21 やるっきゃない
(ルーク)
今回のセブンの報告は、また浮上したその資金についての話だった。
ちなみに、俺がしたお仕置きのせいで、未だに当主であるルストンは精神を病み布団の中で何か呟き続けているし、丸3日待って解毒薬を飲ませてやった奥さんのフルートは、拷問体験によって精神ぶっ壊れで閉じこもっている。
ぶっちゃけ治療薬で傷は完全完治したんだから直ぐ復活するだろ〜……と思っていたのだが、ところがどっこい!
自ら引き裂いてズタズタになった皮膚は治ったが、自分で引き抜いた髪の毛は元に戻らず、ホルスタインの様なマダラ剥げになっているから、未だにショック状態から抜けられないのだとか……。
ライアーとスティーブも傷は治っても、高い高いプライドを完膚なきまでにへし折られ、心に深い傷を負ったらしく、部屋から出てこない。
フルボッコの裸で吊し上げの刑は、思った以上にメンタルにきた様だ。
「全く……自分がされる側になったら、随分と弱い奴らだな。
まぁ、お陰様で、好きに動いて環境改善しやすくなったからラッキーだったし?とりあえず、全員出てくるまで待つか。
ただ、あんまりにも戻らない様なら外に放り出そう、邪魔だから。」
働かざる者食うべからず!が前世の我が家の家訓!
ここでも勿論適応させてもらう。
ついダークチックな笑みを漏らしてしまったが、セブンは気にする事なく話続けた。
「現在、緊急性の高いモノから順番に対応し、今のところ大きな問題は起こっていない様です。この後、小さな問題点を全て解決しても、かなりの金額の資金が余る見込みで────……。」
「ほうほう、流石はセブンだ。仕事が早いな。だが、セブンも他の使用人達も休めているのか? 」
俺としては書類系の仕事は苦手で、セブンがいて助かったと心の底から感謝しているし、身の回りの世話もしてくれる使用人達に対しても感謝の気持ちを持っている。
そのため、残った者達は半分も人員が減ってしまった環境で、ちゃんと休めているのか心配になった。
何度も連勤で戦い続け、危うく死ぬ所だった過去を思い出し血の気が引いていく。
適度な休息は、最も大事な事……!
「…………っ!」
セブンはキュッ!と目と口を窄めて、捨てられた子犬の様な目で俺を見つめてきた。
「な、なんとお優しい……!こんなクソ豚めに御慈悲を与えて下さるとは……。セブンは感激でございます!!
仕事に支障はありません!!元々半分は当主と奥様の愛玩用でしたので、いわば扱いに困るゴミでした!」
「ぶ、豚……?あ、愛玩用…………ゴミ……。」
セブンの自分に対する言い回しと、更にとんでもない暴露話を聞かされ目が点に……。
確かにタイプの違う美男美女が多いとは思っていたが、そんな理由だったとは知らなかった。
「てっきりゲームに出てくる人物だから、全員モブでも美しいのかと……。」
「?」
小さな声で呟くと、セブンが不思議そうな顔をしたので、俺は慌ててオッホン!とわざとらしい咳払いをする。
「あ〜……その……なんだ?────あ、そうそう、セブン。お前は素晴らしい働きをしている!
だからその余った資金から、特別ボーナスを与えよう!
更に、他の使用人達にも、それぞれの働きに見合ったボーナスを渡してやってくれ。それでたまには贅沢をしてリフレッシュするんだ、いいな?」
「そっそんな!!本当によろしいのですか?」
本気で驚く顔に、寧ろこっちが驚いてしまったが、力強く頷いた。
「正当な働きに対する対価だ。良いに決まっている。」
「あ、ありがとうございます!!それでは、ありがたく頂戴いたします。
しかし、それでも資金は毎月大量に余りそうですね……。ルストン様達に関する出費が主だったので、それがなくなるとなると……。」
「……ほほ〜う。」
どうしようもない俺の家族達を思い浮かべ、労る様にこめかみを揉み込みながら、余ったお金の振り分け場所を考え────名案を思いつく。
「────そうだ。まずは孤児院に必要な物品を寄付する事にしよう。
今から孤児院を訪問して、実際に何が足りないか見てくるから、屋敷の方は頼んだぞ。」
「────はっ??今からでしょうか?」
キョトンとするセブンの背中を軽く叩いて肯定すると、直ぐに俺は馬車を呼びつけ、そのまま孤児院へ向かった。
◇◇
カラカラと車輪の音を立てながら、馬車は街のメイン通りを突っ切っていく。
グリード家が住んでいるのは、王都にほど近い巨大な街【アクアドリム】。
水が豊富で、美しく豊かな街だ。
「ふ〜む。ここらへんは果物なんかが盛んなのかな?」
馬車の窓からチラッと周りを見回すと、見たことのないフルーツが沢山売られているのが見えた。
水が豊かと言う事は、実りも豊かという事。
つまり街が発展していて、そのお陰でグリード家は今まで贅沢に暮らせていたと言う事だ。
「豊か……ねぇ?果たして平等にそうなのかは……あっちに答えがありそうだ。」
進んでいく表の明るい道から目を逸らし、道の脇に存在している沢山の薄暗い路地へと視線を向けた。
そこには明らかに生活に困っていそうな奴らが何人もいて、随分若そうな者達の姿もチラホラある。
これは、思ったより早急な解決が必要そうだ。
青春時代ってやつをただボンヤリ送ってみようと思っていたのに、それだけでは無理そうな事に、ため息をついた。
「やるっきゃねぇよな、コレ……。見て見ぬフリは目覚めが悪いしな。
幸い俺は、体が弱いからっていう理由で学校に通ってなかったらしいから、聖グラウンド学院の試験日までたっぷり時間はある。
とりあえずは、孤児院を襲う悲惨な事件を完全に防がねぇと。
孤児院は……街の外れにあるのか。」
馬車はメイン通りを順調に進んでいったのだが、なんだか景色が徐々に寂れたモノへと変わっていったので、嫌な予感がし始める。
周りに建つ建物も、どんどんボロくなっていき────やっと辿り着いた孤児院は、殆ど廃墟に近い建物の姿で現れた。




