双子は命を狙われていることを知りました。
フィリップ王子と一緒に馬車に乗りすぐ隣の国の王子様のお城へ向かいました。
馬車の中は揺れて怖かったのですが何故か安心できました。
それはフィリップ王子がいたからではなく、ライルが隣にいたからです。
ライルは私が出発する前にお父様にお願いをしたみたいです。
私が心配だから護衛として私を守らせて欲しいって言ったみたいです。
それを馬車の中で聞きました。
ライルが私のことを心配してくれていることが嬉しくてニコニコしていました。
それなのにライルはそのニコニコ顔を見て言ったのです。
「お嬢様が失敗したら私がクビなので」
「それは思っていても言わないで欲しいことよ」
「お嬢様が気合いの入っていないお顔をしておられましたので」
「ライルなんて大嫌いよ」
「お嬢様が好きでも嫌いでも私はこの仕事を全うするだけです」
またライルは口の右の端を上げて言いました。
また私を子供扱いにした証拠です。
私はまだライルにとっては子供みたいです。
年齢はそれほど変わらないはずですが。
そしてお城に着きパーティーは何事もなく終わりを迎えていた時です。
私は御手洗いからダンス会場へと戻ろうと廊下を歩いていた時。
後ろから誰かに口を押さえられました。
私は逃げようと暴れます。
それでもその相手は私よりも力が強く、私の抵抗はその人の一言でできなくなりました。
「静かにしろ。殺すぞ」
その言葉に私の体は固まりました。
逃げたいのに動かない体。
誰か助けて。
心の中で叫ぶことしかできませんでした。
「おいっ何をしている」
聞き覚えのある声に私の体は少し動きます。
押さえられている口を少し開け、指を噛みました。
痛いと言った相手の力が弱くなったので私はその相手の腕から逃げ出し前から来るライルに向かって走りました。
聞き覚えのある声はライルだったのです。
「アリアナ下に屈んで」
「うん」
私はライルに名前で呼ばれましたが何の違和感もなく彼の言葉を聞き入れ言われるがまま下に屈みました。
するとライルは私の後ろにいた相手に回し蹴りをしました。
座り込んでいる私の頭上で起きている回し蹴りはとてもキレイに相手の顔にヒットしました。
そして相手は倒れて気絶しました。
その時のライルは格好いいヒーローでした。
ライルに感謝です。
その後の私は誰にも会いたくはなく馬車でライルと一緒に自分のお城へ戻りました。
その馬車の中で私は泣きました。
だってすごく怖かったのですから。
「ライルはあんなことが起こるって分かってたの?」
「双子の掟の話を聞いた時に少し思いました。双子のどちらかがこの世からいなくなれば不幸なんて訪れないなんて考える人はいると」
「それってお父様のこと?」
「どうでしょう? あのお方はお嬢様達お二人を愛していることは誰が見ても分かります」
「それなら誰が?」
「それは分かりませんがあのお方が不幸になってほしくはない人はたくさんいると思うのです。あのお方は優しいお方なので」
ライルはお父様をすごく尊敬しているのでしょう。
優しい目で私に話してくれます。
その話をしている間、ライルは私の頭を撫でています。
まるで私はライルのペットになったみたいです。
ライルに頭を撫でられながら私はいつの間にか寝てしまいました。
ライルに頭を撫でられるのと馬車の揺れのせいです。
そして今日、起こったことの疲れから眠くなったのでしょう。
◇
朝、起きると自分のベッドに寝ていました。
ちゃんとドレスも脱いでパジャマに着替えています。
このベッドまで誰が運んでくれたんだろう?
着替えはメイドさんがしてくれたのだろうと思いながらベッドから出ました。
「アリアナ。大丈夫?」
「エリアナ。どうしたの?」
エリアナがいきなり部屋に入ってきて抱き付いてきました。
「昨日の話を噂話が好きなメイドさんに聞いたの」
「噂話ってもう知れ渡ってるの?」
「だって昨日はアリアナのメイドさん達はみんなお父様がお休みをとらしたのよ。アリアナは帰らないからって言ってね」
「帰らない?」
「そうだよ。アリアナはフィリップ王子と別荘に泊まる予定だったみたいよ」
「そうなんだ。知らなかった」
「だからアリアナが帰って来た時は誰もアリアナのお世話をする人がいなくてアリアナの教育係の彼が全部したみたいよ」
「えっ何それ?」
それってライルがこの部屋まで私を運んで私を着替えさせたってこと?
それは困る。
だって私の裸を見たってことでしょう?
もう、お嫁にいけないよ。
そういえばライルはまだ私を起こしに来ません。
どうしてだろう?
昨日の事でお礼を言わなきゃいけないのに。
「アリアナ、お父様が起きたらお父様の所に来なさいって言ってたよ」
「分かったわ。ありがとうエリアナ」
私は着替えを済ましお父様の部屋へ向かいました。
「お父様。アリアナです」
「アリアナか。入りなさい」
そして私はお父様の部屋へ入ります。
「アリアナ、昨日は大丈夫だったかい?」
「はい。ライルが助けてくれたので大丈夫です」
「それなら良かった。ライルの最後の仕事がアリアナを助けるなんていい仕事をしてくれた」
「お父様? 最後の仕事とは?」
「ライルは出ていったんだよ」
「えっ」
「アリアナを危険な目にあわせたからって今日の朝、出ていったんだ」
「お父様。アリアナはまだライルにお礼をちゃんとしていないですよ?」
「それは心配しなくても大丈夫だ。ライルには報酬を沢山あげたからな」
そういうことではありません。
お金とか宝石とかじゃないのです。
私が言いたいのはありがとうなのです。
直接、本人に言いたいのに。
それから私は部屋へ戻りました。
お父様にライルの居場所を聞いてお礼を伝えに行くこともできました。
でも、ライルは私に黙って出ていったのです。
それは私には会いたくないということなんだと思ってしまい私はライルを探すことを諦めました。
ライルの代わりに女性の教育係が私にはつきました。
まずは婚約破棄ができるまでの一ヶ月の残りをどうにか乗り越えなければなりません。
私は必死に勉強をしました。
ライルが教えてくれたことを忘れずパーティーにはあんなことがあったのでほとんど参加はしませんでした。
しかし、出なくてはいけないパーティーに何度か出席したが人から貰ったものを口には絶対につけないようにしました。
あんなに必死に私にライルは言っていたのだから必ず守らなきゃいけないと思って。
読んで頂きありがとうございます。
短いお話なのですがまだちょっとだけ続きます。
まだもう少しだけ読者様の読むお時間をこの作品にください。