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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第一章 癒しと共に
42/56

第2話 マリラ

今回は短いですが、彼女が死を受け入れる重たい回になります。

新キャラの名はこちら。


マリラ


どうぞ。

 気がつけば、マリラの体は屋敷の屋根の上に横たわっていた。

 そこには、肩まで下ろした黄色い髪に、青色のカチューシャをした少女が、眩しい笑顔でこちらを覗き込んでいる。


 宙に浮いてる……ギルバディアに住む、街娘かしら——? そうだ! この子はきっと——。


『可愛いらしい……あなたは、天使様ね?』


 マリラは体を起こし、黄色い天使に問う。

 

『可愛いらしいなんてぇ、でへへ。照れますねぇ』


 羽もなく宙を舞うその天使は、体をもじもじさせながら目を細めている。


 ——そこに、どこか聞き覚えのある声が飛んできた。


(こら、天使様を否定しろ。全く……)


 声のする方へ目を向けるとそこには、モヤモヤとした光の塊。その塊は、()()()()()、緑色に光って見えていた。


『その声は——さっきの、天の声?』


 黄色い天使を押し除けて近づくその光は、彼女の問いに答えた。


(その通り。君の魂をここに留めたのは——この俺だ)


『魂を、留めた?』


 次々と降りかかる疑問に、マリラが首を傾げていると。

 それを察した天の声は、説明を始めた。


(簡単に紹介すると——俺は、この世界の“全て”を知る者だ)


『ちょっとスケベな神様と言ったところですね——』


(そ、それは誤解だ!)

 

 人間臭い神様に天使の相づちが入り、どこか間抜けな空気が流れる。

 だが次の言葉が、マリラの表情を変えた。


(おほん……実はここにいる“ラキ”も——君と同じ、今は魂だけの存在なんだ)


『すみません。実は、私は天使様なんかじゃないんですよぉ』

 

 その瞬間、マリラは息を呑んだ。

 目の前で笑っている少女——さっきまで明るい声で話しかけてくれていたその子は、もう“この世にいない”のだ。


『そう、なのね……』


 そして、ようやく声に出せた一言。

 この異様な光景に、ほんの少しだけ期待している自分もいたが、彼女は改めて自覚した。

 自分が、もう死んでいる事を——。

 

(……ああ、落ち込む気持ちはわかるが、今この下で起きている事が全てなんだ)


 彼女は、その全てを確認しようと、なんとか体を宙に浮かせながら屋敷の窓から、元いた部屋へと入っていく。


「マリラぁ……あぁぁぁ——」


 魂だけが抜けたマリラの手を握りしめながら、ベッドの上に泣き崩れる友の姿。


『ジーン……』


 その周りには、涙ながらにそれを見守る侍女達と、手を尽くし終えた医者が、彼女の死を確認していた。


 ——その光景に、マリラの心は縫い止められてしまう。


 胸が激しく痛み、頬には涙が伝う。

 魂だけの存在となったマリラは、なんとも言えぬ耐え難い苦痛と戦っていた——。

 

 それでも、時というものは残酷なほどに歩みを止めてはくれない。

 マリラの死を確認した侍女は、悲しくも次の行動に移っていた。


 ——ギルバディアの街では、死者の魂が夜を越えぬよう、翌日の昼までに眠りにつかせる習わしがある。

 死んだ人間は埋葬される。それはどんな世界でも例外ではない。

 すぐに牧師が屋敷に駆けつけ、その日の夜、皆の祈りがマリラに捧げられた——。


 

 ——翌日。街の外れにある丘の墓地にて。


「マリラ……」


 ただ一人、墓標の前で友の名を呼び、その場をしばらく動かないジーン。

 手を合わせた姿は、祈りというより懺悔のようだった。


 どれほどの時間が過ぎただろう。ようやく震える声で言葉を落とす。


「さようなら」


 その言葉を最後に、重い踵を返すジーン。

 だが、目の前にいたマリラの姿は、その瞳には映らない。

 そして、そのまま——友の魂に気づくことなく、ジーンは彼女の横を通り抜けていった。


 その背中を追うこともせずに、目の前の墓標だけを、ただ見つめるマリラ。

 重く、冷たい石の前で、彼女は静かに、自分の死と向き合っていた。

 

 ——その光景を見ていたラキは、たまらず神様に漏らす。


『カガミさん……』


(わかってる。今は、そっとしておこう——)


 ——軽い慰めの言葉など、かけられない。

 カガミと呼ばれる神様はただ、彼女がこの痛みを自分の力で乗り越え、もう一度前を向けるその瞬間を信じて——静かに見守り続ける事しかできなかった。


 そんな頼りない神様の隣で、ギュッと拳を握る少女は、人知れず、心の中の何かを必死で押さえつけていた……。

死んで幽霊になったらこんな感覚なんでしょうか。

書いてて考えさせられる重たい回になりました。


お次は金曜日!

楽しい回が待ってますよ〜

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