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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第三章 出会いと共に
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第23話 転生者の謎

ヨヨは何かを知っている……。

果たしてカガミは、真実を得られるのでしょうか。


転生者の謎


どうぞ。

 ——アリステラ。

 俺の方を見て、ヨヨはその名をはっきりと口にした。

 

 以前、皇帝も同じような事を言っていたし、ルミナは俺を母と誤認したこともあった。

 だが、これだけは言える——俺は女神アリステラではない。


(え、えっと……)


 見当違いな名指しに言葉を詰まらせていると、ヨヨはゆっくりと俺に近づいた。


「やっぱり——やっぱり、そこにいたんだね……」


 俺を見つめる瞳には、緑色の光が映る。

 やはり彼女には、俺のマナが見えているようだ。


「あんた……辛かったねぇ。散々追い回されて、挙句の果てに——こんな姿に……私はあんたが、不憫で不憫で」


 ヨヨは()()を労わるように、震えた手で俺のマナへと触れる。


 ——しかし、目の前で涙する彼女を見かねた俺は、事実と共に()()()を聞かせた。


(……あの、落ち着いて聞いてくれ——俺は、アリステラじゃない。なぜかよく勘違いされるが、異世界からやってきた人間なんだ——)


「——なんだって……?」


 男と思しき俺の声を確認し、ヨヨは不思議そうに目を丸めたが——それでも彼女は、俺の中の()()を見つめていた。


「確かに、声が全然違うようだけど——おかしいねぇ。それに()()()って、何を言ってるんだい……」


(俺も、何が何だかわからなくて……藁にもすがる思いで、ヨヨに会いに来た。()あって、あんたの存在を知っていたから——)


 その手を離したヨヨは、よろめきながら近くに腰掛け、ぶつぶつと何かを呟き始める。


(混乱させてごめんよ。でも、もうここしか頼れなくて——)


「……これには、何やら——深い訳がありそうだね」


 ——大きなため息をついた彼女は、教室を出ようと俺に背を向けた。


(ヨ、ヨヨ? ——どこに行くんだ⁉︎)


「——今日は診察もあるし、今度時間がある時にでも話そう。これについては、どうも立ち話で終わりそうにないからね……悪いけど、また来ておくれ」


 彼女の言う通りだった。俺自身、謎だらけのこの状態を、十分、二十分の話で説明がつくとは思えない。

 その言葉に納得した俺は、彼女の背中を黙って見送った。


『ヨヨ婆様……カガミさんが見えるなんて——』


(——さすがは法王様だな。ってなわけで、今日はもう他で時間を潰そう)


 俺を視認するヨヨにマリラは驚くが、一方で俺は、変わらない様子で、次の目的地へと体を進める。

 だが——。


『ちょっとカガミさん……一体どこに?』


(どこって——ルミナのいる寮だよ)


 俺の発言に、彼女は珍しく声を荒げた。


『だめよ! 男のカガミさんが、女の子ばかりの寮に入るなんて、いけないことだわ!』


(それは、そうだけど……)

 

 ただの様子見のつもり言ったのだが、彼女の耳にはそうは聞こえず、やがて睨むような目で俺を抑止した。


『やっぱりカガミさんは、ラキが言った通り——スケベな人だったのね!』


(なにっ⁉︎)


 彼女は突然、あらぬ言葉で俺を責め立てる。

 下心もなく適当に決めた目的地だと言うのに、心外に思った俺も声を上げた。


(違うよ! それはただの誤解だ! 覗きに行こうなんて……本当に思っちゃいないよ——)


 同じ女として、俺の行動を不埒と取ったマリラは、一歩も引かなかった。


『それなら決まりね。ルミナさんの様子は、私が見に行くから——それに、カガミさんの声がうっかり漏れちゃったら、大変でしょう?』


 ——確かに……相手は、魔法使いの少女ばかりだ。

 男の声が聞こえ、見られていると知ったら、()()()のルミナみたいな大爆発が起こりかねない。 


 腑に落ちない気持ちを残しつつ、彼女の言うことにも一理あった俺は、その場に背中を向ける。


(それなら、そっちの事は頼むよ——俺はルキのところにでも行っとくから、何かあったら次会った時にでも言ってくれ)


 寮の情報についてはマリラに任せ、俺は彼の気配を探りあて、その方向へと飛んでいった。


* * *


 ——たどり着いたのは、今朝見た訓練場から少し離れた場所にある、兵舎の中庭だった。


(えらく寂れた場所だな……あいつ、こんな時間まで外に出てるのか——)


 気配をたどっていくとそこには、影から彼を見守るラキの姿があった。


『ふぁ? カガミさん……来てたんですねぇ』


(まだ起きてたのか。ルキはまだ、ここにいるんだろう?)


 彼女は目を擦り、うとうととしながら、大の字になって空を見上げるルキを指差す。


『仲間の子達は、もう帰ったって言うのに、ルキってば、こんな時間にまで剣を振ってるんですよぉ——』


(そうか。あいつも、頑張ってるんだな……)


 黙ってルキを見つめていると、彼は顔を顰めながら、ふと呟いた。


「今度は——絶対負けねぇ……」


 彼がここまで自分を追い込む理由。それはやはり、あの日の敗北だった。

 それよりも——。


(俺の……せいかもな——)


 歯を食いしばる彼の姿を見て、俺もその敗北に責任を感じていた。

 それに、あの日以来一言も喋っていない彼が、今どう思っているのか、俺は知っておくべきだと思った。


『カガミさぁん。私はそろそろ、寝ますね……』


(ああ。俺はちょっと、ルキと話してくるよ——)


 大きく体を伸ばしたラキは一言だけ言い残し、倒れ込むようにして姿を消す。


『あまり遅くならないように言っておいてくださいねぇ——』


 そして俺は、ルキの元へと体を進めていった——。


「——畜生……!」


 ギュッと目を瞑る彼は、瞼の裏にあの時の景色を見ていた。

 ああ動けばよかった……こう考えればよかった。そんなことばかりを、ずっと繰り返し考える。


 そこに——。


(……よう、ルキ——久しぶりだな)


「——わっ! まさか⁉︎ 声のやつか……?」


 ガバッと起き上がり、こちらを見つめるルキ。

 毎回訪れるこの不便な登場に、俺は気の毒に思っていたが、彼は気にせず続けた。


「最近声がしねぇと思ってたけど、いたんなら声かけろよな——」


(え? ああ、すまん。——そんな事より、ルキは怒ってないのか?)


 怒るどころか、心配するような様子を見せる彼の反応に、俺は戸惑っていた。


「怒る……? なんで俺が怒るんだよ?」


(——ほら、俺の後押しのせいで、お前たちを危険な目に合わせてしまっただろう? それに、マルクだって……)


 彼の名を聞いたルキは、顔を俯かせ拳を強く握る。


 ——やっぱり、怒っただろうな……。


 気まずくなった俺は、彼と一緒になり黙っていたが、胸の中の罪悪感がそれを許さなかった。


(……本当に、すまなかった——偉そうに神だのと名乗りを上げて、その結果、俺は……何の力にもなれなかった)


 その言葉を——ルキは黙って受け取める。


 もちろん、いくら悔やんだって、死んでしまった人達は帰ってこない。

 本当はちゃんと目の前に現れて、ぶん殴られたい気分だったけど、今の俺にはこうする事しか出来ないのが、本当に歯痒かった。


 ——しかし。


「別に……怒ってねーよ」

 

 彼は俺を言葉で殴りつける事をせず、むしろ笑みすら見せた。


「——へへっ。神様とか言って、色々知ってるみたいだったけど、俺は半信半疑だったからな」


(は、はは——そうか)


 姉貴譲りの前向きな性格で、俺の不安を笑い飛ばすルキ。

 彼らの笑顔は——本当に、救いになる。


(強いんだな……ルキは——)


 ただの取り越し苦労だと、俺は胸を撫で下ろすが——彼は今、別の懸念を抱いていた。


「それよりも、皇帝が言った()()()ってやつの事なんだけどよぉ——」


 ルキの表情から——笑顔が消える。

 彼自身も、あの時空に向かって放つ皇帝の不可解な言葉に、未だ違和感を感じていた。


「あいつ……透明人間のお前が、あそこにいるって事を知ってたみたいだし——お前、本当は神様なんかじゃないんだろう? それに、もしお前が転生者ってやつなら、それって一体何なんだ?」


 俺の事など気にも止めていないと思っていたが、彼は中々に鋭い指摘を見せる。

 

 ——そして、それに観念した俺は、ここにきて一つの事実を伝えた。


(——その通りだよ、ルキ。実は俺は、一度死んでこの世界にやってきた、ただの人間だ)


「死んだ⁉︎ そんじゃあ、ただの幽霊って事かぁ……? ()でも聞いた事あったけど、本当にそんなやついるんだなぁ。インチキくさい理由が、やっとわかったぜ」


 その言葉に俺はムッとなったが、彼の言う通りだった。俺はこの世界のことを()()知っているだけで、神様なんて大層な存在ではない。


(それと——転生者については、俺もあまりよくわかっていないんだ。だから俺なりに色々調べて、また二人の前に現れるよ。——約束する)


「……そっか」


 俺の誠意が伝わったのだろうか、ルキはもう一度笑ってくれた。


「よくわかんねえけど、頼んだぜ。特にルミナのやつは——お前を、不審がってると思うから。」


 そして、ルミナの中の不安を見抜いていた事を明かすルキ。

 彼女が、俺を疑うのも仕方がない。一度は信用させた彼女を、裏切ってしまったわけだから。


 それに、俺に対し——アリステラと呼んだ皇帝の言葉も、彼女は聞いていたはずだ。


(ルキ……お前、なんだかんだ言って——ルミナの事を心配してるんだな)


 照れくさそうに鼻を掻いたルキは、それを誤魔化すかのように立ち上がった。


「そりゃぁ——()()()()みたいなもんだからな」


 ……そうだったな。

 一人になったルキが、寂しい思いをせずに済んでいるのは、傍にいてくれたルミナのおかげだもんな。

 

 その言葉は、()()()に直接聞かせてやりたかったよ。


「——とにかく、そういう事だからよ。俺はもう寝るぜ」


(ああ——またな)

 

 託すような言葉を言い残した彼は、あくびをしながらこの場を後にする。


 ——俺は、彼と腹を割って話せた事で、この世界が徐々に俺を受け入れてくれたように思えた。

 その喜びを得た俺は、彼らを守りたい理由が、また一つ増えるのだった。

このお話は、次回に持ち越されます。

どうやら、ややこしい話のようです。


お次は金曜日!

“あの男”の登場です。

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