力:50
俊敏:2
(才能ギフト)……【聖后】
精霊と心を通わせる事に特化しているとされる才能だが、謎も多いSSSランクギフト
えぇぇ〜……弱っわ!
────あ!でも、魔力だけ凄い!あと精神力も!
結果を見てゲンナリしてしまったが、紛れもなくこのふてぶてしい少女は、主人公のリリスで間違いないようだ。
恐らくやたら強い魔力は、生まれつき備わっている才能によりモノらしい。
だが────どうして原作とこんなにも違うのかは分からない。




