2 試合観戦デート 前編
そして迎えた日曜日。俺は少し緊張しながらも、LINEで約束した駅の改札前で待っていた。
すると、改札の向こうから、ももの姿が見えた。いつもの制服や部活着とは違う、ジーンズのショーパンにフリルのついた白のトップス、肩ぐらいの髪はハーフアップにしていて、普段よりも大人っぽく見える。
しゅんは思わず見とれてしまい、心臓が大きく跳ねた。
「しゅん、ごめん!待った?」
ももが小走りで近づいてきて、首を傾げた。その仕草がしゅんをまたドキッとさせる。
「いや、今来たとこだよ!」
「そっか、じゃあ会場へ行こう!」
会場までの電車の中では、ももが「今日の試合、どの選手が楽しみ?」と話しかけてくれたり、しゅんが応援しているチームのユニフォームを着た人たちを見て「すごいね、みんな気合入ってる!」と目を輝かせたりして、会話が途切れることはなかった。
会場に着くと、ももは目をキラキラさせながらコートを見つめていた。選手たちのウォーミングアップが始まると、「わー、すごい迫力!」と感嘆の声を漏らしていた。
試合が始まると、ももは身を乗り出して一点一点に熱中し、強烈なスパイクが決まると、
「しゅん、見て! 今の、スパイクすごっ」
と、はしゃぐ笑顔が、しゅんの心に深く刻まれた。
「そうだな! 今のナイスプレー!」
俺もももと一緒になって応援した。そんな俺の姿にももはふっと笑った。
「なんだよ、何笑ってんだよー」
と俺が言うと、ももは笑い声を上げながら言った。
「なんか、しゅんとこうやって出掛けるの久しぶりだなーって思って。小さい時はいつも一緒だったのにね」
確かに。俺たちは家が隣同士で小さい頃とかはよく遊んでいたが、中学高校と上がっていくうちに、お互い友達と過ごす時間が増えていった。
「そうだな、じゃあ今日は思いっきり楽しまないとな」
そう言い試合観戦に戻る。そして俺たちが応援しているチームは無事試合に勝った。
「今日の試合めっちゃすごかった! しゅん、誘ってくれてありがとう!」
「それな、一緒に試合観戦出来て良かった。てか、これからどうする、お昼食べとくか?」
さりげなくお昼の話題を出した。久しぶりに出掛けたんだ。まだ一緒に居たい。
「うーんそうだね。そういえば近くに美味しいカレー屋さんあるんだよ。そこ行こ!」
そう言ってスマホの地図を見るももの姿に、まだいっしぃに入れるとホッとした。