1 幼馴染
俺の名前は田中しゅん。りょうとタケルとは中学からの付き合いだ。
りょうの隣で、あいつがりんを好きになって、恋の応援をしていた。そして、タケルが林さん、いや、楓と付き合い始めた時は、正直「やるじゃん!」って思ったけど、ちょっと寂しさもあった。
俺には、中学からの幼馴染、高橋ももへの変わらぬ想いがあった。
ももは、明るい性格でバレー部のマネージャーを務め、しゅんにとっては眩しい存在だ。部活で顔を合わせるたびに、しゅんのももへの片思いは募るばかりだった。
ある日の放課後、いつものようにタケルと楓がデートの計画で盛り上がっていた。
「ねえねえ、タケル! 今度の日曜日、プロバスケの試合見に行かない?すごい迫力なんだよ!」
楓がタケルに甘い声で話しかける。
「おおっバスケの試合? 行く行く! 生で見るの楽しみだわ」タケルも満面の笑顔で答える。
その会話を耳にしたしゅんは、はっとした。以前、ももが「スポーツ観戦するの好きなんだよね!」と言っていたのを思い出したのだ。これはチャンスだと直感したしゅんは、勇気を出してももに声をかけた。
「もも、あのさ」
ももはしゅんの方を振り向いた。
「うん?どうしたの、しゅん?」
しゅんはごくりと唾を飲み込んだ。
「今度の日曜日、もしよかったらなんだけど、バレーのVリーグの試合見に行かないか? その、プロの試合、迫力あるし」
しゅんの誘いに、ももは予想以上に喜んでくれた。
「えっVリーグの試合!? 行く行く!プロの試合、ずっと生で見たかったんだ! しゅんもVリーグ好きなの?」
「おうっ俺も結構好きだぜ!」しゅんは平静を装って答えた。
「やったー! じゃあ、今度の日曜日、試合見に行こっか!」
ももの最高の笑顔に、しゅんの胸は高鳴った。初めての、ももとの二人きりのデートが決まった瞬間だった。