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元最強軍人のおじいちゃんが、殺されるはずだったモブキャラに転生して乙女ゲームを拳無双をする!  作者: バナナ男さん
第二章【セレンとアッシュ編】

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(セレン)25 セレン

(セレン)


「す……凄い……。」


私は体中を襲う痛みに耐えながら、目の前で繰り広げられている次元の違う戦いを呆然と見つめる。


手も足も出なかった黒マントの男。

そんなヤツの連続キック攻撃を、突然目の前に現れた少年は、まるで風に揺れる柳の様に軽々と避けていた。


「あの少年は一体……。」


その正体について考えると、先ほど言われた言葉がフッと頭の中に浮かぶ。


『バ〜カ!そいつは立派な戦人だろうが。それに女も男も関係ないさ。

守るべきものを背に、それを脅かすお前達と戦ったアイツには敬意を。

だから、その戦いの勝敗がつくまで外野の俺は邪魔はしなかった、それだけだ。』


その言葉を思い出すと、私の心の中に浮かぶのは────『嬉しい』だった。



◇◇

私、セレンがこの孤児院に来たのは、10歳の時。

両親はとても優しく、困っている人がいれば必ず手を貸す善人そのものの様な性格をしていた。


暮らしていけるだけの稼ぎさえあれば、残りのお金は全て貧しい人へ。

そんな両親を私は誇りに思っていたが……私の生まれ持った気質と両親の持つ気質は、到底理解しあえないモノでもあったのだ。


任意教育とされている小学院。

それは6歳から12歳まで自分の住む街の教会で受ける事ができるのだが、そこで私の剣の才能が開花し始める。

もともと喧嘩っ早くて近くに住む同世代の子たちとも、よく喧嘩をしてはコブをこしらえて帰る私。

そんな私の将来を想い、両親は時に涙を流しながら心配していた。


『暴力は悪い事なのよ。』


『だから、絶対にそれをせずに話し合いだけで解決するべきだ。』


両親は、いつも私を優しく叱りつける。

しかし────私はそれに全く賛同できなかった。


自分が暴力という力を使うのは、自分と大事な人が害された時のみ。


毎回、その力を使って私を押さえつけようとしてくるのは相手の方で……だから、私も同じ力を持って戦っているだけだ。


『女のくせに生意気なんだよ!』


ある日、そう怒鳴りながら、男の同級生達が仲間数人を引き連れて殴りかかってきた事があった。

理由はとても単純で、学院の成績が自分達より良かったから。

それが女という、自分達にとって格下だと思っている相手に負けたから、その報復らしい。


馬鹿らしいと、完膚なきまでに全員をボコボコにしてやると、今度はソイツらは自分の親に泣きつき、最終的に私が叱られた。


『何をされても暴力で返しては駄目だよ。セレンは女の子なんだから。』


『女の子らしく、大人しくお淑やかに生きて欲しい。』


女の子なんだから女の子なんだから女の子なんだから……そう両親や周りに言われる度に、また違和感は大きくなっていく。

更に私は一般的に可愛いと言われる外見をしているらしく、大きくなるにつれて、その可愛いに相応しい言動や態度を求められる様になった。


『セレンは可愛いから、きっと将来は王子様の様な男の子が迎えに来てくれるよ。』


『セレンはもっと可愛らしい格好をしたほうがいいね。それで髪も伸ばしてニコッと笑えば、皆セレンの事を好きになるに違いない。』


ニコニコと笑う両親に悪気はなく、これは褒め言葉だと分かっていたが、それは私の欲しい言葉ではない。

だから違和感を感じながらもニコッと笑い「ありがとう。」と返して────両親の笑顔を守り続けた。

しかし、両親が流行り病で突然死んでしまうと、守るべきものは全てなくなり、自由というモノが私に与えられる。


両親という、かけがえのないモノを失った悲しみ。

その代価の様に、私は自由を得た。


悲しみの渦に飲まれながらも、これからどうするかを考えた時、両親の親戚達がこぞって私を引き取ると言い出した。


理由は簡単。

可愛い外見をしている少女なら、金持ちの男に見初められる可能性があるから。


裕福ではない平民女性としては、金持ちの貴族や商人に見初められて嫁ぐことが一番の幸せである……という考え方もある。

そして自分の娘が見初めて貰えれば、その家族だってその恩恵を得られるため、家族一丸となってそれを望んでいる家庭もあるのだ。


それを否定する事はしない。

幸せは人それぞれだから。

でも────私の幸せは、きっとそこにはない。


醜い言い争いを、死んだ両親達の前で繰り広げる親戚たち。

そんな大人達に向き直り、私は両親に望まれ腰の下まで伸ばしていた髪をバッサリ切ってやった。

そして唖然とする親戚達を睨みつける。


『私は笑顔で王子様なんて待ちたくない。こんなモノに頼って生きていくなんて────まっぴらゴメンだ!』


そう言い切った私は、親戚たちにとっては役に立たないゴミみたいなモノへと成り下がった様だ。

それからは誰一人私を引き取る者などおらず、私は孤児院へ。

でも────それで良かった。


もう私は自由。

愛し守るべき両親はいないのだから、自分の生きたい自分を生きよう。


そう誓ったのだが……それを実行するのは、とても難しかった。


持って生まれた女という性と、周りから評価される『可愛い』は、自分の夢をことごとく邪魔をする。

剣を持ち、必死に努力する私を見た周りの大人達や同級生達は、当然の様に私に自分の価値観を語った。


『せっかく女性として生まれ、容姿にも恵まれたのだから、女性としての幸せを掴んだ方がいいわ。』


『人を傷つける力を求めるのは、間違っています。』


『セレンは女の子なんだから、こっちで一緒にお花遊びしようよ!』


『お前さ〜もうちょっと女らしくしたらどうだ?髪の毛伸ばしたり、お洒落したりさ〜。 

そんなんじゃ、お嫁さんにしたいなんて男はいなくなるぞ?』


自分と自分の周りの世界には、きっと大きな溝がある。

気がつけば……私は一人、楽しく笑い合う皆を、たった一人遠くで見ている様な気がした。

それを寂しく思う事はあったが、私がそっちに行くことも、皆が私の方へ来ることも難しく、それぞれが行きたい方へ行くしか無い。


前が見えない孤独な道へ。

それを選んでもなお、周りの世界は私の邪魔をし続けた。


そして────そんな私の道を邪魔するモノは、他にもある。


それがここら一帯を勝手に仕切っているゴロツキ集団【ヘビネロ商会】。


商会を名乗っているが、まともな仕事などしておらず、この貧しい者達が住むエリアで勝手に土地代という名の税を毎月取り立ててくる集団だ。

それに対し苦言を申し立てれば、数の力で報復しに来る。


訴えたくても、貧しい者達のために上の連中は動かないので、現状はどうしようもできなかった。

ソイツらは、孤児院がお金を払えなくなる事を願っていて、あれこれと妨害行為を仕掛けてくるのだ。


理由は簡単で、子供は高く売れるから。

それを知っているシスター達は、直ぐに自分の使える回復魔法を使い毎日コツコツとお金を稼いではお金を払い穏便に済まそうとしてきた。

更に同じく孤児の中の年長組はそれについていき、そんなシスター達の仕事まで付き合い頑張り続けてきたが……それも限界の様だ。


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