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第1話

 すべて失ったみたいに思えてからの余韻を生きていた。

 日々を失って、きみを失って、僕にはまるで何にも無いみたいだった。その惰性を生きていた。その間の僕は、きみに縋ってはそれに嫌気が差し、きみをわざと突き放してはひとりきりの寂しさに震えた。その過程で何もかもをきみにぶつけた。まだ隠し事だってある。それでもそれは隠すべき事であって、まるで「僕以外の誰かが僕を感じる事を望むみたいに」きみに揺るぎない愛情を求め無理難題を吹っかけた。どこかで本当に嫌われて、本当にひとりきりになって、死にたかった。

 それでも最後まで縋っていたもう一つのもの、事業を諦めた時、少し僕の気持ちは変わった。白旗上げて楽になった?いや、過去の呪縛が少しだけ緩んだんだ。そんな頃、きみから会いたいと言われた。何だかんだですれ違って、僕は最後だと思った。きみを忘れて世界を見た。きみしか見てなかった世界にはきみじゃない女が居た。それでお盆に無理して会った。その別れ際、僕は泣いてしまった。怖かった。色んな事があった中で、昨年のお盆に死んでもおかしくない事故に遭った。何故死ねなかったのだろう?と思っていた。ちょうどそれから1年、8月13日だった。ただ1年、きみや事業と同じ様に、僕が生に縋ってるみたいに感じていた。だから僕はきみと別れた帰り道、死ぬかもしれない。そんな恐怖だった。まるで自分が点描画みたいにバラバラだった。きみと居た間だけ、もっと言えばひとつになってる時だけ血液がそれを繋いでいるみたいな気がしていた。それからまたしばらく会えないとわかって、一時の歓びが絶望に華を添えた。でもそのおかげで僕はまた生きてなきゃいけなくなった。永遠におあずけ食らった間抜けな犬みたい、僕は何にも変わらないでずっと待っていた。月日が経つのを。「おいで」ときみの声が掛かるのを。その時間はあまりに長くて、僕は痺れを切らした。きみに催促した。夜中はだめかい?そんなタイミングで土曜のきみの仕事が台風で休みになる事がわかった。

「おいで」と言われた気がした。

 間違いかもしれない。

 気のせいかもしれない。

 けれど僕は何でもやってみたくなっていた。ずっと待っていて、何も起こらなかったから。死ぬまでに。そう長くない。金が無くなりゃ働きゃ良い。時間が無くなりゃ寝なきゃ良い。きみとだけじゃなくて、誰とも何でも。そんな風に思って数日を過ごしていたら、やっぱりきみに会いたかった。きみに無理させてでも。

 台風が近づいていた。

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