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双子は子供から大人になる為に教育係がつきました

 私は双子の姉。

 名前はアリアナ。

 私の双子の妹。

 名前はエリアナ。


 私達は仲良しで親でさえも間違えるようなそっくりな双子です。

 小さな頃から色んな人達に可愛いと言われ育ちました。

 私達の欲しいと言った物は大人が全部、買い与えてくれます。

 だから手に入らないものなんて何一つありませんでした。


 私達双子が成長してもそれは変わりませんでした。

 甘やかされ生きてきた私達はそれはもう、ヒドイわがまま令嬢へと育ったのです。


「アリアナ。今日、私達の大好きなフィリップ王子が隣の国のお姫様のイライザ嬢と会うみたいよ」

「エリアナ。それは本当? それなら私達が邪魔をしなきゃね」

「そうよね。どうする? お父様にお願いしちゃう?」

「いいわね。フィリップ王子と婚約したいなんて冗談で言っちゃう?」

「それいいね。フィリップ王子にどっちと婚約するか決めてもらいましょうよ」

「そうね」


 それから私達はお父様にフィリップ王子と婚約をしたいと嘘を言いました。

 お父様はすぐに行動を起こし、フィリップ王子は隣の国のイライザ嬢とは会うことはありませんでした。



 フィリップ王子はお父様に呼ばれお城にやってきました。

 美しいフィリップ王子。

 顔も立ち居振舞いも全てが美しいのです。

 フィリップ王子が来たら広間へ集まるように言われていた私は急いで広間へ行きます。

 エリアナは先に来ていてフィリップ王子と話をしていました。


「フィリップよ。私の娘のどちらと婚約をするんだい?」


 広間に入ってきたお父様はフィリップ王子に言いました。

 フィリップ王子は驚いています。

 そんなフィリップ王子を見た後、エリアナは言います。


「お父様。フィリップ王子がお困りですわ」

「しかし、エリアナとアリアナは結婚をしてもよい歳だろう?」

「お父様。エリアナはまだこのお城から出るのは嫌ですわ」

「そうか。それならフィリップ。アリアナと婚約をしなさい」

「えっ」


 お父様とエリアナが話しているのを静かに見ていた私はお父様の発言に驚いて声が出てしまいました。

 フィリップ王子はお父様の言葉に従うことしかできません。

 それほどお父様の立ち位置はフィリップ王子よりも上なのです。


 これではフィリップ王子が可哀想です。

 私達双子のわがままでフィリップ王子が困っているのです。

 これは冗談だとしてもやり過ぎだと思います。


「お父様。アリアナは結婚なんてしたくありません」


 私はお父様に訴えるように言います。


「アリアナ。双子である君には結婚相手を決める事はできないんだよ。私の娘達は私の決めた相手と結婚してもらう。それが昔からの双子の(おきて)だからね」


 それはどういうことなのでしょうか?

 私達双子は結婚相手を自分で決めることができないとは?

 掟?

 そんなの聞いたことがありません。


 エリアナを見ると泣きそうな顔をしています。

 当たり前です。

 好きな相手と結婚ができないのですから。


 私達双子はお父様に何も言えず私とフィリップ王子は婚約しました。

 フィリップ王子は報告の為すぐに自分の国へ帰っていきました。

 私達双子は落ち込みながら私の部屋へ入ります。


「アリアナ。どうしよう。私、知らない人と結婚なんてしたくないわ」

「エリアナ。私も自分で結婚相手は決めたいわ」

「アリアナはフィリップ王子でいいじゃない」

「フィリップ王子は美しい方だけど結婚しようとは思わないわ」

「それなら私がフィリップ王子と結婚するわ」

「えっエリアナはそれでいいの? お父様が決めた相手よ?」

「私はフィリップ王子が好きだもの」

「それなら私がお父様に伝えるわね」


 そうエリアナに言って私は部屋から出ようとした時、ドアをノックする音がしました。


「はい」


 ノックをした相手に私は返事をしました。


「お話があるので入ってもよろしいでしょうか?」


 聞いたことのない声がドアの外から聞こえました。

 また執事が私のわがままで辞めて新しい執事に変わったのだと思い気にせずドアを開けました。

 ドアの前には黒髪の短髪がとても似合う顔の整った若い男性が立っていました。


「私はアリアナお嬢様の教育係になりましたライルと申します」


 私とエリアナの顔を交互に見て彼は私にそう言って深々と頭を下げました。

 ライルは私とエリアナの顔をちゃんと見分けているようでした。


「ライル。教育係? そんなものはもういらないはずよ。私はもう大人なんだから」

「大人には知っておかなければいけないルールなどがあります。それを私がアリアナお嬢様に教えるのです」

「それならエリアナにも教えたらいいのでは?」

「エリアナお嬢様はまだ婚約をしておりませんので」

「私は婚約はなかったことにするつもりだから教育はいらないわ」


 私はそう言ってドアを閉めようとしたけどライルがそれを阻止してドアは閉められないままです。


「アリアナお嬢様。最初の大人のルールを教えますね。婚約したら一ヶ月は婚約破棄はできないんですよ」

「えっそうなの? まあ一ヶ月は待つわよ。でも教育はしなくていいわ」

「アリアナお嬢様。婚約をしたらパーティーなど沢山、招待されますよ」

「だからなんなのよ? パーティーなんて何度も経験してるわ」

「婚約者のフィリップ王子とパーティーに出席するのですよ? あなたは王子の横でニコニコ笑っていればいいだけではないのですよ?」

「分かっているわよ。私がフィリップ王子のお飾りになる訳がないじゃないの。勉強するわよ。でもエリアナがずるいわ」

「エリアナお嬢様も教育係がつくと思いますがアリアナお嬢様よりは簡単な教育だと思います」

「そうなのね」


 少ししてエリアナの教育係だと言う女性が部屋へ来ました。

 エリアナには女性で私には男性って何故なのでしょう。

 私も女性がよかったです。

 だってこのライルっていう男は何故か嫌いなのです。

 威圧感がすごいのです。


 エリアナと教育係の女性は私の部屋を出ていきました。


「お嬢様。これからさっそく勉強しましょうか?」

「今から? だって私さっき婚約したばかりなのよ? 明日からじゃダメなの?」

「お嬢様には時間がありません。いつパーティーに呼ばれてもおかしくないのですよ?」

「でも。今日くらいはいいじゃない」

「分かりました。今日は早く勉強を終わらせます」

「それでもやるのね」

「お嬢様の為ですので」


 ライルは私に営業スマイルを見せました。

 その笑顔が怖いのです。

 ライルなんて嫌いです。


 今日の勉強はパーティーでの所作でした。


「お嬢様。それは子供がやることです」

「えっでも私はこうやってドレスの裾を広げて礼をするって習ったわよ?」


 最初の挨拶からライルの怒っている声が部屋に響き渡りました。

 怖いです。

 ライルなんて嫌いです。


「大人はドレスの裾は広げません。小さく会釈です」

「そんなの知らないわよ。知らないんだから怒らないでよね」

「お嬢様は今まで何度もパーティーに参加していらっしゃいますよね? その時に大人の方の礼の仕方を見ておられなかったのですか?」

「そっそれは……」


 そんなの見る訳がないじゃない。

 だってエリアナと二人で色んな王子様を見ながらタイプの人を見つけていたんだから。

 なんて、ライルには絶対に言えません。


「色んな国の王子様を見ていたのでしょう?」

「何故それを?」

「当たっているのですね?」


 ライルは右の口の端を上げて意地悪そうに言いました。

 私はお嬢様よ。

 あなたは教育係。

 何よその態度は。

 なんてライルに言ったらお返しの言葉が何十倍にして返ってきそうで怖くて言えません。


「お嬢様。グラスを一つ取って下さい」


 ライルはいきなりそう言って私の前にピンク色の飲み物と透明の飲み物が入ったグラスを見せます。

 私は可愛いピンク色の飲み物が入ったグラスを取りました。


「お嬢様。その飲み物はカクテルです。そしてこちらの透明の飲み物の方は水です」

「カクテルなのね。お酒は飲めるから大丈夫よ」

「あなたは子供のように見えますがちゃんとお酒が飲める歳なのは知っております」

「ライルは一言、余計なのよ」

「申し訳ございません。しかしお嬢様、そのピンク色のカクテルは今夜あなたと一緒にいたいと伝える意味だと知っておられますか?」

「えっ」

「もしこの二つのグラスを出されたら必ず水の方をお選び下さい」

「分かったわ」


 そして私はカクテルを口に含みます。

 口の中で甘いのに少し強いアルコールが私の体を少し軽くしました。

 少しだけ酔っていたのでしょう。

 少しだけです。


「お嬢様。それでは一曲、踊って頂けませんか?」


 ライルは私の前に座り左膝を床につけ右手を私の前に差し出して言います。


「いいわよ」


 私はそう言ってライルの手に左手を置きました。

 ライルは私の腰を支え踊り出しました。

 優雅に踊るライルに引っ張られるように私も踊りました。

 時間が経つにつれてライルは私に合わせながら踊ってくれます。

 ダンスはただ密着して嫌な人でも踊らなければいけないものだと思っていた私は初めてダンスが楽しいことに気付きました。


「今日はこのくらいにしましょうか?」

「えっでも全然、勉強してないわよ?」

「お嬢様がダンスは楽しいものだと気付いて頂けたみたいなので今日はここまでにいたします」

「ライルは何処でダンスを習ったの? 今まで一緒に踊った方の中で一番、上手だったわ」

「私は今までで一番、踊るのが大変でしたよ?」

「それって私が下手だって言うの?」

「そんなことをお嬢様に言える訳がありませんよ」

「大変だって言ったじゃない」

「下手だとは言っておりません」


 ライルはまた右の口の端を上げて意地悪そうに言いました。

 私をバカにしているのよ。

 絶対にバカにしているわ。

 私だって大人のルールを教えてもらったらライルにバカにされることはないんだからね。


「見てなさいよ。大人の女性になるんだから」

「それは楽しみです。私の教育でどんな大人になるのでしょう?」


 やっぱりバカにした言い方にムッとしても私は大人の女性のように穏やかに笑顔を返しました。

読んで頂きありがとうございます。

短編として出そうとした作品なのですぐに完結します。

長いお話がお好みの方は少し物足りないかもしれません。

ラストまでどうかお付き合い下さい。

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