28 全力で戦うべし
(ルーク)
もしさっきの連中が孤児院を襲撃する奴らだとしたら……シスターならまだしも、なんで子供達まで全員殺したんだろう??
理由が思いつかず、首を傾げる。
黒マント以外の男たちは、子供を売って金儲けがしたいという明確な目的があった。
つまり殺してしまえば、金儲けはできないし、流石にそれだけ大量に殺せば上も動かざるを得ない。
当然、上から追われ面倒な事にもなるのに……?
そう考えると、さっきの黒マントの男の単独犯っぽいが……なんだかその上に別の黒幕っぽい存在が見え隠れする。
「……思った以上に面倒くさそうだな、この事件。」
「あ……あのっ!!」
突然大声で呼びかけてくる声に、フッと顔を上げると、大きく顔を腫らし脇腹を押さえているセレンがいた。
「お前は……いや、貴方は街の守備隊の方なんでしょうか?」
「あ〜……えっと……と、通りすがりのただの一般人です。」
【グリード家】と名乗って良いものか考え言い淀んでいると、セレンは勢いよく頭を下げる。
「この度は子供達の命を救って頂き、ありがとうございました。見た所、かなりの腕前とお見受けしました。」
「お礼なんて止めてくれよ。セレ……じゃなくて、お前こそ、凄い強いな。自己流の剣か?」
少ししか剣の型は見てないが、とてもまっすぐで綺麗な型だと思った。
誰かが作った混じり物っぽい動きがなかったので、そう予想しながら木刀を返すと、セレンはそれを受け取りながらコクリと頷く。
「────はい。小学院で習った基礎の動きから自己流で編み出していきました。……勝ちたいと思ったから。」
セレンは負けた事が悔しかったのか、木刀を持つ力を強めた。
剣の型と同じく真っ直ぐなセレンの性格が伺え、やはり感心してしまう。
「凄いな、お前。」
「えっ?わ、私が……凄い?」
目を見開くセレンに、俺は大きく頷いた。
「好きに一直線になれるヤツは凄いさ。
それに強い!負けず嫌いは大いに結構。俺はそういうヤツは、めちゃくちゃカッコいいと思う。」
「つ……強い……か、カッコいい……。」
セレンは俺の話を聞いた後、突然顔を背け震えだすと、真っ赤な顔でボソッと呟く。
「……お、女でも……戦っていいと思う……?カッコいいって……本当に思う……?」
ボソボソと呟かれる言葉をしっかりと耳に入れて、俺は自分のクソ強かった奥さんを思い出し、グワッ!!と目を大きく見開いて叫んだ。
「当たり前だろう!!戦人に女も男もあるか!
いいか〜?そんなモノで判断する奴は全員三流だ!!すぐ死ぬ!強いヤツは強い!!
だから、武器を持っている奴とは全力で戦うべし!
そうしないと、瞬きした瞬間……病院のベッドで目を覚ます羽目になるからな!」
「────はっ……はい!」
強烈な妻とのバイオレンス生活を思い出し震えていたため、カァ〜!!と真っ赤になりながら嬉しそうに笑うセレンの顔は目に入らず……。
ひたすらフルボッコされた日々を思い出し……それでも妻恋しさにグスンと鼻を啜った。
「ねぇねぇ……お兄ちゃん、悪いヤツじゃない? 」
「痩せてるね〜。お腹減った?」
恐怖状態から立ち直った逞しい子供達は、ワラワラと俺に群がってきて、服を引っ張ってくる。
まるで子犬がじゃれついてくる様にくっついてくる子供達が、ジジイの心にクリティカルヒット!
しゃがみ込んでまとめてギュ〜ッ!と抱きしめた。
「多分悪いヤツじゃないぞ〜。それにお腹減ってないから大丈夫!
これでも結構太ってきたんだけど……まぁ、もう少しだな。」
子供は未来。世界の宝物!
そんな信念の元、無邪気にじゃれついてくる子供達を見て、絶対に孤児院襲撃事件は防ぐと誓う。
キャーキャー嬉しそうに騒いでいる子供達を見下ろし、ここでアレ?と疑問が浮かび、ボンヤリした様子で俺を見ているセレンに尋ねた。
「そう言えば、お前以外の年長組はどこに行ったんだ?」
「は、はい!……えっと、出稼ぎに行っているシスター達の手伝いに行ってます。
回復魔法を使える者達もいますし、そうでなくても病院は力仕事が必要な事もあるので……それで追加の報酬も貰えますから。」
「なるほど……。それで孤児院はお前一人でお留守番か。」
要は皆一緒に出稼ぎに行き、交代で年少組のお守りプラスお留守番を一人置いておくというわけか……。
納得して頷いたが、セレンは少し考え込んだ後、少しだけ困った様子で口を開く。
「いえ……いつもお留守番係は二人態勢でしています。もう一人は、少々席を外している様で……。」
「────はっ?……トイレでも行っているのか?」
こんな大騒ぎになっているのに、トイレにまだいるなんて……死ぬほどお腹壊している??
不思議そうに尋ねる俺に、セレンはその内容をどう答えて良いものか迷っている様子だった。
すると、セレンが口を開く前に、周りにいる子供達が口を開く。




