最終話 希望
ありがとうなラキ。
カガミも鏡も、この子には感謝の言葉もありません。
天声だだ漏れ転生、第一部の最終回になります。
希望
どうぞご覧ください。
絶望に満ちた俺を、ギュッと抱きしめていたラキは、やがてその手をそっと離した。
彼女の笑顔に、少しだけ救われた俺だったが、状況は何一つ変わっていない。
(さて——これから、どうしたものか……)
『さあ? とりあえず今は、新しいギルバディアの街でも回ってみましょうよ!』
(お前なぁ〜……)
ラキは相変わらず、次なる新しいものに目を向けていた。
彼女の背中を追いながら少し呆れる俺だったが、確かに今、俺たちにできることはない。
マルクの元に飛ぼうにも彼の気配はわからない。逃げ延びた民も、傷つき気を失っているルミナもルキも、俺にはどうすることもできない。
今できること——それは次なる戦いに向けて、この世界の事をもっと知る事だ。
『ふふふ〜ん♫』
街を彷徨い呑気に鼻歌を歌っているラキの横で、俺はさらに考え事をする。
——今回の敗因は、やはり俺にある。
皇帝の力を読み違え、見誤り、皆を出撃させてしまった。
『——カガミさん見て見て! おっきな噴水ですよ!』
奴が放った、“転生者”という言葉も気になる。
アリステラがどうとかも言っていたし、この世界には、俺の他にも転生者ってのがいたのか?
それに、度々見たあの変な夢の正体もわからない。
『——バルナと違って、大きな街ですねぇ。流石、大国ギルバディア! 昔を思い出します♫』
やはりいくら考えても、謎が謎を呼ぶばかりだ。傷ついた二人の事もまだまだ気になるし……はぁ、絶望的だ。
考えれば考えるほど、視界が狭くなっていく。
——すると、俺の視界の外から喝が入った。
パァン——!
(うぉ⁉︎)
隣には、俺の後ろを叩くラキの姿。
『私達、死んでるんですよ? もっと気楽にいきましょう!』
彼女には、俺の不安はだだ漏れだった。
(はは! そうだったな。)
下を向く度に、ラキはいつも希望をくれた。こんな絶望だらけの世界だって、彼女がいてくれたら俺はなんだってできる気がした。
今は、臆せず待とう——。
”この物語は、ハッピーエンドで終わる”
それだけは間違いないんだ。
きっと何度も、壁にぶつかると思う。下を向いてしまう時もあると思う。
それでも、この希望を内に据え、俺は俺の物語の世界で戦う事を、そっと心に決めた。
『カガミさん! あの人は一体⁉︎』
またラキが、新しい何かを見つけた。
(おい、待てよラキ——)
神を名乗っていた創造主は、新たな希望と共に、次なる舞台、ギルバディアの街へと溶け込んでいくのだった——。
ここまでのご愛読、本当にありがとうございます。
もちろんラキだけではありません。
皆様には本当に感謝しております。
そして、だだ転シリーズの記念すべき第一部は、これにて終幕です。
次回からは、作者が心待ちにしていたギルバディア編。
これからたくさんの出会いが待つ、作者一押しの物語になっております。
この物語はまだまだ続いていきますよ〜
広がれ!私のだだ転ワールド!!!
次回の事については近いうちまた告知させていただきますm(_ _)m
以上、白銀鏡でした。




