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カフェ店員、沼にはまる

作者: 白花 舞雪

閲覧いただきまして、ありがとうございます。

最後までお付き合いいただけますと幸いです。

初めましての第一印象は、すごい仕事できそうな美人な女性。しかし、それは次の一言で一気に崩れた。


「お、おはようございます、かっこいいですね……!あ、違う、ええと、店内でおすすめのコーヒーホットとお菓子ください!」


俺の顔を見た瞬間、顔を赤らめて、すごく動揺した彼女。

席座った後もお水を少しこぼしてしまったりしていた。とにかく、慌ただしそうな女性だった。

俺がオーダーされたコーヒーとクッキーを持っていくと、急に弁明を始め出した。


「すごく好きな……憧れの人に、その、店員さんが似てて、びっくりして……」


そう言って、それからハッとしたように、早口で捲し立てるように発言を続けた。


「あ、ごめんなさい、知らない女の人からそんなこと言われたら怖いかもですよね、他意はなくて、その本当にここのコーヒーの香りに誘われて入っただけで!」


その慌てぶりに加えて、逆に怪しいじゃんって思うような言葉羅列してたけど、その人が必死すぎて、申し訳なさそうにしてて、なんとなく俺に危害を与えるヤバいやつではないんだなって思った。


その後、しばらくして、ようやく落ち着いたのか、俺が勧めたコーヒーとクッキーを口にしたら、本当に美味しそうに食べ進めてて、なんだか俺も嬉しくなったのを覚えている。


ここは、製菓学校時代に仲良くなった泰輔さんが晩年に趣味で始めたカフェ。

マスターである泰輔さんが、たまに杖を使うくらい足腰を悪くしていたのを知ってたから、卒業のタイミングで俺もデザート担当として働くようになった。バリスタとしてはまだまだ修行中。

だからか、この店は、俺が公式SNSを作っても、なかなかカフェに困らないこの地域では、閑古鳥が鳴いていることもしばしばあった。

だから、なおさら、俺が淹れたコーヒーと俺が作ったお菓子を美味しそうに口にする姿は、嬉しかったんだ。


それから彼女……莉子さんは、週一くらいで、ちょこちょこ来てくれるようになった。

二回目に店に来た時、扉を開けてすぐレジに居た俺と目が合って、困ったように、気まずそうに苦笑いしてきた莉子さん。


「ここのコーヒーとお菓子が気に入っちゃって……」


照れくさそうに、恥ずかしそうに言うのがなんだか妙に可愛らしく思えてしまった。


足繁く通う莉子さんに対し、俺も他愛もない話を他のお客様が少ない時にするようになった。

俺が普段生活してるだけでは会えないような人。

年も違うし、今まで歩んだ人生も全く異なる。

だからこそ、興味が湧いた。

話題はいろいろで、流行ってるもので、お互いが関心あるものとか。

たまに、意外なところで共通の趣味を見つけたり、俺とは違う考え方に驚いたりもした。

コーヒーとお菓子を運ぶのと合わせて、少し話をするようにしていた。

莉子さんはいつもニコニコしていて、話しやすくて、ついつい他愛もない話をしてしまう。

それだけじゃない、いつも、莉子さんがレジで俺のおすすめを聞いてくれて、俺のおすすめをそのまま選んでくれるのも嬉しくて。


でも、そんな関係を続けて行ったら、俺は段々となんだか変になってきた気がする。

ところどころ、自分でも何言ってんだろって会話が繰り広げられててビビる。

しかも、大体の発言に対して始めたの俺だし。

あの子も俺のこと推し!タメ口で接して!みたいな扱いしてくるからなんだか調子が狂うのかな。


「そういえば、最初、好きな、憧れの人に俺が似てるって言ってたけど、それってどういう関係の人?片思いしてる相手…とか?へえ、こういうのが好きなんだ。俺、似てる?いや、推しよりカッコいいとかいうお世辞は大丈夫だから。」


「指名制とかそういうシステムないから。ここ、普通のカフェなんで。冗談?ならいいけど。本日のおすすめ?あ、これは俺が作ったシフォンケーキ。あとコーヒーもそれに合わせて選んだ……即決なの笑う。いつもありがとね。」


「へえ、彼氏と別れたんだ。見る目ないね、こんな素敵な人、手放すだなんて。慰めてないよ、事実を言っただけ。後悔はしてない?ならいいじゃん。もっと莉子さんを幸せにしてくれる男いると思う。」


彼氏と別れたとかいう話をした時の俺は、内心めちゃくちゃモヤモヤしてた。俺のこと、会う度に、可愛いカッコいい推し最推しとか言ってるくせに付き合ってた男がいたとか意味わかんないって感じで……あぁ、もう!


「ねえ、莉子さんって俺のこと推しって言うよね?推し活って何?なんか俺と莉子さんの距離感って不思議だよね…なんかすごい近いはずなのに遠い。何その拝むようなポーズ。推しが尊すぎておかしくなりそうって……俺までおかしくなりそうだよ……ううん、なんでもない、最後のは聞こえてないならそれでいい。」


「俺に対する好きとその今まで付き合ってた男に対する好きって一緒なの?どっちも癪だけど、付き合ってた男にしか見せない顔とか反応してるならムカつく。ごめん、最近俺変なことばっか言うね。忘れて。」


(はぁ……最近本当、俺やばすぎ。特に莉子さんに対して。莉子さん、たまに俺の返しにぽかんとしてるし、マスターもたまに苦笑いしてる時あるもんな。店の評判落としかねないぞ、この接客。今週、まだ莉子さん来てないな…莉子さんが急に来なくなったら、俺はどうすることもできない。仕事が忙しい?旅行とか?風邪とか引いてないかな。それとも、ほかの男ができたとか……?)


俺が悶々と考えていると、窓越しに莉子さんが知らない男と歩いているのを見た。

思わず、扉を開けてしまいそうになるが、なんとか踏みとどまった。


(いやいや、俺と莉子さんは店員と客でカフェでだけの関係だから。外を出て、互いのプライベートに干渉するのはNGだろ…つか誰だよ、あいつ!)


「こら、玲央くん。莉子さんが最近来てくれてないからって拗ねてないで、焙煎して。」


「マスター!変なこと言わないでください!拗ねてないです!俺!でも、仕事怠ってたのはすみません!今やります!」


数日後、ようやく来てくれた莉子さんに、冷静になれるはずもなく、相変わらずの調子で聞いてしまう。


「はい、こちらが本日のコーヒーとお菓子です……莉子さん、最近どうしてたの?あんまり来てくれてなかったし、まさか、他のカフェに浮気?そんな全力で否定しなくても、冗談だよ。ああ、弟さんが受験でこっち来てて案内してたんだ。そっか……なんだよ。拗ねてないってば。あぁ、もう、撫でたそうにしないっ!」


また、別の日。いつもよりおめかしした莉子さんがやってきた。化粧もヘアスタイルも服装もなんかいつもと雰囲気違う。

なんで?デートとか?と、またモヤモヤしてしまう。


「今日、なんかいつもと雰囲気違う?ああ、結婚式の参列の帰りか…そっか。俺、まだ結婚式参列とか行ったことなくて。莉子さんも初めて行ったんだ。どうだった?そう、楽しそうで良かった。莉子さんの雰囲気?もちろん、良い意味で言ったよ。変じゃない、綺麗だと思った。え、なに照れてんの…照れないでよ!こっちまで恥ずかしくなるじゃん!」


季節は変わり、バレンタインデーで今日はチョコ系のお菓子を用意した。

日本だと女の子が男の子にチョコを渡すとかいう文化はあるけど、俺が店員で莉子さんはお客様だもんね!ないない!と前日から俺は言い聞かせてた。


マスターはたまに生暖かい目でこちらを見てくる……

心の声、聞こえてるのかな。

あー、恥ずかしいなぁ、俺。


バレンタイン当日、莉子さんは、いつもの無邪気な笑みで、俺に最近、流行りのお菓子屋さんの紙袋を渡してくれた。

俺は変にテンションが上がらないよう、平静を装った。


「今日、バレンタインだからって、これ、いつもお世話になってるお礼?そんな気にしなくてもいいのに……マスターと一緒に食べて?……うん、わかった、ありがとう。今日のお店のお菓子はチョコレート系多いから良かったら食べてって。」


莉子さんが帰り、マスターに莉子さんからもらったお菓子を渡そうとしたら返された。


「いいんだよ、玲央くん。これは玲央くん1人で食べなよ。さっき、莉子さんが、みんなでって言ってたとき、落ち込んでたけど、僕は莉子さんとそんなに接点ないし、僕が居た手前、気を遣ってくれただけで、実質、玲央くん宛だと思うよ。」


「…マスター、変なこと言わないでください。落ち込んでないですし、変な気を遣わないでください!シェアして食べましょうって!」


「いいんだよ、玲央くん。それに今、僕、糖質控えてるから……」


「昨日まで毎日、俺の試作、残さず、全部食べてたじゃないですか!」


そんなやりとりをして、結局マスターに押し切られるように受け取った莉子さんからのお菓子。

俺はそれを食べながら、ホワイトデーのお返しのことを考えていた。


1ヶ月後。


「この前のバレンタインのお返しの意味でサービスでクッキー。お店にはまだ出してない新作フレーバー。口に合うといいんだけど。これ?うん、俺が作ったよ。可愛い形を成形してる俺を想像して笑ってんの?変なの……」


なんか、たまに莉子さんは変なところでツボる。

まぁ、そんなところも可愛いのだけれど。


そして、季節は変わり、桜も咲き始め、春らしい季節になってきた頃。


「スタンプカード作ったんだ。よかったらどうぞ。どう?そのカード……そっか、良かった。なにニヤニヤしてるの。『真面目で可愛いカード作ってるお客様想いのところカッコいい?』もう……また、すぐそういうこと言うんだから。カード貯めたらデザート1つサービス。お得でしょ。莉子さんならすぐ貯まりそうだよね。」


俺がそう言うと、莉子さんの表情が急に曇った。いつものように、喜んでくれると思ったのに。


「なにかあったの?『気づいちゃった?』って見りゃわかるよ。いつもと違うもん。え……転勤?そっか、どこに?確かにその地域だと、国内だけど、飛行機使ってしか行けないし、結構移動距離あるね。なかなかこっち来られないのか…そっか…寂しいな。ああ、お店の公式SNSね、うん。これで本日のメニューとか写真で出してる。良かったらフォローして。『いいね、コメント毎日する?』……ありがとう、待ってる。」


急な別れに俺は全身から血の気が引くような、頭がくらくらするような、今まで感じたことがない感覚に陥った。

そんな俺を心配して、閉店作業を終えると、マスターが声をかけてくれた。


「なにもせず、見送っちゃって良かったのかい?」


「いいんです、プライベートのSNS交換は公私混同だし、せっかく常連で居心地良いと思ってきてくれてたのに、それで嫌な思いしたら嫌だし……せめて、公式SNSでも繋がってれば、存在は感じてられるし……」


そうやって、ぎりぎりなんとか、まともなフリをして数ヶ月。

SNSは、投稿するたびに、莉子さんからの反応は来るけれど、足りない。

思っていた以上に、めちゃくちゃ寂しい。

気がつかないフリをしていたけれど、やっぱり俺、莉子さんに惹かれてたんだなぁ。


休憩時間中、スマホの通知音がして、公式SNSの方にDMがきてるのを確認する。

まさか、と思い、はやる気持ちを抑えながら、メッセージを開封する。


『こんにちは、莉子です。今度の三連休に久しぶりにそちらに伺えそうです!定休日被ってないと思ってますがやってますか?ぜひ、またそちらのお店に三連休とも通っちゃおうかなと思い連絡しました!また、せっかくなので、こちらのお土産を買って行こうと思います!リクエストもしあればご遠慮なく!』


この数ヶ月で1番嬉しい出来事だった。

休憩室から出てきた俺の顔見て、マスターもすぐに莉子さんから連絡があったんだってわかったらしい。


『ご無沙汰しております。玲央です。お元気ですか?今度の連休に当店に来てくださるとのこと嬉しいです!三日間とも通常営業です。お心遣いもありがとうございます。ぜひ、莉子さんセレクトでお願いします、と言いたいところですが、お気になさらずで大丈夫ですよ。莉子さんがお好きそうなコーヒーとお菓子を用意してお待ちしております。』


フランクすぎたかな…と返信文を見て思った。

ニマニマと口角が上がるのを感じながら、何度もそのやり取りのDMを見返してしまう。

それだけ俺は浮かれてるんだろうな。


三連休はずっと気もそぞろだった。

ただ、いつものカウンター席は、莉子さんのために、ずっと予約席で開けていた。

結局、莉子さんは三連休全ての日に来てくれた。

お土産は、地元で有名なコーヒーと紅茶とお菓子のセットをくれた。

そして、ずっと前に俺が話して少しハマってると言ったご当地マスコットキャラクターのことを覚えてくれていたらしく、そのキャラクターのストラップも買ってきてくれた。

バレンタインとは違う明らかな俺宛のプレゼント。

マスコットキャラクターがなんだか輝いて見えた。


この三連休、店で出すお菓子は、莉子さんが初来店の時に頼んでたクッキー、莉子さんが好きだと言ってくれたシフォンケーキ、莉子さんがリピートしてくれたバレンタイン時期に期間限定で出していたフォンダンショコラをメニューにしていた。

三連休は莉子さんが特に表情を明るくさせたメニューを選んだ。コーヒーもそれに合うコーヒーを選んだ。

マスターは私情をがっつり挟んだメニュー選択を常連だからと快く許してくれた。

それだけでなく、マスターがさらに気を遣ってくださって、莉子さんがいる時はいつもより少し長めに話す時間を作ってくれるようにしてくれた。


それは待ち侘びていたせいか、とても濃いけど短い時間で……すぐに、莉子さんとのお別れの時間になってしまった。


あまりにも僅かな時間と、次いつ会えるかもわからない不確実性に痺れを切らしていた俺はついに自分で決めた一線を超えてしまった。


三連休の最終日の帰りにスーツケースをお店の玄関までお運びした際に、あわせてこっそり莉子さんにプレゼントを渡した。


「これ、貴重なお休みをウチで長く過ごしてくださって日頃からお世話になってるお礼とお土産のお礼も兼ねて……俺からの心ばかりのものですが……パウンドケーキです。メッセージカードも入ってるので、後ほど見てください。」


あの人は、いつもよりも真剣な俺の態度に少し戸惑っていたようだけれど受け取ってくれた。


手紙には、日頃の感謝を枕詞に書き、それから俺のあの人への想いを綴った。


『いつの間にか、お客様としてだけではなく、莉子さんに特別な感情を抱いておりました。俺は莉子さんが好きです。』


そして、自分のプライベートのSNSのアドレスを書いた。


『受け入れてくれるならSNS交換を、今の関係を続けることが莉子さんにとって良いのであれば、この手紙は忘れてください。捨ててしまっても大丈夫です。』


そう書き足して。


当たり前のように会えていたから、こうやって数ヶ月会えないだけで不安になる。

それでも会いにきてくれたのに、次は来てくれるのか今度はそう不安になった。

これがスマートな渡し方なのか、最善策なのかはわからなかったが、あの人との繋がりがいつ切れるか分からず、耐えきれずに出してしまった。


それからしばらくは公式SNSの反応もなかった。

もちろん、プライベートのSNSも音沙汰ない。


マスターには事前に俺個人として莉子さんに贈り物を送ることは伝えていて、マスターも若い子の恋路を邪魔したくないからとOKしてくださった。

公式SNSの反応がなくなった時は、マスターに謝った。マスターはそれに対して、優しく返してくださった。


「深く気にしなくていいよ。カフェは色んな新しい人と巡り合う場所だから。ここが好きだと思える人が来てくれればいい。」


俺は、莉子さんのこの店に対する居心地を悪くさせてしまっただろうか?マスターの厚意を感じながら、俺はそんなことを考えていた。


数日間はモヤモヤして仕方がなかった。

それでも、過去に戻れたとしても、俺は同じことをしてしまいそうだった。

そのくらい気が付けば俺の方があの人に溺れてた。


もう来ないんだ、そうなんだ、切り替えようと思って、諦めよう諦めようと言い聞かせていた時だった。

1ヶ月くらい経った頃だろうか、プライベートのSNSに誰かがあなたのアカウントを追加しましたという通知が来た。


それは公式SNSで反応していた時と同じアイコンと名前で……


俺は待って諦めようとしてもできなかった莉子さんのメッセージを震えた指で開封した。


『なかなか自分の考えと気持ちを整理するのに時間がかかってごめんなさい。玲央くんが私を好きになってくれたと聞いて、驚きと嬉しさで混乱しました。私が特別だと思っていたあのひとときを玲央くんも特別だと思ってくれていたのかな。私が初対面の時から玲央くん推し!みたいなことを言い続けたことで変に惑わせちゃったかな、とか色々考えてしまって、返信が遅くなりました。玲央くんのパウンドケーキを食べてる時も、そうじゃない時も、この1ヶ月ずっと玲央くんのことを考えていました。努力家で優しくて話も楽しい玲央くん。玲央くんとマスターがいるあのカフェでの時間も思い出していました。私にとって、あのカフェは、もう一つの家のように居心地がよい場所です。好きなお店だからこそ、迷惑な客にならないように頑張ってきたつもりではいたけど、私も玲央くんに惹かれてました。でもこの気持ちにずっと蓋をしていたから、なかなか正直になれずにいて、ここまで返信が遅くなってごめんなさい。

玲央くんと話す時間が美味しいコーヒーと美味しいお菓子だけでなく、むしろそれ以上に楽しみになってきている自分がいたことに気がつきました。だから、私も自分の気持ちに正直になりたいと思いました。私も玲央くんが好きです。』


その莉子さんからのたくさん考えたであろう返信と告白に対する返事を見て、俺は思わず、即返信をした。


『ありがとう、今から会いに行きます。』


普段の俺では考えられない突発的すぎる行動。シフトがたまたま休みだったから?

いや、休みじゃなくても、無理を承知で、マスターに相談して行ったかもしれない。

莉子さんと関わってから、正解を選ぶよりも心の選択を優先したくなるようになった。


返信を待たずに俺はすぐにその日の飛行機のチケットを取って、会いに行った。


空港の出入り口から出て、『空港着いた』ってチャットに連絡をしようと携帯の機内モードを解除しようとした時、声がして、その声のする方を見たら莉子さんがいた。


「返信こなくなって、まさかと思ったら本当に今日来るなんて……」


急いで来たのか、莉子さんはまだ呼吸を整えてた。でも、服装もメイクもいつも以上に可愛い気がする。カフェで会った時と違う雰囲気のスタイル。カフェで会った時よりも何割増しにも可愛く見える。


「だって、居ても立っても居られないじゃん。好きな人と両思いってわかったらさ。」


俺は初めて彼女になった莉子さんを抱きしめた。莉子さんは抱きしめられながら、もう、と小さく声を上げた。


結局、その日は誰にも何も告げずに来たので、空港のフードコートで2人でご飯を食べて、すぐに俺は蜻蛉返りをすることになった。


莉子さんが彼女になったんだったら、これ以上な幸せな旅はない……と思う。

遠距離恋愛でも頑張れる、そう思った。


数ヶ月後、俺と莉子さんとしては、幸いなことに、莉子さんの転勤は一年と短期で終わり、予定よりも早く無事に戻ってきた莉子さん。


こうして、また俺のカフェの楽しみの一つである彼女との時間が戻ってきたのであった。


莉子さんは今もカフェの常連でもある。

マスターの生暖かい目もとい見守られていることを感じながら、俺は彼女に今日もコーヒーとお菓子を運びに行く。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

もしよろしければ、ブックマーク、評価、ご感想などいただけますと、とても励みになります。

よろしくお願いいたします。

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