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元最強軍人のおじいちゃんが、殺されるはずだったモブキャラに転生して乙女ゲームを拳無双をする!  作者: バナナ男さん
第二章【セレンとアッシュ編】

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27 戦った先にあったもの

(ルーク)


段々と余裕がなくなっていく黒マントの男を見ながら、ふ〜む?と考え込む。


やはりかなりの強さを持っているコイツの動きは、対人に慣れているプロのモノ。

恐らく幼少期から特殊な訓練を受けてきているのは、間違いない。


だとすると……アイツらとは別の組織のヤツ??


蹴りの攻撃を木刀でいなしながら、セレンにアッサリぶっ飛ばされた男たちと、こちらをポカンと見つめている隙だらけの残りの男たちをチラッと見た。


「……お前さ、誰に命令されてんのかは知らないけど、止めとけば?そんな強けりゃ、どこでだって生きていけるだろう。」


「────っ!……うっざいな〜。そういうお綺麗な説教は、いらないんだけど。」


黒マントの男は、面倒くさそうに舌打ちをすると、大きく飛んで後ろへ。

そして、左足を前に出し、グッと腰を大きく落とした。


「面倒くさいんだよね、そういうの。

勝手に妄想して、可哀想だとか、辛いでしょうとか?そういう的外れな事を他人に言うヤツ。

そういう面倒くさくて重だるい想いを向けられると、心底反吐が出そうなんだよね。

……だから消えてくれない?はい、バイバ〜イ。」


突然魔力の反応が、足へと集結していき……まるで黒い雷の様なモノが足の周りに現れると、そのせいで足元の床がバキバキと大きな音を立ててヒビ割れ始めた。



【王魔人】


< 絶死足 >


闇属性の魔力を足に纏わせ、敵にダメージプラス追加の腐食ダメージを徐々に与えていく事ができる特殊付与スキル


(スキル条件)

一定以上の魔力、闇属性魔力、精神耐性値、攻撃性、精神汚染値があり、一定回数以上生死を掛けた戦いの経験がある事




「へぇ〜凄いパワーだな。」


「ハハッ!今更後悔しても遅いよ。避けれるもんなら避けてみなよ、痩せっぽちの野ねずみ少年君!」


黒マントの男は、グッと足を踏み込むと一瞬で俺の目の前へ。

スピードはさっきの比では無いほど上がっている。


黒く帯電状態になっている左足で、俺の頭を狙う────のはフェイント!

その攻撃に合わせようとした反対側の胴体を、右足で狙ってきた。


「────お見事!」


ハイスピードに加えて、フェイントを入れる攻撃に、敵ながらあっぱれと素直な感想を口にする。

しかし────まだまだ甘い。


────バシッ!!


そのフェイント攻撃を、木刀で受けてやると、黒マントの男は驚いた様子だったが……直ぐにまた別のフェイントを入れながらの攻撃乱舞を俺に仕掛けてきた。


全ての攻撃にフェイントを入れてくるその戦い方は、ちょっとやそっとの努力では、決して手にできないモノだ。

元々持っている才能と、それを開花させた努力……。その事に関しては、ただただ敬意を。

そして、そんな相手と戦えた事に感謝をする。


ウズウズする気持ちから、思わず口元を緩めてしまうと、黒マントの男からは訝しげな雰囲気が漂ってきた。


「────なに笑ってるの?気持ち悪い!」


「あ〜……すまんすまん。ちょっと楽しくなってきちまって。」


────ガっ!!!


上からのかかと落とし攻撃も、剣で受け止めると、黒マントの男がチッ!!と大きな舌打ちをして、俺と一旦距離を取る。

必死に隠しているが、その息は荒くなっている様だ。


「…………っ……ハァ……!────クソっ!!お前、ホントに何なんだよ!!

どうして俺の攻撃が当たらない?!一体、なんのスキルを────……。」


「いや、スキルなんて使ってねぇよ。」


そもそもまだ持ってない?っぽいし……。


一ヶ月前に見た自分のステータス表を思い出し、困った様にポリポリと頭を掻いた。


元ルークも言っていたが、このスキルとやらを使える様になるには条件がそれぞれあるらしく、それを満たさないと使えないらしい。


つまりスキルとは────そいつの努力そのものという事だ。


俺は、こちらに警戒マックスで睨んでくる黒マントの男を見ながら、自然と言葉が漏れた。


「お前、戦うの好きなんだろ?」


「────はっ?」


すると黒マントの男は、一瞬素っ頓狂な声をあげたが、何故か突然怒りのオーラ全開で殺気を向けてくる。


「……そういうの止めてくれない?『自分はお前の事を全て理解している』『その気持ちが分かる』……そういう共感?みたいなのって、虫唾が走るほど嫌いなんで。

そもそも、生まれも才能も環境も違って生きてきた奴ら同士で、分かり合うって何?

そういうのってさ〜結局、同情っていう傲慢な行為なわけ。

……きもわるいんだよ、ムカつくな。」


先程から飄々としていて、本音を口にしない様子だった黒マントの男だったが、この言葉には『本気』を感じた。

それに気づくと、俺の脳に過ったのは……平和になった世の中でぶっ壊れてちまったかつての仲間たちの姿だ。


命をかけて戦い、沢山の”辛い”を乗り越えた先にあったのは……今までしてきた努力全てが必要ない世の中だった。



『平和な世界しか知らない奴らに……何が分かるんだよ!!そんな奴らからの共感も同情も……全部クソ喰らえだ!!』



そう叫んだのは誰だったか……一人や二人じゃなかったから、もう覚えてない。


思わずフッと笑ってしまい、憎々しげに俺を睨んでくる黒マントの男を見つめ返す。


「共感?同情?────おいおい、勘弁してくれよ。そんなお優しいモン、俺にはねぇよ。ば〜か。

ただ、それを与えようとする人間を否定するのは止めとけ。

自分には受け入れがたくても、相手を理解しようとするソイツの努力の形なんだから。

いらねぇなら自分が受け取らなきゃいいだけ。ただそれだけの話なのに、そんなに必死に噛みついてくるなんて、お前構ってちゃんかよ。きっもちわる〜♬」


「…………。」


わざと煽った言い方をしてやると、黒マントの男からはブワッ!と殺気が膨れ上がり、そのまま動こうとした、その瞬間……突然黒マントの男が耳元に手を当て、何かを聞いている様な仕草を見せた。

すると、そのまま足に纏っていた黒いバチバチしたモノは消え、俺を睨みつける。


「……タイムリミット。残念ながら、勝負はお預けかな。────首を洗って待ってろよ、野ねずみ野郎。」


「はいは〜い。いつでも綺麗綺麗にしてお待ちしておりま〜す。」


適当に返事をすると、黒マントの男はチッ!と大きな舌打ちをして、突っ立ってる男二人に向かって言った。


「はい退散、退散〜。さっさとそこに転がっている役立たず、持って帰ってね。」


「────っクソっ。」


「お、覚えてろよ!クソガキ共が!!」


男二人は気絶している仲間たちを背負うと、そのまま逃げていき、黒マントの男は音もなく消えてしまう。

それを見送りながら、フッと孤児院の襲撃事件について大きな疑問が浮かんだ。


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