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第3話

 動く意思を放棄したきみ。さっきまできみにしてはやけに熱かったその身体は、空調に平熱を取り戻して行く。僕はなるべくきみの一時の深い休息を邪魔しない様に体温を確かめてくっついたり、僕のガウンを掛けたり、それからまた離れてくっついて、あのいつもの冷たさが戻ると掛け布団を掛けたり、穏やかにせわしなく。10分か20分、僕はこの時の為に生きている。太宰は「休む」と表現した。僕は眠らずに、そんな虚脱したきみをつぶさに観察して適切に扱う時、休んでいる。そしてついそれを求める自分を苛む。きみは無抵抗だから。それでも僕が少し敏感な部分に触れるときみは「またシたくなったらダメでしょ」と緩慢に制す。そのうち時間切れ。僕はあちこちキスしたり、ほっぺつねったり、尻をぺしんと叩く。そしたらそのうち「起きなきゃなんないか…」ときみが寝返りを打つ。うつ伏せから仰向けになった瞬間、覆い被さり唇塞いでまたふりだしに戻す幻影を僕は無視して、きみより冷めた体温を装い答える。


「もう、時間切れだね」


 それから帰り道、子供たちに昼食を作る為に戻るきみは「子供たちに会いたい?会いたければ、良いよ」と言った。会って欲しいんだろうと思った。それでも僕には自信がまだ無かった。「うんとお金あってさ、みんなで旅行とかん時に、ね?」きみは黙って首肯した。それでもまだふたり、少しでもと、何か買って行こうとしたけど昼時どこも混んでいた。スーパーへ。僕が腰に手を回しても、きみは嬉しそうに受け入れた。四人の子供たちに。それと、猫。きみを煩わせないように。思案、相談、ねぎとろのジャンボパックにきみの好きなはまちの刺身。ローストビーフは猫の為に玉ねぎが乗ってないものを。4,000いくらの買い物。普段はもっと絞らなきゃだね。


「誰かに見られるかも知れないから」


 会う度そこから。でも別れ際、きみの家のすぐそばで、きみはキスして来る。

 ランドリーに買い物。いっぱいな荷物をきみ一人に持たせて僕は帰途に就いた。少し走ると台風の、土砂降りの雨。きみと離れた瞬間から、僕はもうダメだった。それでも僕は思ったんだ。きみの為、きみとまた会う為に、僕は女にモテる男になろう。金も見てくれも壊滅的にダメだけど。YouTubeで勉強しよう。だってきみは女だからさ。それに、心当たりだって少しはあるんだ。僕の絶望に支配された心は、女たちを癒せるんだって。僕はきみや彼女たちに何も求めずに、そのうちすべてを与えるんだ。

 途中疲れて眠った。

 翌朝、警察に捕まった。

 スマホ運転、罰金18000円。しばらくきみに会いに行けないかも知れない。

 そして相変わらず僕は社会のゴミクズだった。

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