佐々木と猫
倉田はクソガキを廃炉から抱き上げ、斜めに重なった木材の上に横たえる……
着ていたコートを脱ぎ、安らかな眠りを祈るかのようにそっと掛けてやる。
「おい!死神!こいつは誰なんだ!」
怜央はいきなり現れた男に憤慨し殺気だった眼差しを向ける。
「うーん取り逃した魚?ずっとこいつのこと探してたんだよーん」
「なら殺していいか?」
と怜央が嘯く。
「殺れるならねーん」
―――
その頃の佐々木たち
「なあ巽さん」
「なんだ?」
「倉田さんって昔からああなんですか?周りを寄せつけないというか……」
「ん……俺が知り合った頃からああだな。」
巽は毛繕いをしながらこたえる。
「そうなんですね。なんか辛いことを乗り越えてきた感じはわかりますけど……少し寂しくて」
「そりゃ長く生きてるとな……色々あるもんさ。そういや、もう恋愛とかしないだろうな。と思ってたあいつが1人だけ好意を持ってた女がいたなあ……」
「ええっ!!」
狼狽えすぎてコケる佐々木
苦笑しながら「あいつは可哀想なやつなんだよ……」
「……」
「根掘り葉掘り聞くんじゃねえぞ?辛い過去の一つや二つ誰にでもあるんだから」
「わかりました……」
巽はヒゲを整えながら優しげに語る
「まあでもあいつ、おまえと警備員してる時は楽しそうだったがな」
「ほんとに?他には?他には?」
「……なんかおまえ……尻尾が見えてきたな……あいつがおまえを助けた意味なんとなくわかってきたわ」
「ん?どういう意味ですか?」
佐々木は大事なとこだけ教えてくれない巽を見て
明日、猫じゃらし買いに行こうと決意したのだった……