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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
第二章 決意と共に
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第19話 光速剣の男

また変な夢??

この辺からマルクの事を少し掘り下げていきますよ。


光速剣の男


どうぞ。

 流れで暗殺計画の事をラキに話してしまったが、俺はまだ悩んでいた。

 何も知らず、打倒帝国に燃える彼女。

 しかし、この計画はおそらく失敗する。


 このまま物語通りに事が進めば、バルナ王国は滅びてしまう運命にあるのだ。


 ——しかし、一つだけ希望もある。

 アリステラ死亡など、他にも多くの誤った物語が進行している以上、この計画が成功するという違った結末を迎えるかも知れない。

 

 だがその保証もないし、できる事ならあいつらを危険な目に合わせたくないというのが、俺の本音だ。

 ここはやはり、皆にわかってもらって、この計画を中止するべきだろうか。

 しかし、こんな突拍子もない話を信じてもらえるとは思えない。


 頭の中で、様々な可能性を巡らせていると、突然——。


(……!?)


 ——何かに意識を持っていかれ、目の前の景色がガラリと変わった。


 ……あれ? どういう事だ?


 俺は、薄暗い地下牢のような場所にいた。そして手足を見ると、鎖に繋がれ自由を奪われている。


 はぁ、またこれか……。

 この夢——ちゃんと感覚があって痛みとか感じるから嫌なんだよなぁ〜。


 突然の場面転換に一瞬驚いた俺だったが、以前にも味わった夢の感覚を思い出し、早く終われと心の中でため息を吐く。


 牢の外を見ていると、奥から一人の兵がやってくる。


「お目覚めのようだな——」

 例の如く、黒の甲冑である。


 またこいつらか……。てかお目覚めというかこっちは夢を見てんだよ。

 自由がなく感覚だけがある、こんな夢聞いたこともないけどな。


 相変わらず言葉を発することはできず、黒甲冑の男は何かを持ってこちらに近づいてきた。


「……——!?」


 男は指差し、何やらしゃべっているがよく聞き取れない。

 そして次に、その男は持っていた鞭で、俺を思い切り引っ叩く!


 パァン!!!


 ——痛ぁい!!なんだ!?


 激しい痛みと共に、俺の体は身を翻す。

 だが男は、容赦なくそれを続けた。


 パァン!!!

 ……あうっ!


 パァン!!!

 ……痛い!


 パァン!!!

 ……やめて!


 パァン!!!

 …‥.ラキぃ!



『——カガミさん!』


(ひぃっ!?……っ!?)


 ——俺の名を呼ぶその声に、ようやく現実に戻ってこれた。

 辺りを見回すと、さっきまでいた宿屋の廊下。

 突然の俺の悲鳴に、心配そうにこちらを見つめるラキ。


『……どうしたんですかカガミさん? 急に黙ったと思ったら今度は痛がったりして……』


(何か、変な夢が……)

 俺は例の夢から覚め、ただ呆然とする。


『夢ですか……。しかし、あのカガミさんがあんなに情けない声を出すなんて……むふふ』

 何か弱みの様なものを握った気になっているラキは、ニヤニヤしている。


(な、何を嬉しそうに……こっちは大変だったんだぞ!)


『私がそばにいますから好きなだけ甘えてくださいね。ん〜、よしよし』

 そしてラキは、子供をあやす様に、俺のエギルを撫で回す。


(ふんっ!)


 子供扱いを受けた事に腹を立て、そっぽを向く俺だったが、内心は少し安心していた。


 ラキはきっと——気づいていたのだろう。

 不安が重なり、一人の夜が辛かった俺の気持ちに……。



 ——早朝、マルクは再び、寝静まっている二人を置いて王宮に向かう。


『おや? マルクさんは一人でお出かけですか?』


 前を一人で横切るマルクを目で追いながら、俺に問う。


(ああ、マルクは例の計画の作戦会議に行くつもりだ……二人に内緒でな)


『内緒で? 何か訳ありのようですね……』


(とにかく、俺たちもこっそり参加させてもらおう)


『はい!』


 俺とラキは、秘密裏に行われる作戦会議に堂々と潜入し、計画内容を盗み聞きすることにした。




 ——王宮内のとある個室。

 国王とマールとマルクの三人が、計画の詳細を話し合う中、こっそりと二つのエギルが参列していた。


「——帝国との偽りの同盟条約を口実に、皇帝をこの地へと招く予定だ」

 国王は、計画実行の流れを説明する。


「皇帝を討つには、その瞬間よりほかにない——」


 暗殺計画の事を、国王の口から始めて聞いたラキは、改めて驚いた。


『やっぱり……暗殺計画って本当なんですね!?』


(だから、言っただろう……)

 俺は三人に声が漏れないよう、最小限のひそひそ声で話す。


「ただし、問題はその実行手段です」

 次に、マールが言葉を継いだ。


「おそらく、皇帝の警備は厳重を極め、兵を多く配備すれば逆に不審を招く。ですが、少人数では任務の成功は見込めません——」

 

 良い実行手段を決めあぐねるマール、しばし沈黙が流れる。


『むむむ……私たちが後ろから襲えたら簡単なのですが』


(お前なぁ……昨日から過激発言が酷くなってるぞ)

 何もできない俺たちがいくら考えたって意味がないが、ラキは必死に考えていた。



 ——するとマルクは、その重たい空気を断ち切るように、静かに口を開く。


「……僕がやります。僕ひとりで、必ず皇帝を仕留めてみせる」

 彼の自信のある物言いに、国王は問う。


「策は——あるのか?」


「はい。儀式の場には、少数の兵士を離れた位置に配備するだけでかまいません。皇帝に油断させるためです。その中に、僕も鎧を被って紛れ込みます。そして……一瞬の隙を突いて、皇帝を討つ」


 彼の提案を聞いた国王だったが、即座に首を振った。


「あの距離では無理だ。剣を抜く暇もあるまい」


「——可能かもしれません」

 すると今度は、マールが口を開いた。


「マルクさんは“光速剣”と呼ばれる男です。剣速と反射は、常人の域を遥かに超えている」

 マルクの大陸での噂を聞き、作戦の成功に可能性を感じていたマール。

 それに同調する様に、ラキが答える。


『確かに、マルクさんってたまに、見えないぐらい早い動きしますもんね!』

 おお、よく見ているな。

 ラキの言う通りでマルクの得意とする技、それは光速剣と呼ばれる目にも止まらぬ剣だった。


 少し無茶のある作戦に、国王は一人思い悩むが、マルクはある言葉によりその背中を押す。


「——僕の命なんて、とっくに捨てたものです。大丈夫。そう簡単にはやられません」


 命を捨てる——。そう言い放った彼の目からは、確かな覚悟が感じられた。


 一度は重く沈黙していた空気だったが、その覚悟を受け止めたマールは、マルクに応える。


「——マルクさんがやってくれると言うならば、我々も命をかけましょう」


 他国の地にて、共に戦うことを決意してくれたマルクに、深々と頭を下げるマール。

 彼もまた、命をかけ戦う事を決意した。


「既に隣国ギルバディア王国の援軍要請も検討しています。全面戦争となりましても、劣勢にはなりません。どうか、ご安心を」


 光速剣の異名を持つアリヴェルの騎士、彼の後ろを守るのはバルナ王国と隣国ギルバディア。

 皇帝暗殺計画は、マルクを中心とした作戦で進められる事となった。


「期待しているぞ……マルク殿。では私は少し休ませてもらいたいからこれで……」


 疲れていたのか、国王は席を外し——今回の会議は早めに終了した。


 ——マールは訓練所の方に足を運び、マルクはそのまま暗殺計画が行われる“王の間”へと足を運んでいった。

 俺はマルクの同行が気になり、移動するままについていく事に。


(ラキ。マルクと二人で話がしたいんだが、引っ込めてもいいか?)


 ラキに席を外すよう聞いた俺だったが、彼女は食い気味に答えた。


『——それなら私、出かけてきてもいいですか? 色々と気になることがあるので』


(ん? ああ、大丈夫だ。また宿で落ち合おう)


『はい!』


 用事があると言う彼女はそのまま、扉の方へと飛んでいった。




 ——王の間。

 マルクは一人、何かを測るかのように、目を瞑ったまま剣を握っている。

「……」


 やがて、剣を握る力は強くなり彼の表情は強張っていく。

 何かを思い出して、内なる何かを吐き出しているかの様に……。


 少し空気がピリついた王の間だったが、俺は意を決してマルクに話しかけてみた——。


(……マルク)


「……っ!?」


 すると——そこにいたはずのマルクの姿が、一瞬にして消えてしまった。


 え?——どこにいったんだ!?


「……天の声、か?」


 気がつくとマルクは俺の背後で、剣を構えていた。

 俺の声に反応した途端に……まるで見えなかった。


(あ、ああ。よく俺の“場所”がわかったな……)


 マルクの剣先は、寸分狂わず俺のエギルの場所を捉えていた。

 極限まで研ぎ澄まされたマルクには、俺の気配がわかったのだろうか?


「何か用かい?」


 剣をしまい、いつもの表情に戻ったマルクは俺に問うが、間髪入れずに俺は答えた。


(暗殺計画の事だよ)


「はぁ……そんなことまで知っているんだね」


(もちろん知っている。俺はこの物語を作った本人だと言っただろう?)


「ふっ、あいかわらず、君の話は面白いな」


 面白い……呑気なやつだ。

 計画の事も全然驚かないしこの様子だと、マルクはまだ俺がこの物語の全てを知る者だと信じていない様だな。


(マルク。俺はお前にどうしても言いたい事があって話しかけた)


「……悪いけど、今は忙しい。話し相手なら他を当たってくれ」


 今はただの話し相手程度にしか思っていない天の声に、背を向け立ち去ろうとするマルク。


 だが……。


 その足を止めるべく、俺はついにある真実を突きつけた——。




(その計画——失敗するぞ)



「……なに?」



 失敗……聞き捨てならないその言葉に立ち止まったマルクは、再び王の間の空気を凍りつかせた——。

流石のマルクも怒るかなぁ〜

でもこのまま黙っていられないカガミでした。


お次は火曜日!

お楽しみに〜

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