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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第二章 目覚めと共に
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第6話 少女との再会

振り向いたそこには、旅の途中で出会ったあの子の姿。


少女との再会


どうぞ。

『——ナナちゃん⁉︎』


 両手を胸元に寄せ、震えた瞳でこちらを見つめるナナの姿。

 ——かつて、盗賊に怯えながらも懸命に立ち向かい、涙をこぼすルキの心に優しく寄り添った少女。

 そのとき芽生えた絆は、やがて彼の中で特別な想いへと変わっていった。

 

 ナナ——ルキが心を許した、密かな想い人である。

 


「やっぱり! ルキ様——あっ!」


「危ないっ!」


 歩きにくそうな靴で、草原に向かって駆けていったナナは、足をもつれさせ、そのままルキの腕に飛び込んだ。


 ——彼女の髪から香る匂いと温もり。鼓動が跳ねるのを誤魔化すように、ルキは視線を逸らしながら、その小さな肩を引き剥がした。


「悪ぃ! ……でも、どうしてここに?」


 ルキの問いかけに、少女は少し頬を染めて俯き、胸の前で指先をそっと絡める。


「……はい」


 一拍置いて、静かに言葉を繋いだ。


「少し前、ここギルバディアに……引っ越しましたの——」


 ——まだぎこちない二人を見守りながら、届かぬ想いを抱いていたラキも、弟の幸せを願うように、そっと目を細めていた。


* * *


 ——再会を喜び合った二人は、再び小川の草原に腰掛け思い出話と共に、今までの経緯を話していた。


「——そんじゃナナは、とーちゃんの仕事でこっちに来たってのか?」


「ええ。父は父なりに帝国に抗う決意を固めていた様で——」


 ナナの父テスカは、以前から構想していた資金援助を実現すべく、ここギルバディアへと足を運んでいた。

 戦に必要な武具や、食料の供給も見越した動きであり、商売人としてだけでなく、支援者としての顔を持っての訪問だった。


「それより——ルミナ様や、マルク様はどちらに? ()()()のお礼もしたいですし、是非会いたいですわ!」


 禁句を聞いたラキは、目の前に腰掛ける弟の横顔を、恐る恐る覗き込む。


「ルミナは寝てる。マルクは……ここには、いねぇ——」


 もう立ち直ったのだろうか……先ほどの涙が嘘だったかのように、ルキはキッパリと答えた。


「……そんな」


 ルキの体に残る傷跡を見て、何かあったのだろうと思っていたナナだったが、彼女の中の点が繋がっていく。


「やはり皆さんは、バルナでの戦いに参加されていたのですね——」


 ナナは父から、マルク達の次の目的地はバルナであるという事を聞いていた。

 その結果、バルナ崩壊の知らせを聞き、まさかと思い、心のどこがで皆を心配していたのだ。


「でもバルナ王国は、帝国との同盟を謳っていたのに。なぜあんな事に——」


「同盟なんて、嘘っぱちだ‼︎」


 ルキの突然の憤怒に、ナナはビクリと肩を震わせ、その場の空気が凍りついた。


「ぞろぞろと妖魔まで連れてきて、結界の策まで用意して、あいつらは、ハナからバルナを潰すつもりだったんだ! そんな事は皆わかってた! だから俺たちは、剣を取ったんだ!」


 怒りを抑える事ができず、彼は次々と言葉を並べる。


 目覚めてからずっと、バルナ兵達の姿と、最後に見たマルクの背中が、彼の頭を離れてくれなかった。

 そしてなによりも、その全てをなすすべもなく奪われた自分の無力さが——悔しかった。


 ——痺れるほどに握り締めた拳の痛みに、ハッとなったルキは、ナナの震えた視線に、ようやく気がついた。


「いけねぇ、俺は一人で何を」


 そばにいてくれるナナに、これ以上心配をかけまいと、取ってつけたように笑顔を見せるルキ。


「マルクは、あんなことじゃ死なねぇし——俺もこんなことで、くよくよしてたら、いけないよな……」


『ルキってば……』


 ナナの後ろから、弟の横顔を見ていたラキには、それが偽物だということがわかっていた。

 

 ——するとルキは、すっと立ち上がり、ずっと黙っていたナナに、今度は優しい言葉で塗り替える。


「そんな顔するなよ、俺は大丈夫だからさ」


『ルキ……』


「そんなことよりさ、楽しい話でもしようぜ」


『……だめ』


 ——このままではいけない。こんな事を続ければいずれ彼はダメになってしまう。

 偽りの笑顔には、いつか限界が来る事を、ラキはよく知っていた。


 もう、自分がやるしかない——彼女は、そう決意した。


 禁を破ることになるが、目の前の彼女の体を借りれば、弟の涙を受け止められる。


 ——矢も盾もたまらず、ラキはついに、ナナの体に触れようとした。

 だが、その瞬間……彼女の背中がゆっくりと遠ざかった。


「わっ——」


 突然の柔らかな感触に驚き、その胸の中で声を上げるルキ。やがてナナは、彼の頭をやさしく撫で回しながら、耳元でそっと囁く。

 

「——泣きたいのに我慢をするのは、お姉さまとご一緒ですね」


 ——ナナの、優しい声と温もりの中で、ルキは思い出していた。

 姉に無理をさせ、死に別れてしまった話を聞いてくれた彼女が、今と同じように全てを包んでくれた、あの日の事を。


「ご無理をなさらないでくださいね。どうか私にだけは、ルキ様の涙を、受け止めさせてくださいまし——」


 彼女は誰よりも先に、ルキが必死に隠していた心の傷に気づいていたのかもしれない。


 ナナの愛情に包まれたルキの心の行く先は、涙となってこぼれ落ちるに至っていた。


「ナナ。俺……俺——」


 その場でしゃがみ込む二人。

 啜り泣くルキを抱きしめながら、ナナは微笑み、何度もうなずき、その涙の一粒一粒を、その小さな体で受け止めていた。


 ——ラキはすぐに振り返り、その場を後にした。

 もう、何もいらなかった。自分がいなくても、弟には支えとなる人がいる。

 涙を、心を、まるごと受け止めてくれる存在が——ちゃんとそこに、いてくれたから。


『ナナちゃん……ありがとう』

ナナとの再会。

今後のギルバディア編を彩る重要キャラクターの登場でした。

二人の絆の行方をお楽しみください〜


お次は金曜日!

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