104 よく分からないけど一件落着
(ルーク)
《その対象が追い詰められた時です。
そのせいであと少しという所で、証拠を掴めなかった案件がいくつかあります。おそらくは────……。》
「あ〜……口封じってヤツですか。うんうん、ベタなヤツ〜。」
悪人のテンプレの様なやり方に、つい笑ってしまった。
おそらく上にとんでもなく腐りきったヤツらがいる。
それが分かってしまい、笑った後は、痛みだした頭をグチャグチャとかき回す。
「中々清く正しい青春って遠いんだなぁ……。」
「??」
俺の乱れた髪をフェイスが整えてくれるのを見つめながら、ジョアンは不思議そうな顔をする。
それに『なんでもな〜い』と首を振って誤魔化すと、ハクさんは難しい顔をして言った。
《現在国は非常に危ういバランスで成り立っています。ですので、これからどうかお気をつけて。》
「ありがとう。気をつけるとするよ。」
俺がニコッと笑いながらそう言うと、ハクさんは笑い、《今夜は最高級の宴の準備をしてお待ちしております。》とだけ言ってスクリーンは消えてしまった。
残された俺とジョアン、フェイスは、やっと今回の事件が解決したと悟り、やっと緊張を解く。
「終わったな〜……。お前、大丈夫?メンタル的なヤツも含めて。」
「はい。問題ありません。貴族たる者、感情のコントロールは重要な能力ですから。」
ジョアンは特に動揺する様子も見せずに淡々と答えた。
確かにそれは、人を纏め導くには必要な能力。
それをジョアンは、既にきちんと習得している様だ。
「あ、そう。」
俺の視線の先には、背筋を伸ばして凛と立つジョアン。
そんなジョアンの背中をバシッ!と叩くと、驚いて背をしならせたジョアンに向かい悪い大人の笑みを浮かべた。
「コントロールするのはいいが、感情は大事にとっておいた方がいいぞ〜?
それを捨てた後は、他人の感情も見えなくなる。
そういう奴の最後は……まぁ、孤独なもんだ。
泣く時は泣く、笑う時は笑う。
お前が大丈夫だと思う場所では、それを思いっきり出しておいた方がいいと、おじさん……じゃなかった、俺は思うけどな。」
「────っ!」
ジョアンは大きく目を見開いた後、下を向いてボソボソと小さな声で呟く。
「……では……ここで少しだけ……泣いてもいいですか……?」
俺の返事を待たずにポタポタと床に落ちる水滴を、俺は見て見ぬふりをして「いいぞ。」と答えてやった。
フェイスは空気を読んだのか、ジョアンの側からソッと離れて俺の肩にちょこんと座ると、やっぱり不思議そうな目で俺を見上げる。
《んん〜……??やっぱりルーク変。なんか変。》
「おいおい、止めろって〜。俺普通、俺普通。普通代表〜。」
クンクンと匂いを嗅ぎながら近づいてくるフェイスを手で押し返したが、フェイスは指の隙間からピョコッ!と顔を出して、こっちを訝しげに睨んできた。
《なんかね、少し前に穴が開いてね、なんかが来て……。
う〜ん……なんていうか……人間には分かりにくいと思うんだけど、変わったんだ。世界を回っている流れが。》
「はぁ?確かに意味不明だぞ、言っている事。」
ため息ついでに、フェイスにフッ!と息を吹きかけてやると、フェイスはきゃー!と擽ったそうに身を捩った後、両手を挙げて怒り出した。
《も〜!ヘアー乱れるから止めてよ!変態!
だから、人間に説明するのは難しいんだよ〜。こうね、世界には流れがあって……そもそも色々独立しているはずの世界にね、何回か穴が開いたんだ。
そのせいかも。変わったの。まぁ、たまにある事らしいけど……ちょっと多い気がする〜。なんなんだろうね?》
「変態……。」
昔孫娘の頭を撫でた時にも同じ事を言われた事を思い出し、意気消沈!
ズ〜ン……と肩を落とす俺を見て、フェイスは「まっ、いっか!」とアッサリ説明する事を諦めた様だ。
俺の肩に戻ってルンルン♬と歌を歌い始めてしまった。
精霊は気まぐれな存在である。
それに間違いはない様だ。
「ま、どうでもいいか!とりあえず今日はお祭りだ〜!!いやっほ〜!!
アッシュ!セレン!今日はご馳走だぞ〜!!!」
ハクさんの映像が消えた後、またアッシュとセレン達が映っているスクリーンが現れたので二人が映るスクリーンに向かって叫ぶと、セレンは「バター芋が食べたいです。」と言って喉を鳴らし、アッシュは「豆焼き〜。」と言って俺に向かって手を振っていた。
「俺は何でも好き〜!楽しみだな!」
俺は泣いているジョアンを隠すために自分の上着を頭から被せると────歓喜に大騒ぎしている街の様子を見てニコッ!と笑った。




