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セザン編  君だけを愛しているんだ。②

親父とダリアの父である侯爵様とお会いした。


ダリアの屋敷にはよく遊びに行ってたし挨拶だけはしていたがきちんと話すのは初めてだった。


「セザン、うちの娘を庇ってくれてありがとう、怪我は大丈夫かね?」


「はい」

親父とは全く違う。

眼光も鋭くて俺の内側まで見られているみたいで近くにいるだけで怖い。

これが高位貴族なのか、俺は圧倒されて小さくなっていた。


「うちの娘との婚約を断りたいと聞いた。何故か教えてくれるかい?」


「お、…僕は、今の僕では、ダリア……様を守れません。絶対にダリア様の横に並べるように強くなります。学園で首位で卒業して誰にも文句を言わせない、ダリア様を守れる男になります。そしたら、そしたら、僕からダリア様に婚約を申し込んでもいいですか?」


怖かったけどこれだけはどうしても自分の口で言いたかった。


「君は今の状況をわかっているんだね?わたしはダリアの気持ちを優先するために君との婚約を認めようと思った。それは我が侯爵家にとってはマイナスでしかない。どんな邪魔や中傷を受けるか。

だから君たち二人をわたしの力の限り全力で守るつもりでいた」


「僕にはまだなんの力もありません、でも、5年間待ってください。学園を卒業するまでに結果を出します」


「ダリアにそれまで婚約者を作るなと言うのか?それもまた醜聞になるとわからないのか?」


「………はい」

ーー俺は自分のことしか考えてなかった……

貴族の娘が婚約者を作らないということは、何か問題のある女の子だと思われてしまう。


「まあ、ダリアは君じゃなければ修道院に行くと脅してくるから今のところ無理矢理婚約者は作れないんだが……実は君と仲良くなってからずっとダリアはセザンと結婚することが夢らしいんだ」


「え?」


「……あの子は体が弱くて外に出ることもあまりなかった。友達もいなくていつも寂しい思いをしていたんだ。だが君と仲良くなってからダリアはとても笑うようになったんだ。

わたしや妻ではあんな笑顔をさせてあげられない。

わたしはとても娘に甘くてね、娘の我儘は出来れば全て叶えてあげたいんだ。

ま、君のおかげでダリアは外に出たい、元気になりたいと思うようになって頑張って嫌いなものも食べるようになったし薬も嫌がらず飲むようになった。元気になろうと頑張ったんだ。

本当に感謝しているんだ」


侯爵は顎に手をやり何か考え込んでいた。


「ダリアの婚約者を決めるのは卒業式まで待とう。その日結果を出せなければこの話は終わりだ、そしてもう一つ条件をつけさせてもらう。

君がダリアを振ったんだ、だから卒業まで会話を禁止する」


「え?なんで?」

隣にいた親父が俺を肘で小突いて咳払いした。


ーーあ、敬語を忘れてた


「ダリアの婚約の申し込みを断っておきながら仲良くするのはおかしいだろう?」


「で、でも、それは……」


「事情があるのは君でダリアではない。ダリアはどんな君でもいいと言ったんだ、それを君は断った。当たり前のことだろう?」


「………わかりました」


「約束を破れば、こちらの約束もそこで終わりだ」


そうして俺は5年近くどんなにダリアに話しかけられても、「ああ」とか「うん」とかしか答えることができなかった。


なのにダリアは卒業間近になって、俺の家に毎朝来たり、会うたびに告白してきた。


それに答えられない俺は侯爵に少しだけでも会話させてほしいと頼んだ。


『「ごめん」か「無理」くらいなら話してもいいぞ』

ーーこいつ鬼か!俺はいいけどそんなこと言ったらダリアが傷つくだろう!


俺の顔に思ったことが出ていたのか、侯爵は苦笑しながら言った。


『ダリアは君のことをずっと好きで諦めないよ、それにそれで諦めるんならそれまでだ』


『わかりました』


『もう一つのわたしの頼み事はうまく言ってるかね?』


『はい、なんとか』


ーーーーー


侯爵は半年前、さらに難題を言ってきた。


それが、俺の二つ年下のユリアンのことだった。


『平民のユリアンと言う女の子を知ってるかな?』


『男子が可愛いとか言って騒いでいましたね』


『ふうん、君もそう思うのか?』


『僕はダリアが世界で一番可愛いと思っています』


『当たり前だ』


ーーこの親バカ、ま、でも、ダリアが一番だけど!


『その子の成績はかなり悪いらしい、せめて中よりも上に成績を上げて欲しい』


『俺が?……あ、僕がですか?』


『その子は訳ありでね、今ダンスや貴族子女として教育は始めているんだが、勉強もなかなか成績が上がらなくてね困っているんだ』


『訳あり……ですか』

ーー平民が貴族子女として教育って、どこかの隠し子としか思えない。

なんで関係ない俺がそんな面倒なことするんだ。

こっちは首席で卒業という目標があるのに!


『首席卒業はもう確定したようなものだろう?それだけじゃ面白くない。だからね、もう一つ、君にお願いしたいんだ、もちろん引き受けてくれるよね?』


断ることはもちろん出来なかった。

侯爵は有無を言わさず笑った。

俺はユリアンの面倒をみるしかなかった。









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