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中編②

セザンとの思い出の物を箱に詰めた。


二人でよく遊んだカード。

一緒に読んでいた絵本。

セザンがくれたリボン。

セザンとお揃いのペン。

二人で集めた……ただの小石。



それから毎年誕生日に送られてきたメッセージカード。

どんなに疎遠になって話しかけても返事をしてもらえなくても誕生日には必ずカードをくれていた。


わたしの大切な宝物。




◇ ◇ ◇


卒業式まであと1週間に迫った。


心がバキッと折れたわたしは朝さすがにセザンの家には行っていない。


隣の教室にも会いに行っていない。


会うたびに言っていた「好きです」もやめた。


「ねえ、いいの?あと1週間だよ」


エリーが心配して何度も聞いてくる。


「だって……セザンはいつも1年生のユリアンって言う子といるのよ。わたしに諦めろって言うことでしょう?」


わたしは机に突っ伏せて唸った。


「何にも考えず突撃するところがダリアのいいところだったのに」


「わたしもそう思うわ」


「ダリア、頑張って」


みんなは面白おかしくわたしを応援してくれるけど、本人にとっては深刻だと知ってるのかしら?


「はあー、もう諦めるしかないのかしら」


わたしは廊下を歩くセザンとユリアンの姿が見えてまた机に突っ伏すしかなかった。


ーーうっ、泣きそう



わたしが一人で唸っていると頭の上から聞き慣れた声がした。


「ダリア、ほら、食堂に行こう」


顔だけを上げて、バンを見て

「行かない」

と言ってまた机に突っ伏せた。


「ったく、あれだけ好き好きと言って相手の迷惑も考えずに突撃していたくせに、他の女の子といるの見て落ち込むなんて。もともとダメ元で押しかけてたんだろう?」


「…っう、やっぱり迷惑かけてたかな?」


「どうだろうな?あいつ表情筋ないから、嬉しかったのか嫌だったのかわかんないよ」


「食欲ない」


「いいから行くよ。エリー達も心配してる」


バンがわたしの腕を掴み立たせてくれた。

前を見るとエリー達がわたしを見てにっこり笑った。


「今日はダリアの好きなケーキでも奢ってあげるから行こう」


「……心配かけてごめんなさい」



◇ ◇ ◇


食堂は少し混んでいたけど、先にバンの友達が席を取ってくれていた。


「遅くなってごめんね」

わたしが友達に謝ると


「気にしないで、座ってて」


わたしのランチも一緒に買ってきてくれるというのでわたしは一人大人しく座って待っていた。


ーーみんなに心配かけて、恥ずかしい。

わたしが早く諦めていたらよかったのに。


ボッーとしていると今は聞きたくない声が耳に入ってきた。


「ユリアン、早く食べて、時間がないから」


「うん、わかった」


また二人でいるのね。


わたしは声の方を向くことができない。

早くみんな戻ってきて!


わたしはテーブルをひたすらじっと動かずに見つめていた。


ーー絶対変な女の子だよね、この姿。


ーーわたしに気がつかないで!


ーーあっ、セザンはわたしになんか興味がないからなんとも思わないか……自爆したわ。




「ごめん、はい、ダリアのランチ」

バンがわたしの前に置いてくれた美味しそうな食事。


なのにわたしは固まったままで下を向いてテーブルを見つめたままだった。


「ダリア?」

バンがわたしの肩に手を置いてわたしの顔を覗き込んだ。


「……ったく、泣くな」

バンは誰にも見えないようにわたしの横に立ってくれていた。


「………っう……っく…ひっ」


みんなが席に戻ってきてもわたしは下を向いたまま。


エリーはその横で「ダリア、食べよう」

と言ってパクパクと食べ始めた。


「……ご、ごめん、わ、わたしも食べる」


わたしはスプーンを持ち、少しずつ食べ始めた。


今日のおすすめの白身魚のソテーの味はしょっぱかった。




「……ダリアが気になるくせに、こっち見ても声すらかけないのね、へたれ」

エリーが何かブツブツ言ってるけどわたしの耳には何を言ってるのか入ってこなかった。



◇ ◇ ◇


自分の部屋に入ると制服を脱ぎ捨ててベットに思いっきり寝そべった。


今日は学校でも泣いてしまった。


もうあと少ししか会えない。

なのにセザンと話す機会どころか目を合わすこともできないでいる。


「卒業式の日にもう一度告白して終わらせよう」


それまで大人しくしていよう。

さすがに毎日「好きです」と言い続ける根性はもうない。

バキバキに折れた心をなんとか奮い立たせるまでに時間を空けなきゃ!


もう後はないのだから!


卒業式で振られたら……


うん、そこは考えるのはよそう。


「も、もう、やめて!ちょ、ちょっとバッド!舐めないで!」

人が真剣に考えていたらいつの間にかベッドに上がってきてバッドが、遊んで欲しいのかそれとも慰めてくれているのかわたしの顔をペロペロと舐め回してきた。


そしてお気に入りのボールを持ってきて、わたしの前に置いた。


「いやいや、この部屋でボール投げたらバッド危ないわ、外に行かないと……はあ、分かった、行くわよ!行けばいいのでしょう?」


バッドと庭に出て駆け回ったらなんだか嫌なことも忘れてスッキリした。


そんなわたしを2階の窓から見ていた人がいることに気が付かなかった。


「バッド!行くわよ!ほら!」




◆ ◆ ◆


後編は次です。

そしてその後にセザン編。


ダリアとセザンの両片思い。


やっと動き出します。

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