表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第一章 癒しと共に
44/55

第4話 同じ痛みを背負って

第一章の完結になります。

その人の痛みがわかるなら、もう仲間です。


同じ痛みを持つ者


どうぞ。

『この世界の為……?』


 俺の突然の提案にマリラは戸惑うが、彼女は疑問を投げかける。


『さっきあなたは、神様と呼ばれていたけど、一体何者なの?』


 ただの“光の塊”にしか見えない俺を見つめるマリラだったが、今度はラキが割って入ってきた。


『そうそう! カガミさんはすごいんですよ! ちょっとスケベだけど、この世界の事をなんでも——』


(——引っ込め)


 次々と言葉を並べていたラキが、一瞬にして消えた。それを見て、驚きを隠せないマリラ。


『また消えた⁉︎ ラキはどこに……?』


(まあ気にするな。後で説明する——)


 ——うるさいラキを引っ込め、噴水広場の一角にある家の屋根に移動した俺は、今までの経緯を少しずつ語りはじめた。


(初めに、俺の正体だが——俺は元々別の世界の人間で、命を落としこの世界にやってきた“転生者”と呼ばれる存在だ)


『……転、生? べ、別の世界?』


 耳慣れない言葉が並び、マリラの思考は追いつかない。ただ呆然と口を動かすしかなかった。


(転生者という言葉は最近知ったがな……そして驚く事にこの世界は、俺のよく知る物語の世界なんだ)


『物語——おとぎ話のようなものかしら?』


(まあ……そんなところだ)


 俺は言葉を濁した。本当のことは言えない。

 ——この世界が、俺の描いた小説そのものだなんて。

 それを口にした瞬間、マリラを殺したのは俺自身だと認めることになるから。

 それに、この世界はもはや俺の知る物語ではない。


『信じられないわ……その話にも、ギルバディアや帝国、女神の伝説が、存在していたというの?』


(その通りだ。それにもっと驚くことに、この世界で起きる出来事も、登場する人物も、全てがその物語と同じなんだ——)


 様々な思考を巡らせ、なんとか俺の言葉を飲み込んだマリラだったが、彼女には今一番気になっている事があった。


『——だとしたら、この世界はいずれどうなっていくの? 帝国は? ギルバディアは? あなたは、全て知っているの⁉︎』


 やはりこの世界の人間は、どこの国であれ皆、帝国の恐怖に怯えているらしい。

 心配そうにするマリラに、俺は、()()()()()の結末を告げる。


(……帝国は滅び、この世界はちゃんと平和になる。女神アリステラの力によってな——)


『え……?』


 幸せな結末と聞き一瞬だけ安堵するマリラだったが、おかしな情報に気づく。


『アリステラ様って……確か』


(ああ、帝国に——殺された)


 皇帝により命を奪われ、その首を晒された為に、アリステラの死の情報はこの国にまで行き届いていた。


 ——女神の晒し首。


 本来、世界を救うはずだった存在が無残に殺されている。この事実が、物語が描く平和な未来を曇らせた。

 

『それが本当なら、ギルバディアの皆んなは……』


 帝国を止める術がないと察したマリラは、故郷を想い俯いた。


(俺は、この物語を愛する者として、大陸を平和に導きたいと思っている。——その為に、君の癒しの力は、きっと役に立つと思う)


 その言葉を聞いた瞬間、マリラの表情がわずかに揺れた。

 だがそれは希望ではなく——別の感情だった。


『……あなたが欲しかったのは、私の“力”だったのね』


 静かな声だった。

 しかし、その奥にあるのは、明確な怒りと、深い傷つきだった。


『勝手に私を甦らせて……死んだ自分を見せつけて……

全部、“私が治癒魔法を使えるから”なの?』


 彼女の瞳は、涙で揺れていた。

 それは、生き返った喜びでも、希望でもない。

 マリラは、俺から一歩距離を取るように目をそらした。


 ——しかし俺は、彼女の物語をなぞって見せた。


(君の存在は——実は知っていた。若くして、病気でこの世を去ってしまう事も……)


 自分の事ですら、その物語に記されていた事に驚きつつも、やっぱり。と少しため息をつくマリラ。


(だが、本当の理由はそうじゃない)


 顔を上げた彼女に、俺は答える。


(マリラにはまだ、会いたい人がいるだろう? そう思う君が、ほっとけなかった)


 最期の時に、愛する人に会えずに終わる彼女の無念を俺は知っていた。

 それを聞いたマリラはギュッと拳を握り、その名を呼ぶ。


『レオン……』


(ラキだってそうさ。最期の瞬間、唯一の家族だった弟に会う事が出来なかった。その思いが残り……今ここにいる)

 

 明るく笑うラキが、辛くも同じ痛みを背負っている事が信じられない様子のマリラ。

 だが、彼女にはまだ、同じ境遇の二人を蘇らせた俺の行動が理解できなかった。


『関係ないあなたが、なぜそこまでするの?』


 俺はマリラに、二人と同じ過去()がある事を明かした。


(俺も同じなんだ——家族と死に別れて、後悔したことがある)


 疑いの目を向けていた彼女だったが、同じ痛みを背負う俺の過去を聞き、頑なな心が徐々にほころんでいく。


(大切な人の死に目に会えず、何も伝えられない悲しみは、俺もわかっているつもりだ、だから——)

 

 ひそめた眉をゆっくり解いていくマリラ。

 彼女の中の何かが変わっていく中——横から突然、音と共にラキが()()に飛び出してきた。


『——お話は終わりましたか⁉︎ 全く、急に引っ込めるんだから……』


(ラキ⁉︎ お前、いつの間に出てこれるようになったんだよ……)


 自分から姿を現す術を覚えたラキに驚く俺だったが、ラキは腕を組み鼻高らかに目を細める。

 

『だんだんコツがわかってきましたよ——これからは、私も好き放題できますね……むふふ』


(お前なぁ……変な気を起こすんじゃないぞ)


 俺が彼女に気を取られていると、その後ろからハッキリとした答えが返ってきた。

 

『——会いたい』


 同じ痛みを背負い支え合う二人を見て、背中を押されたのだろうか。

 マリラは、胸の中に残っていた希望をようやく絞り出した。


『声なんか届かなくたって、私は——あの人(レオン)に会いたい。それから力になれるか分からないけど、私も二人に——ついていきたい』


 俺の言葉を待つようにして、こちらを見つめるマリラ。


(——もちろんだ! 決意をしてくれて、感謝するよ)


 断る理由なんてない。

 それに、良かれと思って蘇らせた彼女が上を向いてくれるのは、俺にとっては何よりも救われる事だ。


『ええ! 仲間が増えて、私も嬉しいです!』

 

 二つ返事をした俺の横で、満面の笑みを浮かべながら拳を握るラキ。

 

『ありがとう。——そういえば、あなたの名前は?』


 新たな仲間に紹介を預かった俺は、ようやく名乗る。

 

(俺の生前の名は——白銀鏡(しろがねかがみ)。どう呼んでくれても構わないよ)


『ふふっ。変わった名前ね』


 嬉しそうにクスリと笑ったマリラ。

 そして彼女は一歩下がり、少しスカートをたくしあげ、そっと胸に手を置き会釈を始めた。


『改めまして、私、マリラと申します。——カガミさん。ラキ。どうかこれからも、よろしくお願いします』

挿絵(By みてみん) 

(あ、ああ。よろしく——)


 お上品な彼女の振る舞いに、俺は少したじろぐが、すぐにラキの笑顔が包み込んだ。


『よろしくお願いします! これから三人で、楽しくやりましょう!』


 ——こうして、ギルバディアに生まれ育ったお嬢様マリラは、新たな仲間として加わった。

 伝えられなかった痛みを胸に背負った三人は、静かに、確かに、前へと歩き始めた。

【第二部】 第一章 癒しと共に 編

終了でございます!

新キャラは、癒し系お姉さんマリラでした。

彼女の闇の全ては取り除けていませんが、それを皆で背負う事によって、きっと彼らは乗り越えていける事でしょう。

さて、続く第二章は、目覚めと共に……

こちらは目覚めた少年の話から始まります。

乞うご期待!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ