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第七話

 しばらく歩いて、徹也に治伽と舞の声が聞こえないぐらいの距離ができた時、治伽が舞に話しかけた。


「そういえば舞。話し始めた最初の方、どうしてあんなに照れてたの?」


「ふ、ふえ!?は、治伽ちゃん!?」


「ふふっ。ねえ、どうしてなの?」


 突然な治伽の追求に、舞は顔を真っ赤にしてモジモジとする。それは本当に恥ずかしそうな様子だった。その様子のまま、舞は治伽に答える。


「そ、その……。告白だって、思ったから……」


「あら?私もいたのに?」


「う、うん……。二人同時かなって……」


「……え?」


 舞のこの返しには、流石の治伽も驚いてしまった。まさか、徹也が二人共に告白すると舞が思っていたとは思わなかったのだ。


「ま、舞……。才無佐君が二人と付き合いたいって言うと思ったの?というより、舞はそれを許せるの?」


「才無佐君がどうしてもって言うなら、許せちゃうかな……。才無佐君のことだから、相当悩んでからの告白だろうし……。それに、才無佐君ってハーレムのライトノベル好きでしょ?」


「た、確かに好きだとは思うけど……」


 それってライトノベルだからじゃない……?と、治伽は思った。確かに徹也は数々のラノベを読んできているので、ハーレムものの作品も多く読んでいる。


 だが、それで徹也がハーレムを望んでいるかというと、実はそうでもない。徹也の中ではライトノベルは空想のものであり、現実に持ってこれるものではなかったからだ。


 だがそんなことを、舞と治伽が知る由もない。舞は更に、言葉を紡ぐ。


「なにより、私は才無佐君のことが好きだから。だから、才無佐君が私を好きでいてくれるなら、何でも許せちゃうかな」


「そ、そう……」


 治伽は舞のその様子に少し引いてしまった。舞がここまで徹也のことを想っているとは、治伽は思わなかったのだ。


 そんな治伽を見て、舞は顔を少し赤く染めながら笑って治伽にこう告げた。


「治伽ちゃんも好きって思える人ができたら、私の気持ちが分かるかもしれないよ?」


「どう、かしらね……」


 治伽は答えをはぐらかし、そのまま黙った。今の治伽には、好きだと思える人はいない。一瞬、治伽の脳裏にある少年の姿が浮かぶが、治伽はすぐにそれを頭の中から振り払う。


 違う。彼は頼りになるだけであってそういうのじゃ――と、そんな否定の言葉を治伽は頭の中で唱え続けながら舞と共に歩いていると、気付けば集合場所の扉の前まで来ていた。


 舞がその扉を開けて中に入ると、そこにはすでに騎士団に行く生徒達と刀夜がそれぞれ席に座っていた。治伽と舞もそれを見て、自分達が元々座っていた席に座る。すると、隣のテーブルにいた将希が二人に話しかけた。


「遅かったな二人共。何をしてたんだ?」


「え、えっとね……」


「……少し、お手洗いに行っていただけよ」


「そ、そうか」


「そういえば、才無佐がどこ行ったか知ってる?確か、一緒に出ていったよな」


 治伽が将希にそう返すと、今度は忠克が問いかけてきた。これもまた答えにくい質問を……と、治伽は思った。


「……さあ?まだお手洗いにいるんじゃない?」


「あー。やっぱそうか」


 忠克は治伽の言葉に納得し、質問することを止める。一方、治伽は誤魔化せたことに安堵していた。


 このように治伽達が話していると、扉が開いてそこから徹也が入って来た。徹也はそのまま歩いてきて、元の自分の席に座る。


「……お手洗い、長かったわね」


「え?……ああ。ちょっとな」


 徹也は治伽の言っていることが最初意味が分からなかったが、すぐに状況を把握し治伽の言葉に合わせた。将希達に出ていった理由などの為にしたのだろうと、徹也は考えたのだ。


「おかえり才無佐!……これから、どうすんだ?」


 忠克が徹也にそう聞く。徹也はその忠克の言葉に少し驚きつつも、無難に返す。


「まあ、なんとかやってくよ」


「で、でもよ……」


「皆さん、お集まりですかな?」


 忠克が徹也に何かを言おうとしたが、それはマディーの声にかき消された。忠克はまだ何か言いたげだったが、マディーが更に言葉を重ねたことにより言うタイミングを失ってしまった。


「それでは、移動を開始したいと思います。皆さん席をお立ちになり、私について来てください」


 マディーにそう言われ、生徒達は皆立ち上がる。忠克も徹也に言いたいことがあったが、それを後回しにすることにした。別に急ぐことではないし、終わった後に聞けばいいと考えたのだ。


 徹也も他の生徒達と同じく立ち上がり、治伽と舞、それに忠克達と共にマディーの後に続いて歩き始めた。


読んでくださりありがとうございます!

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