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「コクリコ荘ものがたり」(From up on Poppy-house):陽奈×智流

#記念日にショートショートをNo.47『コクリコ荘ものがたり』(From up on Poppy-house)

作者: しおね ゆこ

2020/11/23(月)勤労感謝の日 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n1600ie/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/ne66e12678278)

【関連作品】

「コクリコ荘ものがたり」シリーズ

 朝、5時に起きる。手早く身支度を整え、軽くストレッチをする。しっかりと目が覚めてきたら、学習机の前に腰掛ける。さて、今日は何をやろうか。英語は休み時間でも出来ると考え、数学の問題集を開く。忘れずに目覚まし時計をセットする。こうしないと、時間が過ぎたことに気がつかないのだ。来年は大学受験だから、勉強は怠れない。

 朝6時。階下に足音を忍ばせて降りていく。洗濯機を回転させる。続いて台所に入り、お弁当の準備をする。お米を炊飯器にセットし、卵焼きを作る。卵焼きを作ったら、今度はウインナーを転がす。お弁当の中身は基本変わらない。ご飯に梅干し、卵焼き、ウインナー、ほうれん草。手際良くお弁当箱に詰めていく。私と、お父さんと、葵と、百合の分。葵と百合は、それぞれ中学3年生と1年生だ。

 匂いにつられて、部屋の隅で寝ていたキャバリアの梅太郎が目を覚まし、私の足元まで歩いて来る。

「おはよう。お散歩、行こうか?」

梅太郎が元気よく、「ワン!」と返事をする。

 火元を確認し、家を出る。梅太郎が坂を駆け下りていく。もう10歳とはいえ、さすがはオスだ。元気が有り余っている。 12月も手前のこの時期は、お散歩で走ってもあまり汗をかかないからちょうどいい。最も、夏の盛りの時期は、梅太郎もうだり、お散歩に行こうとすらしないのだが。

 20分のお散歩を終え、家に戻る。6時40分。まだ誰も起きてはこない。朝食の支度を始める。お湯を沸かしている間、食パンにハムとチーズを載せ、トースターにセットする。束の間の休憩の間、リビングにワイパーを掛ける。ヤカンが喚き、湯沸かしをストップさせる。コーヒーを注ぎ、パンをお皿に載せる。のっそりと、お父さんが起きてくる。

「おはよう。陽奈、いつもすまんな。」

もっさりとした雰囲気のお父さんに、さっき散歩帰りに取ってきた新聞紙とコーヒー,パンを差し出す。

うちには、母はいない。私がまだ小さい頃に、病気で亡くなったのだ。おう、サンキュ、と、お父さんがそれらを受け取る。トースターに再びパンをセットして、ワイパーを片手に家中を駆け回る。2階に行き、寝ている妹たちを叩き起こす。

「姉ちゃんまだ57分や、あと3分……。」

そうモニャモニャと呟く妹たちの布団をひっぺ剥がす。妹たちが目を開けたのを確認して、再び階下に戻る。洗濯機から洗濯物を取り出し、ベランダに出る。干し終わり、台所に戻る。炊き上がったご飯をお弁当箱に詰めていく。食卓に朝食を並べていると、妹たちが降りて来る。入れ違いにお父さんがリビングを出て行く。ニュースを見ながら5分で朝食を流し込み、食器を洗う。

 7時20分。お父さんが出勤し、妹たちが身支度を整え始める。急いでお皿を洗い、歯磨きをする。

 7時30分。妹たちが学校に向かう。中学は私の通う高校とは反対方向にあり、電車を乗り継いで行かなければならない。5分ほど遅れて、家を飛び出す。バスの時刻は7時42分。バス停までは徒歩10分、走れば5分ほどだ。ダッシュでバス停に向かう。私がバス停に着くのと、バスが来るのがほぼ同時だった。バスに乗り込み、後部座席の端に座る。乗車時間は約30分。いつもはこの間に、英単語を覚えたり歴史を暗記したりする。

英単語の本を開く。英単語を目で辿っていく。


 「そろそろ着くよ。」

誰かに肩を揺さぶられて、ハッと目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。手元に本がない。

「落としそうだったから、預かっといた。はい。」

手に本を返される。停留所にバスが着き、吉田くんに続いて降りる。

「吉田くん、いつからバスに乗っていたの?」

智流(さとる)くん、おはよう!」

校門付近まで来ると、制服姿がチラホラと見えてくる。男子の信頼が厚いだけでなく、女子からも人気の高い吉田くんは、テニス部に所属している。並んで歩きながら質問する。

「ひなげし公園前からだよ。」

ひなげし公園は、海と急な坂道がいくつもあるコクリコ町の、中腹部にある公園だ。私たちが住むコクリコ荘は頂上付近にあり、バスのルートは坂道を下り、海の近くにある高校まで続く。

「吉田くん、部活頑張っているものね。」

「僕はただ好きなことをやっているだけだよ。頑張っているのは、遠坂の方だろ。」

「勉強もちゃんとやっているのに、家のこともこなしてバイトもして。ちゃんと寝ているのか?」

吉田くんが顔を覗き込む。学校が終わって一旦家に帰り、夕飯の支度をする。夕飯を済ませ、洗濯物を取り込み、急いでバイトに行く。19時30分から3時間、ファミリーレストランでバイトをし、家に帰る。洗濯物を畳み、風呂を済ませ、24時過ぎにベッドに入る。

「うん、毎日7時間は寝ているよ。」

心配をかけたくなくて、思わず嘘をついてしまった。吉田くんはしばらく私の顔を眺め、

「バーカ。」

と私の頭を叩いた。

「頑張りすぎは身体に障るぞ。」

【登場人物】

○遠坂 陽奈(とおさか ひな/Hina Toosaka):高校2年生

●吉田 智流(よしだ さとる/Satoru Yoshida):高校2年生


◎遠坂家(Toosaka-Ke)

○葵(あおい/Aoi):中学3年生

○百合(ゆり/Yuri):中学1年生

●お父さん:会社員

●梅太郎(うめたろう/Umetarou):犬(キャバリア/オス/10歳)

*坂本龍馬の変名から

【バックグラウンドイメージ】

◎宮崎 吾朗 監督作品/ジブリ『コクリコ坂から』(From Up On Poppy Hill)

【補足】

〜陽奈の1日〜

5:00 起床

-5:15 身支度・ストレッチ

-6:00 勉強

-6:20 洗濯機を回す・お弁当準備(おかず)

-6:40 犬(梅太郎)の散歩

-7:00 朝食の準備・掃除

-7:05 洗濯物を干す・お弁当にご飯を詰める

-7:10 朝食・ニュース

-7:20 食器洗い(フライパン,釜等)

-7:35 食器洗い(皿,コップ等)・歯磨き等

7:35 登校

7:42-8:15頃 バス通学

8:30-17:00頃 高校

17:00頃 帰宅

-18:00 夕飯の支度

-18:30 夕飯

-18:45 食器洗い・洗濯物の取り込み

19:00 出勤(-19:15)

19:30-22:30 バイト

22:45 退勤(-23:00)

-23:15 洗濯物を畳む

-23:45 入浴

24:15頃 就寝

【原案誕生時期】

公開時

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