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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第二章 目覚めと共に
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第7話 壊れそうな心

死闘を終えたルミナの目覚めを、マリラと共に見守る回です。

体の傷は問題ないのですが……。


壊れそうな心


どうぞ。

 ——とある宿屋の一室。


 緑色の光を帯びた手が、ベッドで眠る銀髪の少女に添えられていた。

 

(どうだ? ——ルミナの傷は)


『大きな負傷は無いわ。目を覚まさないのは、おそらく疲労などが原因じゃないかしら』


 マリラは、癒しの光を放つその手をそっと離した。


(問題は、心の方か……)


『——心?』


 こちらを振り返るマリラに、俺は()()()について——おもむろに話す。


(さっき話してた、俺の仲間の事なんだけど——)


『ええ。ラキの弟ルキくんと、ここにいるルミナさんに、もう一人は確か……“マルクさん”って、人の事よね?』


 ——俺はここに来る道中、この世界で目覚めて出会った三人の仲間と、バルナ王国での壮絶な戦いに臨み敗北してしまった過去を、マリラに話していた。


(——今ここにいないマルクってのは、ルミナの……恋人なんだ)


『恋人……』


 大切な人との仲を引き裂かれてしまう。マリラは、自分がよく知るその痛みを思い出し、顔をしかめる。


『……それで、マルクさんは今どこに?』


 彼女の言葉に俺は、今一度()()()で彼の気配を探す。

 だが、いつも感じていたあの大きな力が、今はかけらも感じ取れなかった。


(——何度やっても、見つからない……帝国に囚われてしまったのか、もしくは…… もう彼とは、会えないのかもしれない)


 情けなくも不安ばかりを募らせる俺に、マリラは声を発する事なくただ黙していた。


 ——すると、枕元で聞こえる声にピクリと反応したルミナが、ゆっくりと目を開けた。

 

「……ん。誰か、そこに?」


(——ルミナ!)


 彼女は起き上がり、朦朧とした意識のまま声の主を探していた。


(こっちだ、俺はここにいるぞ)


「——その声、神……様? ここは?」


 状況が理解できぬまま、俺の存在をようやく確認し、あたりを見回す。

 

(ここは、ギルバディアだよ。アバンに助けられ——君はここに、運ばれたんだ)


「痛っ……!」

 

 極限状態の疲労による頭痛が、ルミナを襲った。そして、その痛みを抑えるように頭を抱え、彼女は徐々に記憶を巻き戻していく——。


「アバンに助けられた……? 確かあれは、国境の森……。バルナの王宮から、逃げ出した……何から?」


 しかし、蘇る記憶のたどり着く先は——王宮での、あの忌まわしき壁だった。


「……結界」


 ——さらに、その先の彼の背中を思い出した彼女は、大きく目を見開きながら、声を震わせる。


「マルク! ……マルクは⁉︎」


(そ、それは……)

 

 顔をどんどん歪めていくルミナ。

 壊れてしまいそうなぐらい脆く見えた彼女の表情に、俺は答えることができなかった。


 ——すると、沈黙していた俺に手を添えたマリラが、まっすぐとこちらを覗き込む。


『——言ってあげて、何もかも。気持ちはわかるけど、彼女はきっと()()()なんか求めていない……』


 俺の隣で、悲しく囁き首を横に振るマリラ。


 彼女の言う通り、ここでルミナの気持ちをごまかしても何の意味もない。

 そう思った俺は、断腸の思いで——言葉を並べた。


(——マルクは……ここにはいない。いつも感じる彼の気配も今は感じない。帝国に囚われているか、もしかしたら、もう彼は……)


 これが紛れもない真実。ルミナもこの結果を、どこか予感していただろう。

 しかし、受け止めるには重すぎるそれは、彼女の心を静かに壊し始めた。

 

「——はぁ……はぁ」

 

 胸の高鳴りは止むことはなく、張り裂けそうなぐらいに大きくなっていく。

 だが、そうはさせまいと両手でその胸を押さえながら、口をパクパクとさせ、言葉にならない言葉を詰まらせているルミナ。

 

「——あう……あ」


(ルミナ……)


 ——そして彼女は、俺の声に反発するように吐き出した。


「——てってよ」


(なん……だって?)


 その一言をきっかけに、つっかえていた言葉が、感情の波に流されて次々と俺へ襲う。


「出てってよ! 何が神様よ! あなたを信じた私が馬鹿だった! 何もできないなら、もう私の前に現れないでよ!」


 言葉や感情をいくら吐き出しても収まらないルミナは、花瓶や杯など、その部屋にある何もかもまで投げ散らかす。


 突然の彼女の奇行に、マリラも思わず声を上げ、後ろへと身を屈めた。


『——キャッ!』     

       

 俺は、ルミナが投げかけた言葉に何も言い返せず、ただ動けずにいた。

 散開する物の数々は、俺の体をすり抜けても、彼女が放った言葉はすり抜けてくれない。

 

「まだそこにいるんでしょ⁉︎ 早くどこかへ消えてよぉ!」


 ——矢も盾もたまらなくなったマリラは、こちらを振り向き、俺の体を引く。


『カガミさん、今ここにいても埒があかないわ。ここは一旦、一人にしましょう!』 


 俺はマリラに連れられるまま、ルミナを一人にすべく、窓からその身を飛び出した。

 何の力にもならない言葉だけを残して——。


(俺、行くよ。ごめん——何もできなくて……)


 いくら謝ったって、今の彼女の心にそれが届くとは思えない。

 それでも——そうわかっていても、ルミナの言葉に打ちのめされた俺の心を保つ為には、そうするしかなかった。

力になりたいのになれないって本当に辛いですよね。

情けなくて自分ばかりを責めたり、相手ばかりを責めたり、そうせずにはいられません。


お次は火曜日!

壊れた心をちょっとずつ修復していきますよ!

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