言葉を求めた少女の話
見えない心が怖くて怖くて
だから言葉をいっぱい求めた
どんな言葉を求めているのか
それすらなんにも知らないままに
たくさんの言葉をあげたなら
たくさんの言葉が返ってきた
たくさんの言葉を取りこぼしたけど
たくさんの言葉をあげてさえいたら
たくさんの言葉をまた貰えるから
たくさんたくさんたくさんたくさん
あげてもらって抱えて零した
形さえあれば安心したから
なんでも笑って受けとったの
時にはそんなの持たなくていいと
叩き落とした人もいたけど
せっかくくれたものだから
零れるまでは抱えていたいの
零れてはじめて安心するの
みんなどうして抱えていないの
それっぽっちで大丈夫なの
カタリと一つこぼれ落ちて
傷ついた顔をした人がいた
カタリとまたこぼれ落ちて
何も変わらない人もいた
同じ言葉のはずなのに
どうしてそんなに違うのかしら
あなたはなんにも持ってなかった
あなたは差し出しても受け取らなかった
たくさんの言葉をあげたなら
たくさんの言葉が返ってきたから
たくさんの言葉をあげ続けたら
なにかすごいものをくれるのかもと
私は差し出し続けたの
あなたは微笑んで変わらなかった
私は変わらずに差し出し続けた
手持ちの言葉はたくさんあるもの
たくさんあげるのも慣れているもの
あなたは微笑んで変わらなかった
私がどれだけ差し出したとしても
何が違うんだろうって
私が考え始めるくらいには
あなたは変わらなかったのよ
手持ちの言葉じゃ沢山すぎて
いくつもこぼれて消えてった
溢れるほどの思いを詰めて
たった一言
大事に大事に抱えられたなら
どんなに安心するかしら
大事に大事に渡せたのなら
どんなに安心するかしら