言葉を諦めた少女の話
飾られた言葉を拾うたびに
割って中身を確かめては
真黒な空洞にがっかりして
拾っても拾ってもたまらない言葉
やがて拾うのを辞めた
紡いだ言葉を差し出すたびに
期待を込めて見守っては
削られた別物に絶望して
違う違うと振り続けた首
次に差し出すのを辞めた
拾わずに差し出さずに
形のないものだけを愛して
言葉の要らない私の世界
誰にも見えない私の世界
飾られた言葉を差し出されるたびに
受け取るふりをして投げ捨てては
楽しげな瞳にうんざりして
にこりにこりと貼り付けた笑顔
皆は差し出すのを辞めた
言葉をちょうだいとこわれる度に
誰かの言葉を真似て出しては
別物に変わるのを確認して
ふわりふわりと浮かんでく言葉
皆は求めるのを辞めた
差し出されず求められず
私の中のものだけを愛して
私しかいない私の世界
揺れることない私の世界
彼女は沢山の言葉を抱えていた
鮮やかでくすんでいてなめらかで歪で
こぼれ落ちて割れたひとつ
キラキラと輝く光
またひとつこぼれ落ちて
中身なく砕け散った
彼女はどちらにも反応しなかった
驚いて訝しみ悔しくてイラついて
あぁ見分けがつかないのねと
せせら笑ってこうも思う
ねぇ空っぽじゃないその言葉
どうやって手に入れたのかしら
彼女は私に延々と差し出し続けた
微笑んで受け流し受け方も忘れたわ
もしかしてその中身は輝いているかもね
でも、そうね
見分けのつかない貴方の言葉を
信じることが出来ないの
目の前の言葉は沢山すぎて
いくつもこぼれて消えていった
溢れるほどの思いを詰めて
たった一言
もしも差し出してくれたなら
私はこの手を伸ばせるかしら
もしも受け取ってみれたなら
私もこの手を伸ばせるかしら