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まえがき

 中学生の頃、テレビのロードショーでその映画を観た時、観てはいけない物を観た気がした。そして「一般的には」観てはいけないとされる物を作る人が居る事を知った。水が溜まった校庭に頭から突き刺さった優等生の自殺体の映像が焼きついて、その不完全で素っ気ない描写こそが彼の人物造形や負わせた役割に想像を向かわせ、芸術を見た気がした。


 あれから僕は大人になって、今では息子が高校生。彼らからすれば、あの映画で描かれた誤魔化しに満ちた大人になってしまったかも知れない。

 彼らもまた、台風がこんがらがった日常を一時遮断する事を期待するだろうし、もしかしたらそれがすべてを洗い流し吹き飛ばす事を期待するかもしれない。

 或いは時々台風の最中わざわざ外に出て死ぬ者が或るのは、緩慢な自殺を日常とする者の確率変動かも知れぬとすら思う事がある。


 そんな風に書き出したのは今、台風が過ぎ去りそうだからなんだけれど、何年も、何十年も僕は台風を単なる厄介者として考えていた事に気付いたからだ。災害を待ち焦がれる気持ちなんて、忘れていた。閉じ込められて浮揚する本質に蓋をして生きていた。

 今度の台風は特別だった。

 台風の最中、僕はきみと会ったんだ。僕らは二度目の思春期をともに過ごし始めるのだろうか?ふたりぼっちの台風クラブ。主演は僕ときみ、助演は世間。まださわりを撮ったばかり。その行く末は、台風の進路みたいに気まぐれかもしれないし、温帯低気圧になって消えるかもしれない。

 完成してから上映すべきか?なあに、僕にはいつもの事さ。撮れたぶんだけ少しずつ、僕らの映画を公開しよう。面白かったらお捻りください。ホテル代の足しになります。さあさお立会い。


 それでは上映開始だ。

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