双子は好きな人と結婚しました。
五年後。
「アリアナ。遊びに来たよ」
「エリアナ。あの子が待ってるよ」
私の住んでいる小さなお家にエリアナが遊びに来ました。
私はお城を出てこの小さなお家に住んでいます。
「本当? 早く会いたいよ」
「昨日も会ったでしょう?」
「だって本当はずっと一緒にいたいんだもん」
「そうね。エリアナはよく我慢してるわね。偉いわよ」
「アリアナも我慢してるわよ。結婚しないなんて」
「だって私達の愛の形は結婚してもしなくても同じでしょう?」
「そうだけど、子供もいないなんて。こんな可愛い天使なのに」
「私はエリアナの子供を見てるからいいの。私の子供みたいよ」
「じゃぁあの子を抱き締めようかしら」
エリアナはそう言って私の小さなお家に入っていきました。
私の小さなお家の中にはエリアナが産んだ最初の女の子がいます。
私はエリアナの最初の子を預かっているのです。
毎日エリアナは会いに来るので女の子はちゃんとエリアナをお母さんだと分かっています。
エリアナはフィリップ王子と結婚をしてお母さんになって幸せに暮らしています。
お城で。
「アリアナ」
「あっライル。お帰りなさい」
「あの子は?」
「中にエリアナといるわよ」
ライルが五日振りに帰って来ました。
私とライルは結婚をしていないので一緒にいたくても一緒にはいられません。
それが掟だからです。
ライルはあの子に会いたかったのか嬉しそうに家の中に入っていきました。
ライルは子供が好きみたいです。
「さあ、これからアリアナとライルの二人の時間だからこの天使は私のお城に連れて帰るわよ」
「うん。また二日後ね」
そしてエリアナはお城へと帰っていきました。
可愛い自分の子供と一緒に。
「しかし、よくこんなことを考えたねアリアナは」
「掟は誰が決めたのかって気になったから色んな本を読んだのよ」
「そして見つけたんだよな」
「うん。双子がお互いに一人目を自分の子供として育てたら災いは起きなかったって」
「でもそれだと君も子供を産んで預ければいいんだよ? それなのにどうしてそれをしないの? 結婚もしないし」
「私は嫌なの。こんな双子を人として扱わない掟が残っているこの世界に自分の子供を産んで育てたくないの」
「俺との子供は欲しくないのか?」
「欲しくないって言ったら嘘になるけど私は怖いの。私の子供がもし双子だったら私と同じ運命になるのよ?」
私はライルの胸に飛び込んで言いました。
そんな私をライルは優しく包み込み抱き締めてくれます。
「俺達で掟を変えてみる?」
「えっ」
「俺達が最初で最後にするんだ。この掟が本当に守らないといけないものなのか、試すんだよ」
「お父様には申し訳ないけどそれもいいかもね。それに本を読んで気付いたんだけど災いってどれも小さなことなの。それならライルが言うように試してみてもいいのかもね」
「それならまずは子作りからかな?」
「違うでしょう? まずは結婚式からよ」
「違うよまずは……」
ライルは話の途中で私の部屋にあるレターケースを開け何かを取り出しました。
そしてそれを私に見せます。
私はそれを見て涙が止まりません。
それは指輪です。
あんなところに指輪を隠すなんて。
私が見つけたらどうするのよ。
ライルは指輪を私の指にはめてくれました。
「アリアナ。君とこれからも何があっても一緒にいるよ。だから俺と結婚して下さい」
「ライル。大好きよ。これかもずっと宜しくお願いします」
私達はキスをしてその後、抱き合いました。
すごく幸せです。
「じゃあ子作りでいいよね?」
「ダメよ。お父様への報告も結婚式もまだなんだから」
「でも俺は君に触れるだけで我慢ができないのは君も知ってるだろう?」
「分かってるわよ。だから私の全てを愛してよ」
「君の心も体も全てを愛してあげるよ」
「ライル愛してるわ」
「俺も愛してるよ。アリアナ」
◇
私達はそれからすぐに結婚式を挙げました。
お父様に災いなんて一つも起きません。
そして私には子供もできました。
可愛い女の子です。
ライルと二人で育てます。
それでもお父様には災いは起きません。
双子の掟は全てが迷信だったのです。
それから双子には新しい掟ができました。
一つ目は双子を大切に育てましょう。
二つ目は双子を同じ愛で愛してあげましょう。
三つ目は双子だけではなく子供達みんなを同じ愛で愛してあげましょう。
それを守れば必ずみんなが幸せです。
◇◇
おまけ
俺の名前はライル。
今回のお嬢様は性格の悪いわがままな双子の一人。
名前は何だったかな?
えっと。
「アリアナお嬢様。どうかお渡し下さい。汚いです」
「汚くなんてないわ。この子はさっきまで生きていたの。一生懸命生きていたの。だから私がこの子の眠れる場所を探すから」
「アリアナお嬢様。あなたはお嬢様なのですよ」
「お嬢様? 分かったわよ。この子をお願いよ」
彼女は大事に持っていた鳥の死骸を使用人に渡している。
使用人は汚い物を持つように受け取り、彼女の目の前で花壇の隅に投げ捨てた。
彼女は悲しそうな顔をしていたが何も言わない。
さっきまで大事そうにしていたのに何故何も言わないんだ?
彼女は部屋に戻って行く。
それを見届けた使用人は持ち場へと戻っていった。
少しして彼女が戻ってきた。
「ごめんね。痛かったでしょう? あなたを守れなくてごめんね。私はお嬢様だから」
彼女はわがままな双子の一人だよな?
彼女は自分の立場を分かっているんだ。
お嬢様だからしてはいけないことなんてたくさんあるだろうな。
彼女は彼女なりに苦しんでいるのかもしれない。
彼女を助けてあげたい。
彼女を自由にしてあげたい。
君の名前、顔。
ちゃんと覚えたよ。
次、君に会う時は必ず助けるから。
だから待ってて。
アリアナお嬢様。
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