19 大事件だ
(ルーク)
「リリアは俺と同じ、現在は15歳の少女で平民の女の子……。だけど、両親は流行り病で死んでいて確か孤児だったはずだ。それで────……あぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
重要な事を思い出し、俺は思わず大きな声で叫んでしまった。
慌てて口元を押さえたが……思い出した内容の衝撃によって、頭は混乱したままだ。
「主人公とある人物の好感度をマックスにした時に現れるスチル……【憎しみの果て】。それには確か……リリスの過去が描かれていたけど、それは……。」
ゲーム開始前に、主人公の身に起きた出来事を語るこのスチルは、血まみれの教会の中を描いたスチルだ。
その中央には無表情で佇むリリスがいて、体中に誰かの黒い手が絡みつき、更に教会の大きな窓の外にはリリスを監視する様に沢山の目が描かれている。
この恐ろしいスチルには、あーでもないこーでもないと色々な考察が存在しているが、それは置いておいて……とりあえず確実なのは、リリスの身にこれから起きる事だ。
孤児であったリリスの住んでいる場所は、孤児院。
彼女の才能ギフトが判明して直ぐに鑑定した教会はおろか、街中が大騒ぎになった。
その理由は彼女の才能ギフトに理由がある。
<SSSランク才能ギフト>
【聖后】
これはリリスにしか持っていない非常に強力な才能ギフトで、彼女こそがのちに滅びゆくこの世界を救うメシアとなるのだ。
「『世界が闇に包まれる刻、光の精霊王に愛されし少女と仲間たちが、闇に染まりし精霊神を倒し世界を救う』────そんなキャッチフレーズだったかな……。」
精霊とは、全ての自然現象そのものの様な存在で、その存在は『力』そのものであるとされている。
「これはゲームの中でも説明があったから知っているぞ。
代表的なのは、火、水、風、雷、土、光、闇の七大魔法属性の精霊のはずだ。
他にも沢山の精霊がいるらしいが……その中でも光の精霊は別格で、攻撃からサポート、更に回復、浄化……なんでもありのチート属性だった。
その精霊たちの加護があるからこそ、人は魔法という力を使えるって事だったな。」
前世だったらにわかには信じられない話だが、スティーブが実際に魔法を使う姿をバッチリ見た後なので、疑いようがない。
果たして新ルークとなった自分には、そんな属性があるのかどうか……。
「ま、いっか。魔法を打たれる前に絞め落とせばいいし。
────で、ええ〜っと?確か、リリアは聖后の才能によって、精霊の中で最も力を持った光の精霊王と絆を結んで、トチ狂った精霊の神様と戦って勝つ。それでハッピーエンドだった。でも……。」
やっとゲームをクリアーし、エンディングだと喜んだ俺の目に入ってきた文字。
それが────……。
『一周目:END』
完璧なハッピーエンドだと思いきや、それで終わりではなかったらしい。
それを知るためには、今度は全ての攻略キャラ達の好感度を上げてスチルを集めなければならないという鬼畜仕様だったからこそ、孫娘は俺に全てを投げたのだ。
そして、その中のスチルの一つ『憎しみの果て』には、リリスの過去にある事件<孤児院の大量惨殺事件>についてが描かれていた。
血まみれの教会のスチルは、その時の事を描いたモノだと思われる。
「孤児院に、ある暗殺者集団が侵入し、リリスの命を狙う。
だが、その日はたまたま同じ孤児院の親友<セレン>の代わりに買い出しに行って、難を逃れるんだ。
そして────リリスに間違えられて親友のセレンが殺され、更にシスターと他の孤児達も全員殺された。……っておい、最悪な事件じゃねぇか。」
胸糞マックスな事件の結末を思い出し、自然と顔は険しくなっていった。
結局その暗殺集団は、なんやかんやとボヤかした表現で語られていたため、ハッキリは語られていない。
もしかしたら2周目に開放されるはずのストーリーに、何か答えがあったのかもしれないが……。
「…………。」
俺は腕を組み、ポクポクポク……とこれから起こるらしい未来の事について色々と考えてみた。
この事件はリリスにとって忘れられない過去であり、その辛い記憶のお陰で強くなる事ができた……的な事が書かれていたから、多分世界を救うためには必要な事だとは思う。
しかし……。
俺の脳裏には、まだ小さかった息子を抱っこした記憶や、孫娘と遊んだ記憶の数々が蘇った。
「俺はこれから何が起きるのか知っている……。
なら、このまま未来ある子供達が殺されるのを見て見ぬフリをするのは……なしだな、なし。
申し訳ないが、リリスには別の方法で強くなってもらおう。」
フンッ!と鼻息を勢いよくつき、直ぐに図書室内に張られている暦ポスターへ視線を向けた。
「……現在の季節は6月。
季節は前世と同じく1月から12月まであり、その事件は6月の終わり頃にある【流星祭り】がある日に起こるはずだ。なら、ギリギリ間に合いそうだな。」
流星祭りとは、星が最も美しいとされる6月の末日に開かれるお祭りの事で、街では沢山の出店が並び結構盛大に祝うらしい。
孤児院も出店し、子ども達とシスターが作った手作りクッキーや庭で収穫されるベリーで作ったジャムなどを販売していたはず。
ちなみに襲撃は祭りの終わりかけの、暗くなる少し前だったと思う。
「……そこまで真剣にやらずに、スキップ機能全開でゲームしてたからな。所々しか覚えてねぇ。あ〜……こんな事なら、ちゃんとしっかり読んでおくんだった!」
ペチンッと頭を叩いてなんとか思い出そうとしたが、見てないモノは勿論思い出す事だってできない。
よって考えるのは早々に諦め、直ぐに出してしまった本達を片付けていく。
「とりあえず、善は急げだな。まずは孤児院へ行ってみよう。
リリスが今、どんな感じか……それに孤児院の様子と、身代わりに犠牲になったリリスの親友セレンも一応顔だけでも確認しておきたい。それに────……。」
フッと浮かんだのは、そのスチルを開放するために好感度MAXにしないといけないキャラについてだ。




