表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
第二章 決意と共に
25/28

第24話 決意

もう迷いはありません。

皆張り切っています!


決意


どうぞ。

 ——気がつくと俺は、冷たい牢屋の中にいた。

 足元は石の床で、ひんやりとしている。


 ……また、これか。次は一体、何が来るんだ?

 まあ今回も捕まってるし、いい予感は全くしないが。


 いつもの如く、手足には自由を奪う錠。

 俺は再三に渡る夢の世界の出現に、もはや驚くことはなく、ただ時間が過ぎるのを待つ。


 


 ——すると、牢屋の扉がガチャリと音を立て、ゆっくりと開いていく。

 

 しかしそこには、いつもの黒甲冑男の他に何者かがいた。

 暗闇に光る装飾を備え、真っ黒なローブに身を包んだ白髪の男。


 暗い上に、目が霞んでいる俺にはそれしか確認できなかったが、その男は不敵な笑みを浮かべながらこちらに何かを話していた。


 疲労困憊で、相変わらず会話の内容が頭に入らなかった俺だが、男は目の前にある物を投げよこした。


 ——そこにあったのは、丸く青白い“何か”。

 ぼやけた視界で輪郭を追ううちに、鼻、口……そして目が形を結ぶ。

 それは……。



 ——男の生首だった。



 げぇぇーッ! く、首ぃ!?


 さらに俺の心の衝撃と同時に、耳元から脳の奥まで女性らしき叫び声が響き渡る。


「——キャアアーっ!」


 うわっ!? 今度は何だ……!

 まさか、俺の専売特許だと思っていたが、俺にも天の声が聞こえるって言うのか!?


 あたりを見ても女性の姿なんてなかったぞ?

 いや、それよりも…‥胸が……。


 呼吸が乱れ、胸の奥が締めつけられる。

 ……いや、痛みというより、胸の奥が重く沈むような感覚だった。


 この感覚、覚えがある。

 大切な人を失った、あの日と同じだ。


 ——そう、それは深い悲しみ。


 なぜか、目の前に転がった男の首を見ていると悲しみが溢れ、涙がとまらない。


 俺の体は、胸に空いた穴を埋めるように、その首を抱き抱えていた。


 

 くそぉ……どうなってんだ?

 苦しいよ……母さん。




 すると——。




『——カガミさん!』


(はっ!?)


 俺は再び、ラキの声で現実に戻された。

 気がつくと周りはいつもの宿屋。彼女は俺を見つめ、心配している様子。


(ここは……?)


『宿屋ですよ。もうっ! ボケちゃったんですか?』


 そうだ、今朝マルクが、二人と共に戦うことを決意し、作戦の内容を話した後宿屋に戻ったんだった。


 見慣れた景色に安心する俺だったが、先ほどの夢の余韻が胸に残る。

 

 ——俺の体は変になっちまったのか……?

 何度も何度もあんな夢を……やっぱり、何かおかしいぞ。


『カガミさん。さっき、母さんって……』


 あまりの苦しさに母の名を呼んだ俺だったが、この子に聞かれていたらしい。

 全く、恥ずかしい話だ。


(気にするな、忘れてくれ)


『……むむむ、えいっ!』


 いつも通りの感じで俺は答えたが、ラキは俺を思い切り抱きしめた。


(何を……!?)


 彼女はゆらゆらと体を揺らしながら、目を瞑り呟く。


『泣いてるルキを慰める時、これが一番効いたので』


(ラキ……)


 やはりラキには、何も隠せない。

 平静を装ってはいても、彼女は俺の中の深い悲しみをすぐに見抜いていたんだ。


『どうです? あったかいですか?』


(はは……よく、わからないや)


 体温を感じない今の俺には、温もりなんてのはよくわからなかった。


 でも、ラキの気持ちは心底嬉しかったよ……。

 ありがとうな——ラキ。



 ——次の日、早速マルクは一人で王宮に足を運び、騎士長マールに、二人の参列の許可を申し出ていた。


「ルミナさんとルキくんを? また、どうして急に?」


「二人は僕の仲間だ。信頼もできるし二人も共に戦うことを望んでいる。……だめだろうか?」


 マールは少し考えた後、すぐに口を開く。


「——かまいませんよ。お二人の事なら、私たち兵士一同も信頼を置いていますから」


 目を見張る成長を遂げ、バルナ兵たちと切磋琢磨するルキ。

 傷ついた兵に寄り添い、優しく魔法で癒すルミナ。

 皆と打ち解け、信頼を得ていた二人の参加に、マールはあっさりと承諾してくれた。


「もしもの時は、私がついていますのでご安心を」


 さらに心強い言葉を添えるマール。

 バルナ王国軍の正式な一員として認められた二人も、計画に向け、ますます訓練に励むのだった。



 ——そして、訓練所では。


「ルキぃ! 足引っ張んじゃねえぞ!?」


「へっ! 帝国なんて、俺が全員ぶっとばしてやる!」


 ルキはバルナ兵たちの弟分として、すっかり馴染んでいる。


「——いざとなったら、私がルミナ殿をお守りしますから!」


「いやいや! ルミナ殿は俺が!」


「……はは、ありがと」


 戦場に出るルミナを真っ先に守る意を表し、彼女の周りに群がる兵士。


 今日も訓練所には、人々の笑顔が絶える事はなかった。


『——皆さん張り切ってますね!』


 二人の奮闘を見ながらますますやる気になるラキだったが、一つの疑問を俺に投げかけた。


『ところで……カガミさんって、今回の作戦にどう関わるつもりなんですか? 王様やマールさんに、名乗ったりは……?』


 最もな質問だな。


(俺なんか、生きてる人からしたら眉唾物だからな。今言っても混乱を招くだけだろう)


 俺の存在を信じてもらうには時間がかかる。下手に名乗れば、不信を招くだけだ。

 だから俺は、信頼できるマルクたちにのみ伝えた。

 ——帝国の奥底を知る俺にしかできない“秘策”を。


 かつての俺なら、仲間の誰かが死んでも“物語の都合“として片付けていただろう。

 だが——ラキは違った。


 あの子は、最後まで伝えられなかったんだ。

 血に濡れながら何度も口を動かして……結局、言葉にならないまま消えていった。


 伝えたいことを抱えたまま死んでいく姿が、俺はどうしようもなく悔しかったんだ。


(もう二度と、あんな思いはさせたくない……)


 俺は小さく呟いた。

 

 ——こうして、ようやくこの世界の戦いに、真正面から関わっていくことを決意するカガミなのだった。

後は計画に向けて進むだけ!

ですが第二章はあと1話……。

短めなのでもう少しだけお付き合いくださいm(_ _)m


お次は金曜日!

では!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
変わるか変わらないか!?もうどっちに行ったとしても面白さは安定しています! そして神様の夢は…?ラキちゃんいい子だ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ