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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
第二章 決意と共に
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第15話 鏡に映る白銀

キャー!

女の子のこう言うネガティブ発言、大好物なんですよ!

……失礼。


鏡に映る白銀


どうぞ。

 何もない部屋で散々の愚痴を吐いた悲劇のヒロイン、ルミナ。

 力んでいた彼女も、肩の力を抜き寝床へと近づいていく。

「スッキリしたわ。……ありがとう、おやすみ」


 彼女はそう言い残し、俺は扉を開けずにスッと部屋を出ていった。

 こちらこそ聞いてくれてありがとな。

 こんな形で存在している俺の声を聞いてくれるだけで、すごく嬉しいよ。

 すると……。

『カガミさん!』


 ルキ達の部屋からスッと出てきたラキと、廊下で鉢合わせになった。

 長椅子がポツポツと並ぶ広い廊下。

 ラキはそこに腰掛けて、早速おしゃべりを始める。


『聞いてくださいよ! 私マルクさんの初恋の話聞いちゃいました!』


(初恋? ああ、話したのか)


 なんでも向こうの部屋でなぜかマルクは、盗み聞きしていたラキとルキ、に自分の初恋の話をしていたらしいが……。


『聞きたいですか? マルクさんの初恋! 聞きたいですか!?』

 興奮が冷めやらぬラキは両拳を握り、話したそうに目を輝かせる。


(……マルクの初恋ね、悪いが今度にしてくれ)


『まあまあ聞いてくださいよ。あれはマルクさんの幼少期の事でし——。』


 引っ込め。

 パッ!!!


 すまんけど、今は一人で考えたいんだ。


 俺は早めにラキを引っ込めて、一人で夜を過ごした。



 ——翌朝、三人はバルナ国王より王宮で催される宴への招待を受けていた。

 アリヴェルの騎士様マルクと、その客人をもてなす為だという。


 前夜の気まずさを引きずっているのか、マルクとルミナは宴の時間まで互いに目を合わせなかった。


「——なんで俺までこんな服着なきゃいけないんだよ……」


 宴の準備は速やかに執り行われ、大広間には華やかな礼服に袖を通し、慣れない歩き方にぎこちなく足を運ぶルキの姿。

 一方マルクはいつも通りの落ち着きで、バルナ王国の要人達と挨拶を交わしながら談笑している。


 たまにキョロキョロと周りを見るマルク、そこにはまだ来ぬルミナを探している様子もあった。


 ——ラキ!


 ポンっ!!!


 俺は見かねて、昨日から引っ込めていたラキを呼び出した。


(ラキ。お前に頼みがある——)

 俺はラキに頼み事をしようとしたが……。


『……カガミさんなんて、知りません』


 話を遮り、自分を一晩中引っ込めていた俺に、ラキは少し怒っていた。


(昨日は悪かったよ。ちょっと頼みたい事があるんだけど駄目かな?)


 ラキは、目を細めながら俺の方を横目で見ていた。


『どうしようかな〜』


(怒るなよぉ、ラキにしか頼めないんだ)


 俺は下手に出て頼むが、ラキは怒りは収まらない。


『結局私は、カガミさんにとっては都合のいい女ですよ〜』


 意外に根に持つんだな……。

 ふふ、こうなったらラキの喜ぶ情報を与えてやろう。


(実はな、マルクとルミナを……くっつけようと思っているんだ……)


 それを聞いた途端ラキは、パッと目を見開きこちらに近づいた。


『ルミナさん達を!? それ、おもしろそうですね!』


 さっきまでのやる気とは裏腹にラキは乗り気になった。

 ふぅ……。

 とりあえずこれで、協力してくれそうだ。

 まあいずれくっつくであろう二人が、少し心配だから軽く手助けする程度だがな。


(宴前のルミナに一言声をかけたくてな、まずラキが様子を見にいってきてくれ)


『私が? いつもみたいにビュンって飛んでいったらいいのでは?』


 俺は少し小声になり、彼女に説明する。


(ルミナは今、お着替え中の可能性もあるからな……。俺が行って何かの事故が起きたら大変だ。だから着替えが終わった頃に俺を呼んで欲しい)


『なるほど! すけべなカガミさんにしては考えましたね』


(俺が本当にスケベだったらいちいちお前に相談しないわ! とにかく頼んだぞ)


『了解しました!』


 ラキはルミナを探し、飛んでいった。


 さてと、この間に……。


 俺は、隅で一人になっている鈍感な最強主人公様に目を向けた。


 一応、声でもかけとくか——。


 俺はマルクに、ゆっくり近づいた。


(……よう、マルク)


「……!? なんだ君か……」

 

 待っていた何かを見つけたように驚き、壁にもたれかかった背中を離す。


(……今、何を考えているか当ててやる。ズバリ、ルミナの事だろう?)


 少し黙った後、落ち着いたフリをしたマルクは、再び壁にもたれかかる。


「……別に、いいじゃないか」


 間を置いたマルクは、少し恥ずかしそうに答えた。


(珍しいじゃないか、マルクがルミナの事でうろたえるなんて……どういう心境の変化だ?)


「べ、別にうろたえてなんか……いない!」


 静かに怒鳴るこの反応を見ると、マルクもやはりルミナの事を思っているんだな。

 最強主人公だと思っていが、こうも図星を突いてしまえば可愛いもんだな。愉快愉快。


「さっきから、君は一体何が言いたいんだ?」


 いつになく感情的な彼に、俺は答えた。


(わかってると思うからあまり言わないが、ルミナの気持ちに気づいてやれ。あの子は今、色々と苦しんでいるぞ……)


「……わかっているよ。その事について昨日ルキに叱られたばかりだからな」

 

 本当にわかっているのだろうか……?

 

(そうか……とにかく俺は伝えたからな? あまり先延ばしにするんじゃないぞ?)


「……うん」


 ——やがて豪華な料理が並べられた大広間で賑やかな祝宴が始まり、ルキは早速テーブルの料理に夢中になり、次から次へと口に運び……。


「うんめぇ!」


 上品とは程遠い振る舞いで料理を楽しんでいると、偵察役のラキが戻ってきた。


『カガミさ〜ん』


 どうやら着替えの方は終わったようだな。

 俺は、美味しそうな料理を横目に見るラキを引っ張ってルミナのいる控え室に向かった。



 ——扉を抜けた先は、宴の賑わいとは打って変わった静けさが広がっていた。


「……」


 全ての準備は終わったものの、なかなか宴の会場に足が向かないルミナ。


 昨日はあんなにスッキリしていたのに、またこのテンションに戻ったか……。


(……おい、ラキ)


『はい? なんですか?』


 俺は一度ルミナから離れて、ラキとひそひそ声で話していた。


(昨日の、マルクの初恋の話を聞いたって本当だろうな?)


『ええ。ルミナさんの気持ちに気づかないマルクさんに痺れを切らせたルキが怒って、流れで初恋話になって……』

 ラキは話しながらだんだん赤くなっている。


(その初恋の相手って?)


『その相手ってのが……アリヴェルのお姫様、アリシア様なんです! キャー!』


 うるさいなぁ……。

 マルクの初恋相手を言葉にし、テンションが最高潮まで上がったラキは止まらない。


『切ないですよね、お姫様と騎士様の禁断の恋……その壁の存在が叶わぬ恋心ひさらに火をつけて……くぅー! たまりませんね!』


 全く、当の本人はテンションだだ下がりだというのにこいつと来たら……。


『そんなことより、この初恋話とルミナさんたちをくっつけるのになんの関係があるんですか?』


(……そのうちわかるよ)


 俺は答えを濁し、ラキを黙らせ、ルミナの元へと近づく。


(——よう。昨日までの元気はどうしたんだ?)


「わっ! 来てたの!?」


(とっくに準備は終わってるだろう?)


 昨日一度は元気を取り戻したが、まだ何かを悩んでいるルミナ。


「やっぱり私。ダメみたい……」


(ダメ? 何がだ?)


 自信をなくした様子で、今にも泣きそうな表情で彼女は言う。


「……会場には大人の女性がたくさんいるもの……だってさっきも——」

 控え室ですれ違う綺麗な女性方と自分を比べ、会場入りが怖くなったようだ。

 

(……そりゃあ宴だからな。みんなおしゃれはするだろう)


「そんな人達と一緒に並んでても、マルクは私の事なんか……」


 はぁ……何もかもマイナスに考えているな。

 このままここで足止めを喰らうわけにはいかない。

 

 こうなったら——。


(マルクのやつ……ルミナの事、探してたぞ?)


「え? どうして……」


(昨日、ルキに怒られたらしくてさ。ルミナの気持ちをわかってやれ! ってな)


「ルキが!? なんでそんな余計な事!」


 みるみるうちに赤くなるルミナ。


(俺はそうは思わないぞ。それにルミナの話をしたら……マルクのやつ、赤くなってた……)


「マルクが!?……本当に?」


 本来の物語では、こんなところでこの事実は知る由もなく、なんとか勇気を出してルミナは会場いりするはずなんだがな。

 この後ルミナが自分から歩き出す保証もないし、ちょっとだけサービスしてやろう。


「……」


 俺の言った情報に、一瞬は浮かれながらもまた下を向くルミナ。

 もうひと推し。


(ルミナ。こっちを見ろ)


「……?」


 今までとは違う場所から聞こえた声の方向に目を向け、覗き込むルミナ。


「……鏡?」


 鏡に映るのは、白銀のドレスに身を包み、少し戸惑いながらも前を向こうとする少女。

 明るい銀髪が肩にかかり、瞳はまだ不安げだけれど、その奥には確かな炎が宿っている。


(今のルミナは誰よりも綺麗だぞ? 仮にも神様の俺が言うんだ。間違いない)


「私……」


 ルミナは、天の声に言われるままに、鏡に映る自分を見つめ、——少し笑った。


「……ふふっ。ありがとう神様」


 以前のルミナの暗い表情は消え、今あるのは希望に満ちた女神の面影だけだった。


「じゃあ、行ってくる……」


 そう言い残し、やっとの思いで控え室を後にするルミナだった。


『——カガミさんにしては、いいこと言いますね?』


(一言余計だよ!)

 俺はワクワクを抑えられないラキを連れ、ルミナの少し後ろをついていった。

初恋話のくだりなどは後々明かされますよ〜

がんばれルミナ!


次は火曜日会いましょう!

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― 新着の感想 ―
原作をより良い方向にもっていこうと頑張る神様カッコいい! ラキちゃんの暴走楽しみにしてますよ!
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