双子は婚約破棄をして今までの自分達がやったことを反省しています。
婚約をして一ヶ月が経ったので私はフィリップ王子との婚約破棄をしました。
エリアナがフィリップ王子を好きだということをお父様に言うとお父様は嬉しそうにしていました。
そしてすぐにエリアナとフィリップ王子は婚約しました。
エリアナは毎日、楽しそうに過ごしていました。
そんなエリアナとは正反対の私は毎日、窓から空を見上げてライルのことを考えていました。
ライルは何をしているんだろう?
どこかのお嬢様の教育係をしているのかな?
私はライルのことばかり考えていました。
そんな日が続いたある日。
私にも婚約の話がきました。
もう逃げられません。
私は知らない人と結婚をするのです。
私の婚約者になる人は隣の国のイライザ嬢のお兄様でした。
イライザ嬢がフィリップ王子を好きなことを知っていて私達双子は二人を会わせないようにしたのです。
それをイライザ嬢は知っていると思います。
だから私はイライザ嬢のお兄様と婚約するんです。
私はイライザ嬢に何か仕返しをされるんだと思っています。
人の気持ちを何だと思っていたのでしょう。
今頃気付いても、もう遅いのです。
もう、あの日には戻らないのです。
私は馬車に乗りイライザ嬢のお兄様の所へ挨拶に行きます。
お城では私の歓迎としてパーティーが開かれました。
そのパーティーでも私は飲み物や食べ物には注意をしながら口にしました。
使用人さんが配る食べ物は口にしていいと言われていたので私は口にしていました。
お酒も飲んでしまったので少しフラフラします。
御手洗いへと向かいながら足はフラフラです。
そんなにお酒を飲んだ記憶はありません。
瞼が重くて仕方ありません。
そして私は意識を手放してしまいました。
意識を手放す前に大好きな声が私の名前を呼んだ気がしました。
◇
私が目を覚ますと見たこともない部屋でした。
私は部屋を見渡します。
するとドアが開きずっと会いたかった人が入ってきました。
「ライル?」
「お嬢様。おはようございます」
「どうしてライルがここに? どうして私はここに? 何があったの?」
「お嬢様。一つずつお話を致しますので落ち着き下さい。見えますよ」
「えっ」
ライルは私の胸辺りを指差しました。
私はライルの指を差した胸辺りを見て毛布で隠しました。
なっ何で裸なのよ。
「見た?」
「私は前に見ていますので」
そうよね。
ライルは前に一度、私を着替えさせたんだから見てるわよね。
当たり前のように言ってるけどあり得ないからね。
私の裸を見るなんて。
「あっそうだったわ。あの日はライルが着替えさせなくてもエリアナのメイドもいたでしょう?」
「私が嫌だったのです」
「何が嫌なの?」
「お嬢様はずっと怯えていたので私以外の人に任せられませんでした。お嬢様は私には安心した顔を見せていたので」
ライルは微笑みながら言いました。
何よその顔は?
そんな顔をするなら何で私の前から消えたのよ。
なんてやっぱり私には言えません。
「私は裸を見られるなんて恥ずかし過ぎるわよ。お嫁に行けないわよ。今だって恥ずかしいわよ」
「今は我慢して下さい。昨日のドレスは重くて脱がせて頂きました。代わりのドレスを買いに行かせていますので」
「脱がせたのはライルなの?」
「当たり前です」
当たり前なの?
メイドはいないの?
私はもう怯えてなんていないわよ?
「ライルは私の裸を見たいのね。寝てる私の裸を見るなんて変態じゃない?」
私はライルが怒りそうな言葉を言ってみました。
久し振りにライルに怒られたくなったのです。
あの怒られていた日が懐かしいです。
「見てませんよ」
「えっさっき見たって言ったじゃない」
「見てません。見られる訳がありません。見てしまえば私は抑えがきかないと分かっていましたから」
「見てないならどうやって着替えさせたの?」
「お嬢様に毛布をかけて手探りで着替えさせました」
「そんなに面倒なことをしてまで見ないのってライルはもしかして紳士なの?」
「いいえ、私は紳士ではなくただの男です。お嬢様の裸を見てしまえばお嬢様を傷つけるかもしれないただの男です」
「ライル?」
「こうやってお嬢様に触れてしまえば私は抑えがきかなくなりそうで」
ライルは私の頬に触れて切ない顔で言いました。
この顔を私は見たことがあります。
フィリップ王子がエリアナを見る時、こんな顔をしています。
「フィリップ王子と同じ顔よ」
「えっ」
「ライルの今の切ない顔はフィリップ王子がエリアナに見せる顔と同じよ」
「フィリップ王子も苦労をなさっておられるのですね」
「えっ」
「お嬢様お二人はまだまだ子供ですね」
ライルの言葉の意味がよく分かりません。
私とエリアナは子供?
私は大人のルールを頭にちゃんと叩き込んだわよ?
「ところでどうして私はここにいるの?」
「お嬢様は婚約をするはずだった相手の方に睡眠薬を飲まされたのですよ」
「えっいつ?」
「使用人に薬が入った食べ物を渡していたみたいです」
「そうだったのね。私が悪いのよ」
「お嬢様?」
「私が今まで色んな人を傷つけてきたからそのバチが当たったのよ」
「それでもお嬢様がこんな危険にあうのは違いますよ。これは人がしたこと。神様が与えた罰ではありませんよ」
「そうなのかな?」
ライルは私に優しく微笑んでくれました。
ライルがそう言うのならそうなんだと思います。
だってライルは私の教育係だったんですから。
ライルの言うことは正しいのです。
「ライルは何故ここにいるの?」
「私はイライザお嬢様の教育係です。アリアナお嬢様が倒れそうな所を見つけてこの宿屋まで運んできました」
「やっぱり、誰かお嬢様の教育係になっていると思ったわ。私が思っていたことは大正解よ」
「私のことを考えていてくれたのですか?」
「えっまぁそうね。ライルがいきなりいなくなっちゃったから暇になったのよ」
私はライルのことをずっと考えていたことを隠したくて適当な嘘をつきました。
「お嬢様。毛布をちゃんとかけて頂けませんか?」
「えっまた見えてたの?」
「いいえ。お嬢様の綺麗で白い肌が見える度に私の鼓動が早くなるので」
「ライルったら私の裸の姿を妄想してるの?」
「ダメですか? 好きな方の裸を妄想してはいけないのですか?」
「ダメっていうか。……えっ好き?」
「だから毛布をちゃんとかけて下さい」
私が驚いた瞬間に肩にかけている毛布がゆっくりと落ちていく。
その毛布をライルは落ちないようにすることなく私を抱き締めました。
裸の私はライルに抱き締められているからライルから見えないですがライルの体に私の裸の体は密着しています。
「これで見えないですけどお嬢様のぬくもりが直に届きます。これはこれで我慢できませんね」
ライルは苦しそうに私に言いました。
こんなライルは初めてです。
いつも涼しい顔をして何を考えているから分からないライルは何処へ行ってしまったのでしょう?
こんなライルも可愛いです。
「ねえ、ライル。私を呼んでよ」
「お嬢様?」
「違うわよ。名前で呼んでよ」
「アリアナ」
「ライル。大好きよ」
「私もアリアナが大好きです」
その日の私達がどうなったのかは秘密です。
読んで頂きありがとうございます。
次が最終話になります。
どうか最後までお付き合い下さい。