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双子は双子の悲しい運命を知りました

 私は今日の疲れを取る為にお風呂にゆっくりとつかりました。

 温かいお湯は私の心を癒してくれます。

 薔薇の花びらが湯船に浮いておりいい香りもします。

 私はこの癒しの時間を目を閉じて楽しみました。


「お嬢様。少しお風呂が長いのではありませんか?」


 お風呂場のドアの向こうから最悪な声が聞こえました。


「ライル? どうしてまだいるの?」

「お伝えするのを忘れておりましたのでここでお伝えいたします。私はお嬢様の身の回りのお世話もすることになりましたので」

「ライルは男性よ。男性ではできないことだってあるでしょう?」

「その時はメイドに頼みますよ。心配なさらずに」

「お風呂場に来ることもやめてほしいわ」

「それならお嬢様が早くお風呂からお上がり下さい」


 折角の癒しの時間がなくなりました。

 お風呂場に男性が入って来るってあり得ないわよね?

 よく考えてみると私だけがライルを男性としてみている感じがする気がします。

 ライルは私をバカにしているのではなく子供扱いしているってことなのでしょうか?


 やっぱり私は絶対に大人のルールを知ってライルを驚かしてあげるんだから。



次の日の朝。


「おはようございます。早く起きて下さい」


 私はライルの声で目が覚めました。

 朝からライルの声で起きたくはないです。


「もう少しだけ。寝かせてくれる?」

「いいですが、私がお嬢様の着替えをさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 その言葉に私は飛び起きました。


「お嬢様。私が着替えを手伝ってもよろしいのですが?」

「自分で着替えるわよ」

「それでは急いで頂けると助かるのですが?」

「どうしてそんなに急ぐの?」

「今夜、隣の国の王子様からフィリップ王子とお嬢様へパーティーのお誘いがありましたので」

「それでどうして急ぐの?」

「お嬢様はまだまだ大人のルールを知らないですよね? 私が今夜までに教えなければならないのです」

「それはライルが昨日、勉強をほとんどしなかったからでしょう?」


 私はライルが悪いという風に言いました。

 悪いのは私が勉強は明日でいいなんて言ったからだけどね。


「そうですね。お嬢様の為に昨日は早く勉強を終わらせましたが私は間違っていましたね」


 ライルは私を責めることはせず、自分を責めたのです。

 ライルは自分の仕事の重大さを知っているのでしょう。

 もし私がパーティーで失敗をしたら恥をかくのは私だけじゃなく、フィリップ王子やお父様も恥をかくことを知っているのです。


 私はそんなライルを見ていて自分の子供っぽさが嫌でたまらなくなりました。

 ライルが教えてくれる全てを覚えようと心に決めました。

 しかしライルの教育は私には苦痛でした。


 だってライルは私が間違えるとすぐに怒ります。


「違います。何度言ったら分かるのですか? パーティーの参加者から貰った物には口は絶対につけてはいけません」

「だってハンカチだよ? 唇に何かついているってハンカチで取ってもらうだけだよ?」


 私とライルはパーティーで気を付けることを実戦しながら勉強しています。

 ライルが私にハンカチで口を拭こうとしていたので私は嫌がることをせずに拭かれるのを待っていたんです。

 それをライルはダメだと言うのです。


 あれもダメ。

 これもダメ。

 全部ダメ。

 もう疲れました。


「ダメです。お嬢様の為なんです。これは絶対にお守り下さい」

「分かったわよ。大人って大変ね」

「そうですよ。大人は危険なのです」

「えっ」

「お嬢様。次はフィリップ王子以外の王子様と話す時の話し方を説明しますね」


 ライルの言われたことは絶対に忘れないから。

 だからもう少し優しくできないの?

 できないだろうから私はライルにはそんなことは言わないけどね。


「お嬢様。今日の私からの勉強は終わりです」

「やったぁ」

「しかし、次は双子の掟について学びますよ」

「えっまだあるの? 終わったんじゃないの?」

「私が教える勉強は終わりましたよ。次は双子の掟を知っている方が教えてくれるのですよ」

「ライルは知らないの?」

「双子の掟は一部の人しか知らないのです」

「そうなんだ。聞くのが怖いなぁ」

「私も一緒に聞くので大丈夫ですよ」


 あれ?

 ライルはこんなに優しく笑えるの?

 私が怖いと言ったからなの?

 ライルは優しく微笑んでくれたのです。


 ライルは笑えばフィリップ王子よりも美しいかもしれません。

 いつもは涼しい顔で何を考えているのか分からないライルなのに笑えば優しさが溢れてきているようです。


 そんなライルの綺麗な黒い髪は瞳と同じ色です。

 そんな瞳を見ていたら私は吸い込まれそうになりそうなので見ませんが。

 そして教育係だけあるのか動きも美しいです。

 一つ一つの行動が次の行動を考えながら動いている為、無駄な動きがありません。


◇◇


 双子の掟の話をしてくれたのは優しそうなおばあちゃんでした。

 双子の掟は三つだけだそうです。


 一つ目は婚約者は親が決めること。

 二つ目は先に結婚をした方が先に子供を産むこと。

 三つ目は双子の最初に産まれたそれぞれの子供は養子に出すこと。


 この三つが守られなかったら双子の親に不幸が起きるそうです。

 何それ?

 話を聞いて私達双子が産まれたことがいけないことって聞こえるのは私だけでしょうか?

 一緒に聞いていたライルの方を見ました。


 いつものように涼しい顔で私を見てきました。

 何を考えているのか全然、分かりません。

 今からパーティーなのに落ち込んでしまいました。

 初めての大人のパーティーに参加するのだから気合いを入れないといけないのですが全く気合いが入りません。


 胸元がいつもよりも開いたドレスを着て綺麗にお化粧をしてもらったのにパーティーの気分ではありません。

 どうすればよいのでしょう?


「お嬢様。私が言ったことを覚えておられますか?」

「えっと人からもらった物には口は絶対につけてはいけないでしょう?」

「それもですが、ダンスは楽しいということを忘れないで下さい」

「ダンス?」

「今日は楽しんで下さい。私が教えたことを発揮して下さい。あなたなら大丈夫です」


 ライルに言われると何故か元気が出ました。

 少しは気合いも入ります。

 大丈夫です。

 だってライルが教えてくれたのですから。

読んで頂きありがとうございます。

短いお話なのでもう少しだけお付き合い下さい。

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