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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第一部】 第三章 希望と共に
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第29話 落書き

次なる作戦、結界封じ。

果たして結果は?


落書き


どうぞ。

 皇帝……この世界の創造主である俺の前で、いつまでその笑いが続けられるかな?


 余裕の笑みを浮かべる皇帝だったが、主導権はこちらにある。俺は作戦の進行を見守るべく、二人に目を向けた。


 ——ルミナとルキは襲いかかる兵を跳ね除け、指示された場所までなんとか歩を進めている。


(よし! いい感じだ)


 マルク、国王、マールの力によって、帝国側の主戦力は抑えてある中、一般兵を掻い潜りながら“目的地”を目指す事は、実戦経験を積んできた二人にとって、そう難しいことではなかった。

 

 このまま順調に進んでくれ——……。



 ——決行前の訓練所にて。

 ルミナとルキが、俺の声の元に身を寄せる。


「——結界魔法? そんなもんあんのか?」


 前回の半妖といい、さらに新しい単語が出てきて頭を混乱させるルキ。


「聞いたことがあるわ……数箇所に渡る魔法陣を囲むように、強力な壁を発生させるって——」


 物知りなルミナにより、結界魔法の説明を終えた俺は続けて喋る。


(これも予測だが、帝国軍は数人の魔法使いによって結界を作り、玉座付近の一帯を隔離させる作戦を企てている……)


 皇帝の目的はおそらく、国王と兵の合流を防ぎ、皆の前で彼を惨殺するというもの。


「そんなことしたら、そこにいるマルクも!?」


 最悪の状況を頭の中に浮かべてしまい、ルミナの胸には不安が駆け巡る。


「でもよ、その魔法使い達をぶっ飛ばせばいいんだろ?」


 ルキは、横から遮るように言う。


(その通り、それが今回の作戦だが——)


 俯いて、何か不安をよぎらせるルミナ。


「やるだろ? ルミナ?」


「マルク……」


 皇帝の恐るべき作戦を知り、ルミナは戦慄する。

 愛するマルクが、計画当日にはそんな危険な前線に立っているなんて。

 頭によぎった最悪の状況が本当に来てしまったなら、マルクは皇帝に——。


 怖くなり、目尻から思わず涙が出そうになるが——そこで。


「ルミナ!」


「キャっ!」


 不安を振り払う様に、彼女の背中を叩くルキ。


「しっかりしろよ! マルクを助けるんだろ!?」


 その言葉にハッとなり、ルミナは思い出す。

 自分が助けなきゃいけない——彼の壊れそうな背中を見て、そう誓った事を。


 ——彼女は少しだけ迷いながらも、顔を上げる。


「やってみせる……。マルクのこと、私が助けなきゃ!」

 

 俺自身も不安はあったが、ルミナの決意に応える様にして言った。


(あくまで仮の話だが、当日になったら俺が魔法使いの位置を確認し二人に伝える。——この作戦、絶対に成功させよう)


 二人は互いに顔を見合わせ、小さく頷くと、訓練場へと駆けていった——……。



 ——そして、王の間。

 ルミナはようやく、目的地の前で足を止めた。

 目の前には、地面に手をつき何かを記す魔法使い。


「させないわ!」


 すぐさま氷塊を降らせ、それを防いだルミナ。

 しかし、彼女の目の魔法陣は既に刻印された後だった。


「これね……よし!」


 刻印を焼き消そうと、炎を携えた手をその方向にかざすが——突如、空から何かが飛んでくる。


「——痛っ!?」


 痛みの先に目を向けると、その腕には鳥の羽の様なものが深く突き刺さっていた。すぐに抜き治療を施すルミナの元に、男の声が響く。


「おやおや、どうなさいましたか?」


 マールの攻撃を掻い潜りながらも、シュダはルミナの不審な動きを見逃していなかった。


 ——空からの横槍に唇を噛み締めていると、今度は別の帝国兵が襲いかかり、思わず距離を取るルミナ。


(くそっ! もう少しだったのに!)


 俺は悔しがりつつも、今度は少年の怒号が響く方向に目を向けた。


「おらぁぁぁ!」


 既に例の魔法使いを切り伏せていたルキの姿。

 そこにもやはり例の魔法陣——。


「この落書きだな、よし!」


(いいぞ、ルキ!)


 魔法陣を一つでも消す事ができれば、結界は発動しない。ルミナがダメでも、まだルキがいる。


 ——剣を振り上げ地面についた魔法陣の刻印を切り刻もうとしたルキだったが、またもや横槍が入る。


「うおおお!」


 狙ったかのように、ルキに襲いかかる帝国兵。


「——ぐっ!」


 ルキは咄嗟に攻撃を防いだが、ルミナと同様その場を後退してしまう。


(またか!)


 間一髪で刻印の消去が防がれ、俺はある男を睨む。


 そこには、それを見て笑っているシュダの姿。魔法陣が破壊されるのを恐れて、あらかじめ兵に指示を送っていたのだ。

 彼に“付与”されたのは広い視野。それを生かした的確な判断に、俺の作戦は打ち砕かれた。


 ——飼い犬に手を噛まれる様子を歯痒く思っていると、ついに玉座の周りを囲む四つ魔法陣が、怪しく光り出す。


「あれは? なんだ……」


 その光はマール達が気づくほどに、大きく広がっていった。


「あなた方の快進撃も、ここまでですよ!」


 準備が整い、皆の注目を集める様に羽音を立てて飛び舞うシュダ。


「だめ! 間に合わない!」


「畜生!」

 

 徐々に光の膜が、王座の周りを包み込もうとしていた。既に焦りに歪んでいた二人の表情が、これから起きる絶望を物語る。


「——これが絶望です!」


 空から言い放たれたその言葉と共に、皆が冷や汗をかいた。


 ——だが。


 スーッ——。


「…………え?」


 ——怪しい光はなくなり、そこには静寂のみが響き渡っていた。

 そして、しばらくそれを見守っていたシュダは、ようやく口を開く。


「……ど、どういうことですか?」


 何が起きたのか理解ができず、彼の表情に初めての焦りが見えた。

 

「……しくじったな」


 ——遠目で見ながら、呆れる様に息を吐く皇帝。楽しみをとられた様な表情で肩を落とす。


「どうして……?」


 静まり返ったその場で立ち尽くしていたルミナが、一つ、また一つと魔法陣を目で追っていると、あるものを見つける。


 ——離れた場所に位置する魔法陣の上に、見覚えのある黒い影が覆い被さっていた。


「カァっ!」


 黒い物体の正体は、カラス——。

 そしてカラスは、足元にある魔法陣の刻印を引っ掻き消している。


(なんとか、間に合った……)


 喜ぶように来て翼を広げ、鳴いているカラス。


「カカァ!(やりましたよカガミさん!)」


 このカラスの正体は他でもない——ラキだった。


 俺は、カラスに憑依し二人の援護をする様、あらかじめラキに指示を出していた。

 地面の落書きを消すことなんて、小動物にだってできる。


「カラスが……? そうか、“声のやつ”の仕業だな!」


 その様子を見て、今度はルキは声を上げている。

 本当は姉のラキの頑張りなのだが……まあこれであいつも、少しは俺を見直しただろう。


 ——第二の作戦“結界封じ”は、ラキの滑り込みの登場により、見事成功を収めた。

 そして俺は——最後の標的に目を向け呟く。


(皇帝——後はお前の首だけだ)

皆さんもラキちゃんを褒めてあげてください!

さて、今の所順調に作戦は進んでいます。

このまま終われば物語はハッピーエンド。


お次は火曜日。

お待ちしておりますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
ラキちゃんキタ!! 物語通りに進んでしまうのか…ってところでキタ!! すごいぞラキちゃん! しっかり伏線として役立つ設定があってよかった! 伏線と思わなくて書いても種は撒いておくべきなのかもと考えま…
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